幽霊爆破

尾八原ジュージ

グルグルグルグル

 いや〜、わりといい一軒家やのにウソみたいな家賃やったから怪しいなぁとは思ってん。でもやっぱ広いうちってええやん? せやから結局借りることにしてん。そんで引っ越し当日な、やっぱ広いわ〜ええわ〜っつってめっちゃテンション上がってオレ、部屋の真ん中にドーンとベッド置いてそこで寝てん。したら案の定出て。いや出るちゅうたら幽霊一択でしょうが。長い髪をこうダラァーッ垂らして俯いた陰気な女が、一晩中オレのベッドの周りをグルグルグルグル回んねん。一日目は変な夢見たなぁで流してんけど、次の夜もその次の夜もグルグルグルグルやられて、さすがにこれは夢ではないなと思って、そしたらオマエ何が楽しくて一晩中グルグルグルグルやってんだオレ眠れへんやろがって腹立ってん。そんでまぁとりあえず、ベッドが部屋の真ん中にあるのがアカンのとちがう? と思ってオレ、ベッド壁に寄せてん。左側をこう壁にピタッとくっつけて、これやったらええやろと思ってんけどそんでも回んねんな幽霊! 壁あってもグルグルグルグルグルグル回んねんな。アホかオマエ壁やぞココと思うんやけど、まぁ相手幽霊やし関係ないんやろなぁ。どういう仕組みかさっぱりやけど、とにかく壁あってもグルグル回ってんソイツ。そんでオレなぁ、一方やったらあかんのかいなと思って、今度は頭の方も壁につけてん。つまりその部屋の角にベッドをピタッとくっつけてんけどな。うん。回んねん。全然回んねんアイツ。辺がふたつ壁にくっついてるくらいやったらアイツら余裕やねん。余裕でグルグルグルグルグルグル回んねん。そんで寝てても気になってグッスリ眠れへん。女は相変わらずダラァ〜って髪垂らして陰気やしもう余計に腹立って腹立って、ほんで発破に使うダイナマイトあるやん? あれ一個持ってきてな、ガチャガチャやって地雷作って置いたってん。これ踏んで吹っ飛べ幽霊! って感じで。まぁ幽霊が地雷踏んで吹っ飛ぶかどうかわからんから半分くらいはシャレのつもりでな、ベッドの壁にくっついてる反対側に置いて寝てん。うん、そう。結局それオレが踏んでん。例によって夜中にグルグルグルグルグルグルやられて、寝不足でダルぅ〜でも会社行かな〜って欠伸しながら起き上がって、ボケーッとしたまま普段通りにベッドから降りたとこで地雷踏んでん。あっしまったと思ってんけど後の祭り、ドカーン!! えっらい音してん。わははは。まぁそういうわけでオレ死んで幽霊になってん。そんで幽霊になってみると不思議やなぁ、ベッドの周りをグルグルグルグルするの、コレなかなかええもんやねってことがわかってん。いやホンマにそう。これ幽霊にならなわからんかったやつやで。ほんまええでぇグルグルグルグル。でもまぁ生きとるアンタにはわからんのやろなぁ。試しに死んでみる? 幽霊になれるかどうかは知らんけど。しっかし気の毒なのはあの女のコやなぁ。オレがドッカーン吹っ飛んだときに一緒に吹っ飛んでしまったんやろか? いなくなってしもてん。いや〜幽霊にも地雷って効くんやなぁ。せっかくここでいい感じにグルグルしとったのに、オレのせいでごめんなぁっていっぺん謝りたいんやけど、オレどういうわけかここから動けへんからあのコも探しに行かれん。まぁしゃあないわ、あのコも今はどっか別の場所でベッドの周りグルグル回ってんのとちゃうか。せやったらええな。ちゅうわけでね、今夜も回らしてもらいますけどもよろしく。どうぞ地雷とか置かんでね、お願いしますね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幽霊爆破 尾八原ジュージ @zi-yon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説