第10話
ん、ここはどこだ…?
白い空?いや、天井かな。横には液体の入った袋がいっぱいぶら下がっていた。これ、どっかで見たことある?
あー、ガルシアさんの病室で見たんだ。
………
え…?
僕、生きてるじゃん!!!!!
完全にあの時ダメかと思ったよ!?いやー、治療班すごいな…。
ということは、ここは拠点の救護室か。
ん!?なんでルイスが!?しかも椅子に座って寝てる!?いや、ルイスは椅子で寝ないとかじゃなくて、僕の病室にいてなおかつ周りの状況的に仕事もここでしてたっぽい痕跡があるんだよね。隊長室でやればいいのに。なんで。
「…っ。ぐっ…。」
すっごい眉間にしわ寄せて寝てる。悪い夢でも見てるのかな。
とりあえず状況確認したいから、外に出てみようかな。一応ルイスに毛布かけてあげるか。よいしょ。
あー、もう!体中あちこち痛い。
ベットから起き上がるのに30分ぐらいかかったんじゃない?ってぐらい体が動かなかった。歩くのもしんどいからゆっくり訓練場に向かってる。あそこなら誰かしらいるでしょ。
「フィード、かい…?」
「ガルシアさん!」
訓練場近くに人がいると思って近づいたらガルシアさんだった。なぜそんな幽霊でも見るような目で僕を見るんですか。一応生きてると思うんですけど。
「あの、僕ってどうなったのか教えてもらえますか?」
「え?あ、あぁ。もちろん。とりあえず体辛いだろうから座ろうか。」
「お気遣いありがとうございます。」
その後のガルシアさんの話によると、僕は1週間ほど寝ていたらしい。任務はあの後滞りなくルイスの指揮によって敵国を撤退までもっていったみたい。ただ、慌ただしく帰って来たと思ったら、血まみれのルイスが血相を変えて救護室に向かっていくのが見えたらしい。その時に抱えられてたのが気を失って血を流してる僕だったと。
「その後フィードが処置されてる間に救護室を追い出されたルイスが、訓練場で暴れてたんだよ。そこで理由を聞いたらさ、”フィードが俺を守って怪我を負った。自分が情けなくてイライラする。”って。」
「あのルイスがですか?」
「そうだよ。俺は現場にいなかったけど、目の前で敵にやられたのを見ちゃったし、理由が自分を守るためでしょ?余計なんじゃないかな。」
確かに目の前で知り合いがケガをする場面なんて見たくない。でもなんとなくルイスのそのイライラしてる姿は想像できるけど、まさか僕がケガした程度で起こるなんて。だとしても…
「申し訳ないな…。」
「そうだ、まだ起きていられる?」
「はい、まだ大丈夫です。」
「そしたら、この前の話の続きしないかい?」
この前の話って確か、ルイスは僕とバディを組みたくないっていう話だったよね?それなら聞きたい。ガルシアさんが何を知っているのかは知らないけど。
「ぜひお願いします。」
「わかった。まず、2人が解散させられて時の話からするね。実は―」
話を聞いて衝撃だった。
僕とルイスが解散させられた理由は、前隊長とガルシアさんの相性がかなり悪かったらしく、バディを解消したかった前隊長が、次期隊長候補のルイスとガルシアさんを組ませればバディの解消できると考えて、僕がどうしても邪魔だったらしい。だからいろいろと理由を付けてバディ解消させられたっていうのが真実だった。だからって”使えない”とか”後方支援の方が向いている”とか言わなくてもいいじゃん。僕が使えないのは本当かもしれないけど、ルイスも僕もお互いが嫌いとかになって解消したんじゃなかったんだ。それだけでも知れて良かった。
「あと、これは個人的にフィードに謝らなきゃいけないことがあるんだ。もちろんルイスにも謝らないとなんだけど。」
「謝らなきゃいけないこと?」
「俺は真実を知っていたのに、黙っていてごめん。俺も前隊長とは馬が合わなくて、ある程度時間がたったら解消するつもりだったんだ。だから、ルイスはフィードとバディを解消させられた理由を伝えられてないし、ルイスも解消されたときは怒ってた。ただ、次期隊長に任命されたから飲み込むしかなかったみたい。」
「え?」
「ルイスは突然、バディを解消させられて俺と組まされたんだよ。むしろフィードが後方支援を希望してるって噂で聞いたらしくて、応援してるぐらいだから。これは後からルイスに聞いて知ったんだけどね。内緒だよ?」
「それって…」
ルイスはもともと解消の理由を知らなくて、普通に接してきてたのに、僕が前隊長に言われたことを真に受けて勝手に避けてたってこと…?だから前に臨時で組んだ時も少し嬉しそうだった…?今更だけど、解消した時にルイスと話せばよかったのかな。そしたらもっと早くバディに戻れたかもしれない。でもそうするとガルシアさんのバディがいなくなるからダメか…。
「ん?そんなにみられると恥ずかしいんだけど。」
「いえ、僕とルイスがバディにもし戻ったらガルシアさんはどうするんですか?」
「あー、そのことね。俺はもともと後方支援希望だったんだよ。索敵とか、敵の情報とかを独自に集めて作戦立てるほうが好きなんだ。ただ、君たちお互いがいいのであれば俺はこのままでもいいと思っていたんだけど、どうやら違うようだからね。」
「じゃあ…」
「俺のことは気にせずにルイスとバディ組んでもらっていいんだよ。というか、伝えるのが遅くなってごめんね。」
「そんなことないです。あ、ありがとうございます!」
「ふふっ。お迎え来たみたいだから俺は戻るね。」
迎え?
あ、遠くの方からルイスがすごい剣幕で歩いてきていた。たぶん怒られるんだろうな…
「フィード!!」
ガバッ
すごい勢いで近づいてきたルイスにそのままの勢いで抱きしめられた。
「ル、ルイス…」
歩いてきたっていうより、息がかなり上がってるし髪も乱れまくってるから、走ってきたみたいだ。そんな慌てることない…分けないか。1週間寝てたんだもんね。
「歩いてっけど、痛いとことかないのか?お前なかなか目を覚まさねぇから。」
「うん。心配をおかけしました。」
「ならいい。あとお前が話してた俺とのバディ解消の事だが、ガルシアが復帰するから―」
「やっぱりいい!」
「は?」
「一回救護室戻っていい?僕の体力が限界みたい…、ごめん。」
「あ、あぁ。」
そう言うとルイスが僕を抱き上げて、救護室に一旦戻った。男の人にお姫様抱っこされる日が来るとは思わなかったし、思ったよりも軽々と抱えられるとなんか嫌。ただ、や起きてすぐに歩いて長時間話して限界が来てたからおとなしく抱えられてた。1週間も寝てたから体力とか相当落ちたんだろうな~。もともと無いのに、さらに無くなったら戦えなくなっちゃうかも。なんてね。
救護室のベットに僕が座って、その向かいにルイスが向き合うように座ってるんだけど、どう話を切り出していいかわかんないし、沈黙が辛い…。
「はぁ、で。さっきのやっぱりいいってどういうことだ?」
「あ、うん。あのね。バディ解消の話をなかったことにしてくれないかなって。」
「なんでだ、あんなに嫌がってたのに。」
「うん。さっきガルシアさんと話してたんだけど、僕の思い込みというか、勘違い…でもないけどすれ違いがあったって知ったから、やっぱり僕はルイスと組んでいたいなって。」
「お前は俺と組むのが嫌なんじゃないのか?」
「それ、詳しく話さないとだめ、ですか?」
「質問に質問で返すなバカ。話さないとダメに決まってんだろ。」
「わかったよ…。怒らないでね?」
「保証はしない。」
「うぅ…。」
ルイスに僕とのバディ解消の経緯と前隊長から言われたこと、僕がルイスと組みたくなかった理由とか全部話した。前隊長の言葉とか、僕がそれでルイスと組みたくなかったから避けてたとか言ったら絶っっっ対に怒るもん。
これを話してルイスからバディ解消を言われたら…。それは諦めるしかないよね。
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