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案外、あっけない別れだった。
あれ程望んでいた一人旅はスライムの肉のように味気なかった。
そして、ある町を訪れた時、慌ただしい人波とすれ違った。
「
「銀髪の嬢ちゃん、大丈夫かな。若いのに可哀想に」
「仕方ねぇよ。嘆いたって俺らにゃ何も出来ねぇ」
(……アリシア!)
気が付けば、駆け出してた。
(自分が行って何になる? 守れないくせに。自分から送り出したくせに……いや、何を弱気になっている、アルベルト! 勇者としての実力も何もかも中途半端な俺を、あの子はずっと信じてくれたじゃないかっ)
「アリシアッ!」
目の前で、綺麗な銀髪が火に照らされていた。
俺は大きく息を吐き、
『
腕の中に落ちてくる彼女を抱き留めた。
「ア……ル?」
幽霊でも見たかのように瞬きをしているアリシア。
「何をそんなに驚いているんだ?」
「だって……まさかあなたが私を助けてくれるなんて」
「……別に不思議なことじゃないだろ。なんせ、俺はあんたの勇者らしいし」
アリシアのぽかんと半開きになっていた唇は、やがて三日月に描かれた。
「! そうですね、そうでした!」
「とにかく、
「はい!」
背中を預け合っての闘いは、久々に心が踊った。
「……
「痛てて。もっと優しくしてくれアリシア」
「普段から鍛錬を怠けているからですよ」
「悪かったな。最後まで格好つかなくて」
結果は、ドラゴンに圧勝した……とはいかなかったが、最終的には俺たちが勝った。
「でも、私を助けに来てくれた時のアル、格好良かったです!」
きらきらとした瞳で話すアリシアと。
「それは良かったな」
気恥ずかしく顔を逸らす俺。
勇者と女神。2人だけのパーティーと言っても、今までと変わらない。
果物を取って、魚を釣って。時々湧いて出る魔物や
けれど、何故かそれがしっくり来た。これが本来の形だったんではないかと思う程に。
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