王都エルディと新しい生活
「それじゃ、ヴィクトールさん、行ってきます」
結果が届いた後、私は王都エルディに生むに向かうため、準備を終えて出立の時を迎えていた。
「気をつけて、向こうでは一人で暮らさないといけないのは大変だと思うけど困ったらいつでも頼っておいで」
「はい、本当に今までありがとうございました。あなたがあの時助けてくれなかったら私は死んでいましたから感謝しています」
「あれは本当に偶然でした。でもあなたの命を救えたので今はよかったと思っていますよ」
「王都でもヴィクトールさんに泥を塗らないように頑張ります」
「ふふ、いってらっしゃい。私もあなたと過ごした時間は楽しかったですよ。勉強熱心な人が側にいるのはとてもいい刺激でした」
ヴィクトールさんはそう言って手を差し出してくる。私はその手を少し力を込めて握り返した。
「王都に行っても定期的に連絡はしますね。なにもないのは私も寂しいので」
「ええ、こちらもあなたからの連絡を楽しみにしています。こっちにも噂が聞こえてくるような国家魔法師になってくださいね」
「あはは、そう言われてしまうと肩に力入ってしまいますよ。でもやるだけやってみます」
私はそういって握手していた手を話す。そうしてヴィクトールさんと反対のほうを向いて振り返ることはせず、王都に向かって歩き出した。
*
「さて……魔法師の宿舎はこっちか」
王都エルディに着いた私は自分にあてがわれた宿舎を探して彷徨っていた。さすがに王都だけあって街が広く、辿りつくのに時間がかかっていた。
「あった、ここか」
ようやく見つけた宿舎の扉を私は開く。中には受付のようなものがあり、そこには受付の女性がいた。ヴィクトールさんから聞いたが、国家魔法師はここで依頼を受けて報酬を得るのだそうだ。あまり依頼をこなしていないと王国から国に対する貢献が少ないということで資格を取り上げられてしまうらしい。後、魔法についての研究も提出しないといけない、資格を維持するのが結構厳しいのだ。まあ、その分いろいろな面で特権も大きいのだけど。
「すいません、この宿舎に入ることを希望していたキリカ・シモツキです。自分の部屋に案内して欲しいのですが」
「キリカ・シモツキ様ですね。お部屋はこちらになります」
受付の人は丁寧に対応すると私を部屋へと案内する。案内された部屋は綺麗に掃除されており、生活していくのになんら不便のない設備が揃っていた。
「どうぞ。今日からこの部屋はキリカ様が自由にお使いになってください。なにか聞きたいことがありましたら受付の我々に尋ねてくださいね。書類関係のほうは後で受付のほうで記載をお願いします。」
受付の人は無表情に事務的に説明を行い、ドアを締めて去る。
「ん、少し疲れたな」
私は部屋のベッドに倒れ込むとそのまま大の字で寝そべる。
「考えてみたらこの世界に来て完全に一人になったのは最初の時以来か」
初めてこの世界に来た時以来の一人の状態に少し寂しさを感じる。それだけヴィクトールさんの屋敷は居心地がよかったということだろう。
(この仕事を通して元の世界に戻るための方法を探す。その意志は変わりないけど)
「この世界も悪くないなあ」
思わず口にしてしまった言葉を振り払うように私は頬を軽く叩き、起き上がる。
「さて、物思いに更けるのはこれぐらいにして王都を散策でもしてみようかな」
こうして私の国家魔法師としての生活が王都で始まった。
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