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「どうやら、あの村ですね。魔王の手に操られているのは」

「……ああ」

「さぁ、勇者様。一緒に世界を救いましょう」


 チェチェリの町でミカの幻影と対峙してから、俺たちは今まで以上に世界を救うことに奔走した。


 魔王の影響力は日増しに強まり、道中、助けようとした村から思わぬ反撃をされたこともあった。


 その町の住人たちは、魔王に洗脳されていた。


 生者でありながら、ただ死すまで魔王の命令で動き続けるだけの傀儡人形だ。


 許さない、魔王。人間をこんな風に玩具のように扱うなんて。


 けれど。


「剣を向けられたら、剣を向け返すしか俺には方法がない……なぁ、アリシア。俺は間違っているのか?」


 剣の腕はそれなりにあれど、魔王の洗脳を解く技術スキルなんて持ち合わせていない俺は、彼らを殺してあげることしか出来なかった。


「やっぱり、落ちこぼれの勇者なんかに世界が救えるわけ……」

「弱気にならないでください! 魔王を倒して、ミカさんを救うんでしょう?」


 アリシアが弱気になる俺を叱咤する。


「大丈夫。いつだってあなたは正しい。いつか事を成し遂げた時、世界だってきっとあなたを分かってくれるはずです」

「けど……」

「眠れないのなら、私が魔法をかけてあげます。幸せな夢を見れる魔法を」

「不思議だな。お前にそうされると落ち着く……」

「……言ったじゃないですか。癒やしの魔法は得意だって」


 彼女の手で撫でられると強張った身体はゆっくりと解け、よく眠れた。


 以前のような悪夢はもう見なかった。

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