集められた3人②
「鬼ごっこ……ですか?」
俊樹が言った。
「そう。鬼ごっこ。そして、名付けて、『電車を使って一日中鬼ごっこ〜京阪神・夏の陣〜』だ!」
「電車で鬼ごっこって言ったら、YouTuberの西◯寺さんの動画を思い浮かべるんですけど」
と、孝之。
「まぁ、それに近いかな〜」
「範囲は?」
充が聞いた。
「京阪神地区。みんなにはこれを使って鬼ごっこをやってもらいます!」
そして“とある男”は自分の鞄をゴソゴソと探ると、薄い黄色いカードを取り出して見せた。
「あっ!」
“とある男”が手にしているカードを見て、一番反応が良かったのは、阪急の
「阪急・阪神1dayパス」とは、1人1300円(小人は650円)で一日中、阪急電鉄全線・阪神電車全線・神戸高速全線(
「これなら、お得に、カツ、モトを取れるな〜」
俊樹にはなんでも「モトを取る」ことを常に考える癖がある。
「じゃあ、俺らはこの1dayパスが使える所しか逃げたらダメなんですか?」
「おっ! いい質問ですね!」
充の質問に“とある男”はすごくいい反応をした。「じゃあ、これからルールを説明します。まず……」
※
ここからは私作者、醍醐潤が、「電車を使って一日中鬼ごっこ〜京阪神・夏の陣〜」のルールを説明します。
基本的なルールは、一般的な鬼ごっこと変わりません。鬼手が逃走者を追いかけて捕まえれば、鬼手の勝ち。逃走者が逃げ切れば、逃走者の勝ちです。
今回は「変わり鬼」方式を採用しており、鬼手が逃走者を捕まえると、立場が逆転します。
逃走手段は両者ともに鉄道と乗り換え時の徒歩のみ。
また、移動時のルールとして、阪急・阪神・神戸高速鉄道は1dayパスの範囲内なため何度も利用可能です。前記の鉄道会社以外の会社線(例えばJR京都・神戸線、大阪メトロなど)は、鬼が2回づつ、逃げ子は各1回づつ、どちらも合計1000円以内しか利用できません。また他社線の乗車時間は30分を目安とします。ただし、交代後はそれまでの回数制限は解除されます。
今回の逃走範囲は、京阪神地区。この範囲内ならどこに逃げても構いません。
ゲーム時間はこちらです。
【午前の部】8:00〜11:00
【午後の部①】12:00〜15:00
【午後の部②】15:30〜18:30
11:00〜12:00はお昼休憩で休戦時間です。ただし、逃走者はゲーム開始時間30分前から逃走することが可能です。
スタート地点は関西を代表する巨大ターミナル駅の一つの梅田駅。阪急、阪神、JR、大阪メトロが乗り入れており、逃走手段の数が多いです。
鬼手の人数は2人。逃走者は1人です。なお、鬼手は別行動が可能となっています。
逃走者には「列車の乗車駅」、「乗車時刻」、「乗車号車」をグループLINEにて報告しなければなりません。また、阪神・阪急以外の会社線を利用した場合、路線名を下車後に報告の義務があります。
この情報をもとに鬼手は逃走者の乗車している列車を特定し確保に繋げます。逃走者は自分の乗車中の列車を誤魔化すため、同時刻に同じ駅を発車する列車と被せるなど工夫が必要です。
また特別ルールとして、大阪/大阪梅田/梅田/西梅田/東梅田などは呼称を梅田に統一。(神戸三宮・三宮・三ノ宮→三ノ宮に統一
そして、逃走者は2時間以上逃げ切れれば、30分間、グループLINEへの報告を免除できます。
また、ホーム上では走るなど言語道断。マナーを守ってゲームを楽しまなければなりません。
その他、3人には1人あたり2500円が、お昼代と他社路線利用料金として“とある男”から支給されます。
以上が鬼ごっこのルールとなります。
※
「じゃあ、チームはどうなるんですか?」
説明を全て書き終えた後、俊樹が尋ねた。“とある男”はテーブルの上にあったオーダー表を一枚手にすると、裏返しにして線を引き始めた。
「これで決めます!」
あみだくじだった。「さぁさぁ! 好きなところに自分の名前を書いて!」
名前をすぐに記入すると、一番下に「鬼」と「逃」が書き加えられた。
ドキドキする瞬間だ。赤いペンが1人ずつ丁寧に、線の上を進んでいく。
その結果……、
「一番最初の逃走者は、充! そして、俊樹と孝之は鬼手に決まりました!」
充は他の3人から拍手を受けた。
「おめでとう」
「おめでとう」
「あ、ありがとう……?」
なんと返したらいいか分からないので、とりあえずお礼の言葉を言うと、
「じゃあ本気で捕まえないとやな」
孝之は腕まくりをする仕草をした。それに俊樹も頷く。「絶対、捕まえる!」
「おやおや、二人とも闘争心に火がついてるね〜」
“とある男”はニヤニヤしている。充も負けじと言った。
「逃げ切ってやるよ! 俺が絶対勝つし!」
「本当に熱い戦いになりそうだ!」
“とある男”が嬉しそうな声を出す。「どうなるか楽しみだよー」
「決戦はいつですか?」
と、孝之が質問をした。
来週の火曜日、“とある男”が言った。「ゲーム開始場所の梅田駅に集合してね」
充たちは首を縦に振った。
普段はとても仲が良く、親友同士。
それが、本気で対決することになる。捕まえる、逃げ切る──どちらも鉄オタの意地をかけた本気の戦いだ。
「腹が減っては戦はできぬ。よし! 食べるぞ‼︎」
腹ごしらえに食べる料理を決めるため、充たちは、メニューを開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます