家族
飛びかかりざまに、左腕を食い千切る少女を、右の拳で叩きつける。轟音と共に、工場の壁に大きな穴が開く。
目を丸くする神を名乗る猫を尻目に、穴の空いた壁に向き直る。程なくして蜘蛛の様に壁を四つん這いになり這い出た少女が襲ってくる。
少女の透き通るような肌に、赤黒い血管が浮かんでいる。両手の爪は異様に長く、体格に似合わない重たい攻撃が矢継ぎ早に飛んでくる。それをいなし、繰り出した蹴りで路地奥へと吹き吹き飛ばす。
「わぁ、わぁ、ちょ、ちょっと」
少女が飛んでいった闇へ掛けて行く。
6度目のため息を付きつつ、暗がりに消える白い影の後についていく。
「で、どうする?」
首を持ち上げられ宙吊りのそれに問いかけるが返事はない、その代わりにランランと見開き笑う目が、無造作に投げ飛ばす白い塊を、残った右手で受け止める。
「なんとかしないと、なんとか」
体をよじり掴まれた手から逃れると、またも聞き取れない言葉を発しながら、少女の元に掛けていく。しかし、状況は変わらず、再び元いた場所に飛んで来る。
「無理じゃないか?」
「でも、家族ですから」
よろよろと立ち上がり淀みなく答えると、再び駆け出す。
「どうしてこうも喋る猫って奴は……」
ちらつく過去に口元が緩む。頭を掻きながら、家族と格闘する白いボロ雑巾の元に歩みだす。
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