第6話


「はぁ、手も足も出なかったなぁ…。ルイスってあんなに強かったんだ。」


ルイスと戦ってから、疲労で訓練室から動けないでいた。絶対あれほぼ本気だった。さっきまで戦ったのにここでもそんな本気出せるってどんだけ体力あるのさ。


「あの…。」

「ん?」

「えっと、さっきは助けていただいてありがとうございました。」

「あぁ!さっきの子か。」



 そこにいたのはさっきルイスに怒られてた新入隊員子だった。それと、もう一人女の子がいる。だれだろう。



「はい。ラウルと言います。こっちにいるのがフランで、私の姉です。」

「は、初めまして。」

「初めまして、フィードって言います。よろしくね。ラウルちゃんにフランちゃん。」

「あ、あの、セシリオさんから聞いたのですが、今日隊長と組んでらっしゃったんですか?」



なんでセシリオが知ってるんだよ。今日は非番だったじゃんか、あんのお喋り情報通が。



「あー、うん。臨時でね。どうしても組まなきゃいけなくなっちゃって。」

「隊長と組めるなんてすごいです!かっこいいな~。」

「すごくないよ。臨時だし。」



 この姉妹意外とナチュラルに会話に誉め言葉とか入れて来るタイプだね!?見た目というか雰囲気的にそんな感じしないんだけど…。あんまりこういう事無いから困るっていうか苦手だし、かっこいいって何!?



「あれ、フィードさーん。何してんすか~?」

「げ、セシリオ…。」


 噂をすればなんとやら…。今ルイスの次に会いたくない人物だわ。


「セシリオさん、お疲れ様です!」

「お疲れ様です。」

「なんでセシリオがここに?」

「だって面白そうだったから。」

「お二人って仲がいいんですね。」

「うん。幼馴染だからね。」

「一応、フィードの方が先輩だから敬語使うようにしてるけどな。」


そう、幼馴染だけどセシリオと1つ歳が違う。僕の方が先輩のはずなんだけど…


「今は!?」

「今は遊びに来たから!」



 遊びに来たからってなんだよ!セシリオって真面目そうな見た目してるのに中身チャラいんだよな。チャラいの方向性が良くない方に行ってるから困ってるんだけど。



「つか、隊長がフィードの事呼んで来いって言うから探してたんだけど、お取込み中だったんならそう言っとくわ~。」

「そうなの?」

「らしい。」

「じゃあ僕は隊長の所行ってくるから、フランちゃんとラウルちゃん、またね。」

「「はい!」」



 助かったー。あのまま一人で3人に対応してたら恥ずかしいし、疲れすぎて倒れるところだった…。今回だけはセシリオに感謝しないとかな。したくないけど。

 てかルイスが僕を呼んでたって、どういうことだろう?



「てか、なんでついてきてるの?」

「暇だから?」

「まぁ、いいや。セシリオは隊長が僕を呼んでた内容とか知ってるの?」

「いや、俺は知らない。なんかフィードが悪いことしたんじゃねぇの?」

「心当たりがありすぎて胃が痛くなりそう。」

「まっ、なんかあるんだろ。俺はちゃんと伝えたし戻るから。じゃ。」



 嵐のような時間だった。

 それにしてもルイスが僕を呼ぶなんて珍しい。どうしたんだろう。









 はぁ。いつ来てもこの隊長室って緊張するよね。僕の身長の2倍ぐらいある重厚感漂うこの扉…。なんなら3年前のこと思い出しちゃうから最近は近寄りすらしなかったのにな。しょうがない。行くか。


コンコンッ



「どうぞ。」

「失礼します。」

「あぁ、フィードか。突然呼んで悪い。」


 隊長室の扉あけてど真ん中に隊長が座る席がある。この光景が本当に嫌なんだ。意識してなくても背筋が伸びるし、悪いことした気分になる。


「いえ、何かあったんですか?」

「あー、いや、その…」

「ん?」

「いやな。上層部の決定でガルシアが復帰するまでは、フィードが俺のバディになることが決まったんだ。」

「え!?」



 いやいやいやいやいや!?ガルシアさんの代わりに僕が前線に立つの!?どう考えても無理でしょ!!!



「そんな固まらなくてもいいだろ。」

「だって、ルイスのバディをガルシアさんの代わりにやれって言うから!そんなの無理だって!!」

「この前はやったじゃねぇか。」

「それは、今回だけっていうから。」

「だから、今回だけ。」

「この前のとは話がちがーう!!」

「違うって言われても、もう決定しちまったし。俺は賛成だし。文句あるなら上層部に自分から言いに行ってくれよ?」



 …たしかユオ隊の上層部って、今まで隊長を務めてきた人達の希望者と国のお偉いさんの集まりでしょ!?ほぼ国からの指示みたいなものじゃん。僕なんかが意見できるわけないじゃん。僕に無能って言ってきた前隊長もいたはず…ムリだ。



「ガルシアさんが戻ってくるまで?」

「あぁ。」

「んーーー」

「戻ってきたらお前も通常通りの勤務に戻っていいから。」

「…わかった。」

「本当か!?いいのか!?」

「うん。やっぱりガルシアさんが怪我しちゃったのは何と言われようとも、僕に責任があると思ってるし。むしろルイスが嫌なら僕は全然辞退してもかまわないんだけど。」

「いや、ガルシアが戻るまでは頼む。」




ガルシアさんが戻るまで、僕がルイスのバディになるんだ。そっか、昔みたいにルイスの隣にいれるんだね。嬉しいような、でも喜んじゃいけないような。ガルシアさんが戻ってくるまでの短い期間のバディ、精一杯頑張ろう。

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