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「……どうしてそんなに嫌がるんですか。そんなに私がお嫌いですか?」

「嫌いとかそんなんじゃ……」

「なら何故ッ!」

「……俺には世界を救う力なんか無い」

「さっき私を助けてくれたじゃないですか」

「あいつは、既に弱ってた。あんなの助けたうちに入んねぇよ」

「なぁ、あんた」

「アリシア。アリシアです、私の名前」

「……じゃあ、逆に問う。アリシア。どうしてそんなに世界を救いたがる?」


 アリシアは、意志の強そうなはっきりとした瞳を向けて言った。


「それは、私が私たる所以ゆえんみたいなものです。あなたがどんなに勇者をいとおうとも、勇者である事を辞められないように」

「……」

「それに、あなたも、見たでしょう。私が魔に取り憑かれてた勇者に狙われていたのを。私は昔から、魔の者を引き寄せる体質みたいなんです」


 アリシアの話を要約すると、彼女の魔族に狙われる体質により、必然的に国まで魔物の被害に襲われるようになったらしい。


「それで故郷くにに迷惑が掛かるのを恐れて、一人出たと」

「はい」

「それが護衛も付けないで一人で旅している理由か」

「……はい」

「ほんと、馬鹿だな」

「はい?!」


 アリシアがムッとした表情をして見せるが、構わずに話を続けた。


「なぁ、アリシア。仮に俺があんたの願いを聞いたとして、俺に何の得がある?」

「私が勇者あなたの女神になります」

「……は?」

「だって、勇者のパーティーには勝利の女神は必要不可欠でしょ? 私、戦闘方面はからきしですが、癒やしの魔法なら得意なんです!」

「……十分分かったよ。あんたと話しても話にならんこと」

「いやぁ、それ程でも」

「だからソレ褒めてねぇから」


 疲れる。話が通じない相手と対峙するのは、魔物以来だが。


 言葉を話す分、彼女アリシアの方が魔物よりも厄介だ。


「まぁ、とにかく、安心してください」

「?」

「私、諦めませんから。勇者あなた女神わたし無しでは生きられないようにするまで」


 そんな恐ろしい宣言と共に、それから毎日女神の求愛は続いた。

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