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 モンスターの討伐をしまくったおかげが、俺も勇者としての名が広まった。


 これは、チェチェリの町での出来事だ。


「なぁ、聞いたか? 新しい二人組の勇者は、銀髪の美女を連れているらしいぞ」

「かぁ〜! 絶世の美女との二人旅かぁ。羨ましいねぇ」

「ああ。そいつも、魔王を討伐出来なかったら、俺がこの手で処刑してやる」

「聞いたか? 絶世の美女を従えている俺は、魔王討伐に失敗したら、処刑されるそうだ」

「それは当然です。だって、あなたの隣にいる時が、私は一番綺麗なのですから」

「恥ずかしくないのか? 自分で言ってて」

「何がですか?」

「……何でもない」


 その日は宿に泊まった。


 久しぶりにベッドでゆっくりと眠れると思っていた矢先、何者かから襲撃を受けた。


「今日こそ、お前の首を討つ!」

「なるほど、これが魔族の執着……」

「……止めろ、アリシア。男はノーカウントだ」


 いつの日か見た剣士ゆうしゃの姿を見た瞬間、俺はげんなりした。


「いい加減、誰かあいつの魔王の呪縛を解いてやれよ。この国にはまともな解呪師はいないのか?」

「生前、勇者最強の称号を持っていたようですからね」

「……腕が立ち過ぎるのも考えものだな」

「何をこそこそ話してる! 男なら、正々堂々勝負しろォ」

「!」


 後先考えずに繰り出された剣士の力技により、宿が崩壊した。


 降りしきる瓦礫の雨からアリシアを守る。


「グラース! 魔物たちに囲まれた。さすがにあの数相手はこっちが不利、撤退するよ!」


 剣士の仲間らしき一人が、剣士を魔法陣に引き込んだ。


「……くっ! 今行く! ミカエラ!」


 魔法陣発動時に敵方のフードが外れ、オレンジの髪がちらりと見えた。


「……ミカ?」


 小さな呟きを聞き止めた人物が振り返る。


「アルベルト……?」


 その瞬間、魔法陣は消えた。


(……そんな訳ない。そんな訳あるはずが)


「クソっ、転移ワープか!」

「アル? どうしたんですか?!」


 急に地面を引っ掻き始めた俺にアリシアが焦った声を出す。


「ミカ……さっきのオレンジの髪の女を見ただろ? あれが前に言った死んだ幼馴染だ」

「それって」

「ああ、幻術の魔法だろうな」


 幻術。標的ターゲットの一番弱い部分を顕にした最も卑怯な魔法。いかにも、魔王が好みそうな手だ。


「魔王を倒しに行きましょう。例え幻であっても、ミカさんの安らかな眠りを妨げてはなりません」

「ああ」


 俺は頷いた。


 彼女の存在がこれ程心強いと思ったことはない。

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