オマケ 君に想いを告げさせて

「これ、彼女パートについてなんスけど」


「お、まず告白する先を選択肢で、ツンデレ幼馴染、妹系幼馴染、マドンナ系、委員長系、おとなしい系、ギャル系のクラスメイトの中から選ばせるんだな?」


「ッス! これで外見とだいたいの性格が決まるんで、感情移入しやすいはずッス! って、なに見てたんスか? レジュメッスよね?」


「あー。なんか猫が不憫な気がしてきてなぁ。ほら、主人公は好き勝手やってるから、心が折れようがどうなろうが、自業自得な気がするんだが、猫にはなんのうまみというか、見返りみたいなものがないだろ?」


「……強いていえば、主人公の記憶が見返りみたいなモノかもッスけど、弱いッスよね。最後も、猫の中に初期主人公の意識があり続けてる感じだったから、あそこで初期主人公の意識もなくなったことをわかりやすく……これも弱いッスね。無難なのは、猫と一緒に今もどこかで誰かをアシストENDッスかね?」


「そこでだ。シリアス展開もいいけど、こういうのはどうだ?」


    ☆


「んにゃっ」


 夢の中でやわらかなモフモフだと思って握ったら、悲鳴が聞こえた。目を開けると、俺の手に尻尾をつかまれた黒猫がこちらをにらんでいた。


「ちょっと! 痛いんだから、さっさと離しなよね!」


 しゃべる猫の夢にしてはなかなかいい握り心地だと、手離したくなくてむぎゅむぎゅしていると、黒猫はため息をついた。


「もー、わかった。取引しよ? ボクができる範囲でなんでも叶えてあげるから、今すぐ離してくれる?」


    ☆


「猫が黒猫になって、小悪魔っぽくなったッス!」


「そうなんだ。変な色の猫は『なんでもかなえる』といってくれるしそこが面白いんだけど、ゲーム上での選択肢はそこまで多彩にできないから、猫の能力を最初から高くしないでおきたい。そして、この小悪魔キャラで黒猫をヒロイン枠に入れてメインヒロインにする」


「まさかの猫メインヒロイン!」


「黒猫の正体は現実世界に遊びにきていた小悪魔で、たまたま主人公につかまってしまった。そのあとしばらくの展開は同じだ」


「告白したり、二次元ヒーローみたいになったりするんスね」


「そうだ。大筋はそのままだし、彼女候補はさっき考えてくれてたけど、さらに、ご近所に住む年上さんとか、先生とか、店員さんとか、もっと多い方がいい。むしろ主人公の性別関係なく、彼氏候補もいれたい」


「おぉお!!」


「誰にでも告白できるけど、黒猫の力が弱いから、簡単にはうまくいかなくて、黒猫と協力して、やっとうまくいく流れにしたい」


「全体的にラブコメ特化するんスね」


「そ。やっぱウケ狙いならラブコメだろ。黒猫が小悪魔で力が足りないからヒーロー系の選択肢は少なくする。ヒーロー系はお笑いとか人情とかネタパートだな。そして、ここからがキモなんだけど、告白もヒーロー系も、一定時間過ぎたら乗っとりが現れて、強制的に乗っとられパートになって、簡単に告白ENDやヒーローENDにはたどりつけない」


「おぉ! オレっちの自動自爆機能がここに!」


「あ、乗っとりは、今回『世界が元に戻ろうとする修復力』になっているが、最初は黒猫も主人公もどういった力で事件が起きているかわからない」


「てことは、黒猫バージョンではループしてない、まっさら一周目状態ってことッスね」


「そうだ。黒猫でループするのは、どの彼女彼氏やヒーローヒロインを選んでも、毎回同じ時期に同じ事件が起こって中断させられてやり直すときだけだ。何回やり直してもENDにたどりつけないことで、この中断原因を解決しないとうまくいかないんじゃないかと気づかせて、黒猫と主人公は協力して修復力をどうにかすることになる」


「そんな間に黒猫との絆が深まっていくんスね!」


「その通り。最終的に修復力だとわかり、黒猫は世界をゆがますほどの望みはかなえられないという結論にたどりついて、最初にのぞみをきくところに戻って、黒猫があらためて選択肢を出す」


   ☆


「悪いけど、今のボクがかなえられるのは、ボク自身のことだけみたいだ。どうする? 猫としてここに残ろうか? お世話してくれるなら、おしゃべりくらいつきあうし、たまにならなでても許してあげるよ。それとも人間の姿を真似ようか? 告白全然うまくいかなかったキミのために、パートナーのふりくらいしてあげるよ。あ、今なら邪魔が入らない絶妙な手伝いができるだろうから、告白の手伝いをしようか? 今度こそきっとうまくいくよ」


   ☆


「これ、人間の姿パートナーを選ぶと、黒猫の性別はどうなるんスか?」


「黒猫パートナールートだと、黒猫の姿は数種類のタイプ別で男女ともに選べる。で、黒猫と恋愛するかも選べて、最終的に、黒猫のペットENDか、タイプ別の黒猫恋愛ENDか黒猫友情ENDになる」


「猫救済あざーッス! めっちゃ救われました!」


「ただなぁ。どうしても最初の案ほどの尖りがないんだよなぁ」


「そうッスか? ラブコメ特化それぞれのシナリオがハチャメチャそうで楽しそうッス!」


「そういってくれるなら、いちおうこれもまわしとくか」


「おねしゃッス!」



☆終わり☆

『ドキドキ☆告白しちゃっていいですか?』も捨てがたかったんだけど、女性向けタイトルな気がしたので、『君に想いを告げさせて』になりました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ライフハッカー 高山小石 @takayama_koishi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ