第7話


 ガルシアさんが怪我してから数日間はルイスとバディになるためにいろいろ手続きがあって忙しかったし、休みなんて無かったから久々の休日!ゆっくりできる!




 …はずだったのに。

 なんで僕の家にルイスがいるんだよ…。ちゃっかりコーヒー飲んでるし。いや、もしかしたら夢かもしれない。よし、寝よう。おやすみなさーい。



「寝てんじゃねぇ―!!」

「夢、じゃないですよねー。」

「現実だし、何寝ようとしてんだよ。」

「いや、休みだし。最近忙しかったら今日ぐらい休ませてよ…。」

「休みの日こそ訓練だろ。特にお前は前線何年ぶりだよ。」



 この戦闘バカはっ!休みは休むためにあるんだって!!



「前線は3年ぶりだけど、この前の戦いもあるし忙しかったからちょっと疲れてるの!今日は休みたい!」

「俺と組むのに休むのかよ。」

「休むのも大事でしょうが!僕は最近まで非戦闘員だったの、覚えてないの?」

「覚えてないね。」

「ばか。」



 確かにルイスと組めるのは昔に戻ったみたいで嬉しいけど、非戦闘員だった僕は動きすぎで全身筋肉痛で辛いんだってー。

 僕の動かなさにしびれを切らしたルイスが僕の毛布を剥ぎ取ってきて、寝たいVS寝かせたくないの攻防戦をさせられた。おかげで目が覚めちゃったじゃん。



「もー、とりあえずご飯食べる。」

「俺の分は?」

「ない。食べたら魔道具屋さんに行くから。訓練は行かない。」

「は?その後行けばいいだろ。修理した魔道具の試し打ちししねぇのか?」

「それは…」


 したくないといえば噓になる。しばらく考えていると―


「じゃあ決まりな!!」

「勝手に決めないでよ…。」



 ちゃっかりご飯を一緒に食べたルイスは満足そうな顔をして帰ろうとしたけど、魔道具屋さんに連れていくことにした。だって、ご飯だけ食べて自分だけ帰りますーはずるいでしょ。僕の用事にも付き合ってもらわないとね。


「いらっしゃいって、フィードか!しかもルイスも一緒じゃーか!!久しぶりだな、どーした?」

「お久しぶりです。僕の相棒たちをメンテナンスして欲しくて。」

「お久しぶりっす。」


ここは僕の魔道具を作ってくれた武具屋さん。ルイスと組むようになってから頻繁に通ってたのに、解散したきり来てなかった。


「おっ、ついに戻れることになったのか?」

「臨時ですけどね。」

「ふーん。まぁいいさ。見せてみ。」

「はい。お願いします。」


 僕の使っている銃たちはちょっと特殊で、入隊するときに魔力の少ない僕の為にここの店主さんに特注で作ってもらったんだ。だから、僕もメンテナンスの方法は知らないんだよね。たまに武器を取り出してねしか言われてないから…。まぁそれすらも最近はさぼってたんですけどねー。


「全然使ってなかったのに突然使いましたーって顔してやがるな。そうなると結構時間がかかるかもな。こいつら結構気まぐれだからな。すまないが、明日取りに来てくれるか?」

「わかりました。よろしくお願いします。」


 明日かー。ルイスと訓練場に行くって約束は出来なさそうだな。よし、帰ろう。


「おい、何帰ろうとしてんだよ。拠点はあっちだって。」

「だって、僕の武器ないんだよ?どうしろっていうのさ。」

「他のあるだろ。久々なんだから指導してやるよ。」

「いらないいらない!遠慮させてください!ルイスからの指導はほんっっっっっとーに嫌!!」

「なんだ、この前指導してもらうのが夢とか言ってただろ?そんなに喜ばなくてもいいぞ?よし、行くぞ!」

「嫌だってーーーーー!!!」


 ルイスのは指導じゃなくて拷問に近いんだよ…。倒れても攻撃してくるし、なんなら1on1ですらないから一生終わらない最悪の訓練。隊長としてのルイスの訓練指導とは全っ然違うから本当に嫌。この前のは新入隊員の子を助けるために言ったでまかせだよ!!






「も、もう…無理。吐きそ…うっ。」

「なんだよ、相変わらずダウンが早いんだよ。前より早いんじゃね?」

「うるさい、な。はぁ。僕は3年も戦いに出てないんだから当たり前じゃん。」

「そんな口叩けるならまだいけるって事だろ?ほら、いくぞ!」

「はぁ!?無理だって、休ませてよ…。」


【魔力検知しました。】

— もー!!どこから来るかだけお願い。


「おらぁ!!早くしないとやられるぞ?いくら火力抑えてるとはいえ、ダメージは食らうからな。」

「知ってるし。そんなに叫ばなくてもいいじゃん。」


—ルイスのあのでかい火の玉の中央マークしてもらえる?

【はい。マークしました。】



やっぱり。ルイスは火の魔法が得意なんだけど、あいつは性格がひん曲がってるから見えてる物だけじゃ倒せないってよくガルシアさんに言われた。今出している玉も見た目は丸いけど、実際は楕円状で中心が見えてるところからずれるんだ。うまく中心に当てないと玉は爆散しない。はぁ、ほんといい性格してるよね、あいつ。



「どこまででかくするの?」

「お前が倒れないぎりぎりまでだ!」

「そっか。」



そしたらあと少しかな。最大まで大きくした瞬間爆散させれば、魔力もそう簡単に回復しないでしょ。

ってことで、


「ナイフよ、手元に。」


構えて―

3・2・1・今っ!


シュボッ



「あ゛!?」



 見事中心に命中して、ルイスが作っていた火の玉は静かに消えていった。聞きたくないような低いルイスの声が聞こえた気がするけど、知らないふり知らないふり。これに反応したら何か言われる。



「おい、フィード!なんでさっきのやつの攻略方法知ってんだ?」

「そ、それは…前に教えてくれたから。」

「俺は教えてない。」

「うん。他の人から教えてもらった。」

「誰だ?教えろ。そいつ殴ってくる。」

「殴れるの?」

「当たり前。」

「ガルシアさんって言っても?」

「うっ…あー、くそっ。」



 前にもルイスとこの永遠に続く訓練という名のストレス発散に付き合わされて困っていた時、ガルシアさんがこっそり教えてくれたんだよね。前はAIが無かったから勘だったけど、今回はAIのおかげですぐに分かったからよかった。



「もういい。気分そがれた。帰るぞ。」

「帰るって、ルイスと家は真逆だからこっちじゃないでしょ?」

「何言ってんだ。お前の家に行くんだよ。」

「なんで!?」

「しばらくは一緒に住む。で、お前の癖とか把握しとかないとだろ?」

「いや、そこまでしなくてもよくない?」



 確かに前組んでた時は家も近かったし、一緒に任務に行くなら一緒にいた方が良いってなったけど、今はそんなことまでする必要なくない?そもそもルイスは隊長だし…?臨時だし?



「だめなのかよ。」

「隊長が一隊員の家にいていいの?」

「知らね。俺がいいんだからいいだろ。それに3年も組んでないんだ、何かしらお互い変わってる可能性だってあるだろ。」

「はぁ。何言っても聞いてくれなさそうだし、だったら僕の家に来るなら僕のルールに従ってね。」

「はいはい。」



 僕の家のルールって言ってもそんな無いけど、2人になるなら決めないとな~。


 後でルイスと決めたことは、風呂と皿洗いはルイスが担当する。ご飯は僕。ルイスが自主的にそういうことしてくれるとは思ってなかった。まぁ、ガルシアさんが復帰しるまでだし我慢するしかないかな。




久しぶりに一人じゃない家ってなんかいいな。と言っても男2人だけどね…。


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