3

 案外、あっけない別れだった。


 あれ程望んでいた一人旅はスライムの肉のように味気なかった。


 そして、ある町を訪れた時、慌ただしい人波とすれ違った。


ドラゴンが現れたぞ! 弓の勇者が闘ってるけど、もうすぐここも火の海になる! 早く逃げろ」

「銀髪の嬢ちゃん、大丈夫かな。若いのに可哀想に」

「仕方ねぇよ。嘆いたって俺らにゃ何も出来ねぇ」


(……アリシア!)


 気が付けば、駆け出してた。


(自分が行って何になる? 守れないくせに。自分から送り出したくせに……いや、何を弱気になっている、アルベルト! 勇者としての実力も何もかも中途半端な俺を、あの子はずっと信じてくれたじゃないかっ)


「アリシアッ!」


 目の前で、綺麗な銀髪が火に照らされていた。


 俺は大きく息を吐き、


水球ウォーターボール


 腕の中に落ちてくる彼女を抱き留めた。


「ア……ル?」


 幽霊でも見たかのように瞬きをしているアリシア。


「何をそんなに驚いているんだ?」

「だって……まさかあなたが私を助けてくれるなんて」

「……別に不思議なことじゃないだろ。なんせ、俺はあんたの勇者らしいし」


 アリシアのぽかんと半開きになっていた唇は、やがて三日月に描かれた。


「! そうですね、そうでした!」

「とにかく、こいつを倒すぞ。アリシアは援護サポートに回ってくれ!」

「はい!」


 背中を預け合っての闘いは、久々に心が踊った。


「……回復ヒール

「痛てて。もっと優しくしてくれアリシア」

「普段から鍛錬を怠けているからですよ」

「悪かったな。最後まで格好つかなくて」


 結果は、ドラゴンに圧勝した……とはいかなかったが、最終的には俺たちが勝った。


「でも、私を助けに来てくれた時のアル、格好良かったです!」


 きらきらとした瞳で話すアリシアと。


「それは良かったな」


 気恥ずかしく顔を逸らす俺。


 勇者と女神。2人だけのパーティーと言っても、今までと変わらない。


 果物を取って、魚を釣って。時々湧いて出る魔物や蛆虫ゆうしゃからアリシアを助けて。


 けれど、何故かそれがしっくり来た。これが本来の形だったんではないかと思う程に。

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