八方塞がり

「ふう、今日も疲れた~」


 部屋に戻るなり私はベッドに倒れこむ。大変行儀が悪いの百も承知だ。しかしなかなか困難な依頼だったのでこれくらいは許して欲しいものだ。


「最近、依頼もこなしてお金も貯まってきたなあ」


 国家魔法師の金庫に預けてある金貨や銀貨は大分貯まってきていた。


「魔法の研究とかも本格的にしていきたいし、本とか大量に買い込んでしまおうかな……」


 この世界での国家魔法師の給料は他の職業より遙かに高い。それは魔法が使えるからというのもあるし、なにより国民のために尽くすというものからきている。

 なので多少の贅沢をしても正直問題ないようなお金を今の私は持っていた。正直元の世界に戻るという目的がなかったらもっと遊んでいただろう。

 依頼をこなしながら私は王都の図書館も利用して元の世界に戻る方法を探していた。しかしどれだけ探してもそれらしいものは見つからない。

 国家魔法師の特権を利用していろいろな人に聞き込みをしたりしたがそれでも手がかりになるようなものは見つからなかった。


「私本当に元の世界に帰れるんだろうか……」


 王都に来てから随分時が立つ。ここでも手がかりがないとなると他の場所で元の世界に帰れる方法が見つかるのは期待薄だった。


「ううん、弱気になっちゃ駄目! きっと見つかる! さっ、今日も研究だ!」


 私は頬を叩いて、魔法の研究に取りかかる。不安を押し殺すようにその後は一日中研究に没頭するのだった。

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