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「見てください、アル。綺麗な花が咲いていますよ。こんな季節に珍しいですね」
アリシアは花に詳しい。
いつも花を見かけると、種が飛ぶのを見たとかあれは何ていう名前の花だとか一々報告してくる。
俺にはさっぱりな内容だが、楽しそうで何よりだ。
「私達が出会った時も、リリスの花が咲いていましたね。血のように鮮やかな赤色が綺麗でした」
「メアリの花じゃなかったか?」
「あれ? そうでしたっけ?」
尋ねられたが、正直リリスでさえ分からないなら、俺には尚更分からない。
「あ、大きな魚が泳いでます。確かこの魚、食べられるやつですよね?」
「お、ちょうどいいな。昼は焼き魚にするか」
「やったぁ! じゃあ、私は果物がないか探して来ますね」
俺は釣りの準備をし、アリシアは採取しに森の中へ入った。
「……こんなもんで十分だろ。アリシア? あいつ、どこまで行ったんだ?」
魚は二匹釣れた。しかし、小一時間が過ぎてもアリシアは戻って来ない。俺は森の中に探しに行くことにした。
森に入ると、アリシアはすぐに見つかった。
「絶対に嫌です!」
誰かと揉めているようだった。
「アリシア? 何をしてるんだ?」
「アル! 実は……」
「お迎えに上がりました。
アリシアの勇者を名乗る男が現れた。どうやら、アリシアは回復術に優れた一族の者で、勇者とは婚約関係にあるらしい。
「よかったな。お望みの勇者が迎えに来たぞ」
「良いのですか? 私がアル以外の男の人と旅をしても」
「俺には関係のないことだ」
「……私の役目は、私の勇者に安らぎを与えること。夫となる勇者が安心して戦えるように。だから、世界を守るために行う婚姻は、私の意思など無意味。そう思っていたのに、あなたと出会ってから欲張りになってしまいました。
ねぇ、アル。どうして、私の勇者はあなたじゃないんでしょうね?」
「……」
「なんて、冗談です。今までありがとうございました……さようなら」
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