第9話
”僕とのバディを解消して欲しい”そう伝えてから結構長くルイスの顔を眺めてる気がする。その間にルイスの顔はドンドン険しい顔になっていっていた。
「なぁ、それ本気か?」
「うん。」
「そうか。すまねぇがガルシアが戻ってくるまではその要望は聞けない。」
「わかってる。戻ってきたら解消になるとは思ってるけど、早めに解消できたらって思って念のため、ね。」
「はぁ、それ以外に用がないなら帰ってもらえるか?」
「うん…。失礼しました。」
帰り際に見たルイスの顔が泣きそうな顔していたのは気のせいだよね。だってルイスは僕と嫌々組んでるはずだから。でも嫌だったらガルシアさんが怪我したとき僕と…いや、あの時は臨時だって言ってたし、前にバディ組んでたから知らない人と組むよりは勝手がわかってる僕と嫌でも組まざるをえないか。勝つために。
それにしても結構勇気を出して伝えに言ったのに解散してもらえなかった…。ガルシアさんが戻ってくるまでどんな顔してルイスに会えばいいんだよ。
「どうしたんだい、浮かない顔して。」
「ガルシアさん!?」
そこにいたのは怪我で前線を離れていたガルシアさんだった。
「久しぶりだね。」
「はい!怪我は良くなったんですか?」
まだ包帯を所々に巻いていたりして痛そうだけど、歩けるまでに回復したんだ!よかった。最近ルイスに連れられてて全然お見舞いいけてなかったんだよね。
「大分よくなってきたよ。完全回復にはもう少しかかりそうだから、ルイスの事頼んだよ。」
「はい…。」
「ん?ルイスと何かあったみたいだね。もし、俺でよかったら話聞くよ。」
ほんとガルシアさんって勘が鋭いというか、洞察力がすごいんだよな。索敵のコツ教えてもらったことあるけど、すべてに無駄がなくて的確なんだよね。こういう人がやっぱり隊長のバディになるべきだと思う。
「えっと、じゃあお言葉に甘えて。
「どうぞ。」
「ルイスとバディを解散しようと思ってて。」
「なるほどねー。解散しようと思った理由はあるのかい?」
「ルイスは僕と組むのはやっぱり嫌なんじゃないかなって思って。」
「ほう。どうしてそう思ったんだい?」
どうして…って、それは-
前に組んでいて解散したとき、隊長から内容を聞いてるはずだし、そんな僕とまた組みたいって思えないと思うからなんて言えない…。
「僕は使えない隊員だからです。」
「フィードは自分の事そう思ってるのかい?」
「え?…はい。そう言われましたし。」
「そっか、じゃあ—」
「お話し中失礼します!」
そう声をかけてきたのは新入隊員の子だった。
「どうしたんだい?」
「敵が現れたとのことで、至急任務について欲しいとの伝言です!」
「そっか、ありがとう。じゃあフィードまたあとで話の続きをしよう。だから、ちゃんと帰ってきてね。」
「はい。」
任務のせいでガルシアさんが何を言おうとしてたのか聞けなかった。気になりすぎて集中できない…。敵が来てるんだから集中しないとって思うと余計気になる。
『おいフィード、バディ解消できなかったからって任務放棄はやめろよ?』
『そんなことしないよ。任務は任務だし。』
『ならいい。』
でも正直集中できてないから放棄してるのと同じかな。
『ほ、報告します。索敵しましたが、敵発見できず。撤退したものと見えます。』
最近は新入隊員の育成ってことで僕も索敵するけど、報告は新入隊員さんにほとんどを任せるようにしてる。指導って苦手だし今までろくにしてきたことないからできればやりたくなかったな~。念のため僕も索敵してるからあまり心配はないけど。今回に関しては僕も敵は見えなかったんだけど、最近の敵国は隠密がうまいから撤退したとまっでは言えないかな。
『わかった。フィードはどう考える?』
『最近の敵国の様子から撤退は考えずらいと思いますが、敵は見えてません。』
『わかった。警戒しつつ待機範囲を広げる。』
範囲広げれば何か見えるかな、ってあれ敵じゃない?あのこそこそ動いてるやつ、1人?周りは…いなさそう。
― 敵マークできる?
『承知しました。』
共有して一応報告するかな。
『報告します。敵を1人発見しました。共有します。』
『他の奴らは周りにいなさそうだな。』
『はい。でも潜んでる可能性があるので気を付けてください。』
『おう。』
【視界外からの魔力を検知。マークします。】
視界外から!?ん!?あれって絶対にルイス狙ってる位置じゃん。ルイスに報告しても間に合わないだろうしな…しょうがない、か。ここからなら僕の足でもなんとか間に合うかな。最近はこんなことするようなキャラじゃなかったんだけどな。ルイスと組んで昔に戻った感覚になったからかな。貸し1だからね!
銃を手元に呼び、足に少しだけ魔力を集める。何も武器のない状態で突っ込むよりいいでしょ。足に魔力集めてるからいつもより跳躍のスピードも距離も違うからすぐ向かえるはず。ガルシアさんの時みたいに失敗はしない!
「フィード!!!!!」
ルイスの叫び声と同時にドンッ鈍い音が聞こえ、鮮血が目の前に一瞬上がる。と同時に僕も引き金を引く。一応敵にも攻撃が入った感触があったからすぐには逃げられないと思うんだけど…。あとはルイスと他の隊員が何とかしてくれるかな。
痛いなー。敵の攻撃結構全力じゃん。ショットガンかな?クラッチクローかな?どっちにしても一撃で何箇所か攻撃できるような武器には違いない、まぁ敵国に攻めてきてるんだし殺傷能力高いものにするよね。そういえばさっき見えた敵は、あぁ、皆が戦ってくれてるんだ。よかった。
鈍い音が鳴ったけど、僕の体無事かな。あー、フィードが珍しく泣きそうな顔してる。ふふっ、レアだ。
「おい!フィード!!フィード、聞こえてるのか!?」
「うるっ、さい、な…。聞こ、えてるっ、て。」
「なんで俺の前に飛び出したんだよ!俺に知らせてくれれば避けれた!」
「どう、かな。」
完全にルイスの視界から外れてたから、避けられたかわからない。だったら僕が行った方が早いって思って間に滑り込んだけど、思いのほか重症になっちゃったな。
そろそろ僕の意識も限界かも。とりあえずルイスがいればなんとかしてくれるでしょ。さっきから耳元でルイスが何か言ってるけどもう聞こえなくなってきた。僕…いや、そんな事ない。大丈夫。ただ寝るだけ。そうだよ。
「ルイス、ごめん。」
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