Chapter19 笑う者
「ご乗車ありがとうございました。千里中央、千里中央です──」
俊樹が到着したのは、二駅先の
「ここから、北大阪急行が出てる。これに乗れば、御堂筋線まで全ての列車が直通してるから、大阪の中心部へ行けることができる」
時刻は18時。2時間以上逃げ切っているので、もう乗車報告をしなくてもよい。
おそらく、2人のことだ。山田駅と南茨城駅にそれぞれ分かれたに違いない、と俊樹は考えた。
しかし、そのどちらの駅にも、今から彼が降りることはもちろん、通ることさえない。
北大阪急行の乗り場へとやって来た。
券売機で、梅田までの切符を購入した。
値段は380円だった。
大阪駅から宝塚駅までの運賃は330円。そして、蛍池駅からここ千里中央駅までの運賃は290円。
合計でちょうど1000円になった。他社路線利用可能金額ぴったし。これも計画通りだ。
ちなみに券売機上にある路線図を見ると、千里中央駅の隣、
1970年に開催された大阪万博が開催された際にあまりにも多い来場者を輸送した結果、多額の利益が余り、その結果、このような破格の安さとなっているのである。
18時11分になり、なかもず行きの電車は発車した。
すぐに地下区間を出て、そこから新御堂筋に挟まれるような形で走っていく。
大阪の中心部へと向かう便かつ出発してすぐなので、車内は混んでいない。シートに腰を下ろすことが出来た。
連なった車の赤いテールランプが、灯りだした大阪のたくさんの楼の灯りと橙と紺に染まった空とマッチした美しい情景が俊樹の目に映る。
──長かった。
思えば、今から10時間前はみんなで大阪駅に集合していた。そこから、充が逃走を始め、孝之と共に追いかけた。
三宮で再び落ち合い、内容の濃い午後の部がスタートした。
色々あったけど、凄く充実した1日やったな。
1人でエモさに浸る俊樹を乗せて、なかもず行きは新幹線とJR線の乗り換え駅の新大阪に入線した。時刻は18時25分。ゲーム終了まで残り、5分──。
ホームには多くの利用客の姿があって、開いた扉から電車内へ雪崩れ込んで来た。しかし、俊樹の乗車しているのは、一番後ろの車両なので、中間部よりは人は多くない。
新大阪駅を発車。これから、西中島南方駅を過ぎると、淀川を渡り、いよいよ梅田はすぐ目の前だ。
小さくガッツポーズを──。
バッ。
突然、拳を使ったその手が掴まれた。
びっくりして、顔を上げる。
手を掴んでいたのは、充だった。
☆次回 Chapter20 遡ること…
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