最終章 大波乱。鬼ごっこ後半戦
Chapter13 開幕
「ご迷惑をおかけして、すいませんでした!」
俊樹の頭を深々と下げる謝罪から午後の部はスタートした。
「今から、3時半までやけど、どうする? 誰が逃げる?」
孝之が2人に言った。
「まず、間違いなく、俺は外すやろ。となると、逃走者は必然的に、孝之と俊樹になるな」
「そうやな」
「孝之くん、逃げていいで」
俊樹が言った。
「いや、俊樹からでいいよ」
孝之が遠慮すると、俊樹は首を横に振った。「さっき、2人には心配させてしまったし、いいよ」
それに充も賛同した。
「じゃあ……俺、逃げるわ」
孝之は右手を勢いよく上へと伸ばした。
「おう!」
「充より長く逃げ切るわ」
自信満々に語った孝之。
鬼チームとなった充と俊樹はゲーム開始してから30分は待機しなければならない。その間に、孝之はニコニコしながら別れて行った。
しかし……。
「はい。確保」
逃走開始からまさかの40分後に孝之は充に捕まった。
「くそ〜! なんで、今津駅におんねん!」
「乗車報告からすぐ分かったからな」
呆気なくお縄になった孝之に代わって、今度は地上なら安心の俊樹が逃走者に。
充と孝之にとって、なかなか手強そうな感じがした。
だが、こちらも。
「みつる〜。俊樹を甲子園で捕まえたで!」
逃走からまた1時間経たずに確保されてしまった。
巡り巡って、午前の部王者、充が再び逃走者になった。午前中のことがあるので、かなり警戒していた俊樹と孝之だったが……。
「はい。あなたはもう終わりです」
「えっ、ちょっと待って、待って! ──君たちは一体誰でs」
「とぼけんなアホ」
村田充、大阪府高槻市の高槻市駅のロータリーで現行犯逮捕。必死に抵抗するものの、2人からの(厳しい)突っ込みのフルボッコにあい、大人しく改札内へと連行されて行った。
短時間の間に、逃走者と追跡者が次々と入れ替わる、イギリスのトラス前首相もびっくりの状態が連鎖してしまうというまさかの展開。
時刻はとっくに午後3時を回っていた。
「午後の部パート1は、かなりあっけないラストが多かったな」
孝之が言った。
充が疲れた表情ながらも頷く。
「ほんまにそれな」
「パート2は3時半からやわ」
俊樹が言った。あと10分だ。
「じゃあ、さっさと逃げるやつ決めなあかんな」
充が言うと、
「今度はさ、ルーレットで決めへん?」
孝之が言った。
「お〜! いいな、それ!」
「賛成」
2人もそれに納得した。
孝之がWebルーレットを検索して、そこに3人の名前を書き込み、文句なしルーレットスタート。
勢いよく針がグルグル回る。
そして……。
「逃走者は、俊樹です!」
「僕か〜」
「頑張れ」
充の言葉に、「意外とこれ難しいって分かったからな〜。不安ちゃ不安」、少し弱気な様子を見せる。
「鬼のペアは改めて、充と俺ね」
「これは最高のペアやからな」
「そうなん?」
「知らんけど笑」
俊樹が笑った。「よし! じゃあ、6時半まで逃げ切りますわ!」
「大丈夫。すぐまた捕まえるわ」
「じゃあ、少しの間、動くなよ!」
俊樹はホームへと続く階段を上がって行った。
午前15時30分。俊樹、逃走開始───。
☆次回 Chapter14 淡路駅、再び
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