坂原優衣 [ 4 ]
……寝られない。
やっぱり今日もダメだったか。
寝れるかもと思ったんだけどなぁ……
スマホをつけると……今はちょうど1時くらいだった。
なにか暇つぶしになるものでもないだろうか。
無理やり寝たとしても2、3時間で起きてしまうので、とりあえず今はスマホでも見ておこうと思う。
そういえば、今日行ったお店を調べていなかった。
なんのお店かくらい調べておこうかな。
『auto-sacrificium』
チラシにはそう書いてあった。
店の名前を入れ、検索をする。
……あのお店のものと思われるサイト等は無かった。
そのお店の写真等も。
『auto-sacrificium』
……ラテン語で自己犠牲
そう、検索して出てきたのはその言葉の意味だった。
自己犠牲……?
どういうことだろう?
お店の名前としては不向きなような気がする。
なんのお店……なんだろうか。
本屋や図書館はカウンターが見当たらなかったから違う気がするし、だからといってほかの何かが思い浮かぶ訳では無い。
本しか無かった。なら何のお店なのだろう?
今考えても分からなそうだ。情報が少なすぎる。
他のことでも考えよう。
最近は……何かあっただろうか。
いじめが始まってから約1年弱。
未だに慣れることは無かった。
されることは何となくわかっても、「あぁ、またか。」と思うことは出来ず、少しの希望に縋ってしまう。
────明日は、無いんじゃないか。あっても、誰かが『辛かったね。もう、大丈夫だよ』なんて言ってくれるんじゃないか。
そんな希望に縋ってしまう。
その結果、いつもその希望を打ち砕かれ心が傷んでいく。回復する暇もなく、心を抉っていく。
その結果がこれだ。
ついこの間、さすがにやばいんじゃないか、と思って調べてみたら不眠症やら鬱病やらたくさんの病名が出てきた。
全て、精神病関連の。
自覚、というのもまた悪化する原因になるようで。
過呼吸になりかけたり、三徹以上(仮眠2・3時間くらい)になったりするようになった。
あまりそれが続いても倒れてしまうので、睡眠薬を……規定の量より少し多く飲んで無理やり寝る。
でも、そうすると大抵悪夢で目が覚めてしまう。
悪夢の内容自体は様々で、何かから追いかけられたり、ただただ悪口を言われたり、いつも現実で会うものより酷いいじめにあったり。
でも、終わりはいつも同じで、学校の屋上まで走り、そこから自分の身を投げようとするところで目が覚める。
悪夢を見るとわかっているのに寝るのも、なんだか嫌になってからは本当に全然寝ることがなくなってしまった。
おかげで集中力などはなく、ミスにミスを重ね、それをネタに笑われる始末だ。
でも、そういえば今日は悪夢で目が覚めたわけではなかった。
いいことはあった、のかもしれない。
また、行ってみようか。
次は、店員さんに聞いてみたい。
ここは、なんのお店なのか。どういうことをしているのか。
今日の楽しみができた。
少し嬉しい気持ちになりながら、学校へ行くまでの時間つぶしをした。
auto-sacrificium 宙ノ海月 @junkai
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