プレイ2
Yesを押した瞬間、私はあの一面真っ暗闇の場所からアスファルトで舗装された道の上に立っていた。
しかし縮尺がおかしく、私の右手に植わっている街路樹がかつて見たことのある屋久杉を優に超えるような巨大さを誇っている。
他にもガードレールや道端に転がっている石すらも異様に巨大でまるで自分が小さくなっているかのようだった。
「というよりは本当に私が小さくなっているのでは?」
そう言えばゲームのあらすじとか世界観とか見ていなかったことに今更ながらに気付いた。
そんなどうしようもないことに気付いて少し呆然としていると声を掛けられた。
声の主は巨木と化した街路樹の根本にいた。
「急に目が覚めてビックリしたか?」
「あ、あなたは?」
私は不意に声を掛けられたこともそうだが、声の主の姿にも驚いてうまく声が出せなかった。
「おう、俺の名はすももちゃんだ。よろしくな!」
彼もしくは彼女は兎の姿をしていた。もっと理解しやすく言うのであればシ◯バニアファミリーの兎と見た目がそっくりな姿をしていた。しかも声からして少年のような少女のようなもので区別がつけられなかった。
そのように私はしばらくその姿に度肝を抜かれて声が出せないでいたが、彼もしくは彼女に肩を叩かれて目の前の現実に直視せざるを得なくなった。
「あ、ああ。すみません。」
「どうした?急にぼーっとして。」
彼もしくは彼女は心配そうに私を見ながらそう言うと私を街路樹の根本まで案内した。
「まあ、俺も目覚めた直後はお前と同じだったよ。今何が起きているのかわかっていないんだろ?俺も全部知ってる訳じゃないが教えてやるよ。」
彼もしくは彼女はそう言うとこのゲームの世界観とか各種動作説明をし始めた。
この頃になると私はゲームをしていることを改めて意識し出すと共にすももちゃんと名乗る目の前の人形が所謂チュートリアルNPCと呼ばれる存在であることにも気が付いていた。
「ということだ。わかったか?」
「え、ええ。だいたいは。」
「なら良い。それでお前は何て言うんだ?」
そう言われて今更ながら名乗っていなかったことを思い出した。
「私の名前はポテトです。よろしくお願いします。」
「おう‼️俺の名前はすももちゃんだ‼️よろしくな‼️ちゃんまでが名前だ‼️間違えるなよ‼️」
私とすももちゃんさんは互いに名乗り会うと握手を交わした。
すると目端になにやら文字がポップした。
そこには
『NPCと初めての友好を得ました。』
と書かれていた。
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