2
モンスターの討伐をしまくったおかげが、俺も勇者としての名が広まった。
これは、チェチェリの町での出来事だ。
「なぁ、聞いたか? 新しい二人組の勇者は、銀髪の美女を連れているらしいぞ」
「かぁ〜! 絶世の美女との二人旅かぁ。羨ましいねぇ」
「ああ。そいつも、魔王を討伐出来なかったら、俺がこの手で処刑してやる」
「聞いたか? 絶世の美女を従えている俺は、魔王討伐に失敗したら、処刑されるそうだ」
「それは当然です。だって、あなたの隣にいる時が、私は一番綺麗なのですから」
「恥ずかしくないのか? 自分で言ってて」
「何がですか?」
「……何でもない」
その日は宿に泊まった。
久しぶりにベッドでゆっくりと眠れると思っていた矢先、何者かから襲撃を受けた。
「今日こそ、お前の首を討つ!」
「なるほど、これが魔族の執着……」
「……止めろ、アリシア。男はノーカウントだ」
いつの日か見た
「いい加減、誰かあいつの魔王の呪縛を解いてやれよ。この国にはまともな解呪師はいないのか?」
「生前、勇者最強の称号を持っていたようですからね」
「……腕が立ち過ぎるのも考えものだな」
「何をこそこそ話してる! 男なら、正々堂々勝負しろォ」
「!」
後先考えずに繰り出された剣士の力技により、宿が崩壊した。
降りしきる瓦礫の雨からアリシアを守る。
「グラース! 魔物たちに囲まれた。さすがにあの数相手はこっちが不利、撤退するよ!」
剣士の仲間らしき一人が、剣士を魔法陣に引き込んだ。
「……くっ! 今行く! ミカエラ!」
魔法陣発動時に敵方のフードが外れ、オレンジの髪がちらりと見えた。
「……ミカ?」
小さな呟きを聞き止めた人物が振り返る。
「アルベルト……?」
その瞬間、魔法陣は消えた。
(……そんな訳ない。そんな訳あるはずが)
「クソっ、
「アル? どうしたんですか?!」
急に地面を引っ掻き始めた俺にアリシアが焦った声を出す。
「ミカ……さっきのオレンジの髪の女を見ただろ? あれが前に言った死んだ幼馴染だ」
「それって」
「ああ、幻術の魔法だろうな」
幻術。
「魔王を倒しに行きましょう。例え幻であっても、ミカさんの安らかな眠りを妨げてはなりません」
「ああ」
俺は頷いた。
彼女の存在がこれ程心強いと思ったことはない。
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