短編75話 数ある世界にひとつの恋
帝王Tsuyamasama
短編75話 数ある世界にひとつの恋
「おはようっ」
「よっ、おは!」
玄関の扉、門扉と抜けると、紺色セーラー服に青色スカーフ、紺色
髪は肩よりも長く、まじめで明るい幼なじみ。オーケストラ部所属。
現在学ラン装備のこの俺、吹奏楽部所属の
数多くいる俺の友達勢の中でも、最も一緒に時間を過ごしてきた相手だろう。
今日もいろんなクラスメイトたちとの一日を過ごす中で、最も初めに会うのがこの沙奈だ。
「沙奈は、今日もこうして一緒に登校してるなっ」
「そうだね。幼稚園のときから、もう十年くらい一緒だね」
幼稚園の年少から数えて~……ああ、
「吹奏楽部の俺とは違うオーケストラ部だが、
「一緒でも楽しいと思うけど、お互いそれぞれの部活の話ができて、それも楽しいよ。吹奏楽部はそうなんだぁ~って」
今日も笑顔で元気そうな沙奈だ。
「おっはよ!」
「おはよ」
十字路のところで会ったのは、
眞岐はバレーボール部所属で、世話焼き親切さんな感じ。愛乃は水泳部所属で、気が強いながらも家庭的なやつだ。
「沙奈聞いてよー。昨日部活してたらカナブンがさぁ~」
前列に眞岐と沙奈・後列に愛乃と俺のフォーメーションになった。
「愛乃は昨日の晩ごはん、何だった?」
「焼きそばと味噌汁とたくあんとわかめサラダとヨーグルトとりんご」
「和ばんざい」
きりっとした顔で献立名を並べてくれた愛乃。
「やあおはよう」
「やあ~」
同じその十字路で、
凌は歴史研究部所属で、いつもテストで学年トップクラスの成績の持ち主。辰典は天文学部所属で、男子の中ではおとなしめでありつつもやるときゃやるって感じなやつだ。
二人は俺らの後ろに合流した。あっちゅーまに六人編成。
「昨日のこれぞ宇宙の超真理観た? 撮影されたブラックホールにテンション上がったよ」
「宇宙のどこかでは、今も新しい歴史が生まれていっているわけだね」」
「あーその時間、俺バックギャモントーナメント観てるんだよなー。愛乃は何観てた?」
「世界宮廷料理探訪」
六人で、今日は主に
登校するタイミングによって日々メンバーは変わるが、こうしてタイミングが合ったら、次々に合流して登校してるんだよなぁ。
「……はーっはっはっはぁーーー!! おはよう諸君はーっはっはっはぁーーー…………」
まぁ中には合流せず走り抜けていく、軽音楽部所属の
「ちょっと待ってや晋三朗くん~」
それを追いかける、将棋部所属の
「おはよう」
「湖聖さんは昨日観た? これぞ宇宙の超心理」
「観たよ。私たちってちっぽけだなぁって思った」
「それでも積み重なった歴史の中を生きているのが、僕たちさ」
「愛乃も宮廷料理観てるとき、歴史考えてるのか?」
「少し」
「おはよう」
次に合流してきたのは
「昨日のトーナメント、雪太郎も観たか?」
「観た観た! 竸ったバトルでのあの
「あれは僕も参考になったよ。早すぎず遅すぎず、絶妙なタイミングだ」
「バックギャモンの歴史は古いからね。僕も駒の動かし方くらいならわかるよ」
「とか言いながら、凌強ぇーからなぁ」
「今度また戦ってほしい」
「歴史を感じながら戦わせてもらうよ」
本家のバックギャモン部と戦える凌すげーな。
結局八人という大所帯で本日の登校となった。校門を抜けるころには、周りもいろんな学生たちが登校していっている。
フォーメーションを組みながら玄関ポーチに到着した俺たち。げた箱でそれぞれ上靴に履き替える。
「おはよ」
「おはよっ」
と、ここで
絢は和太鼓部所属。割と力持ちな存在らしい。篤希は剣道部所属。大らかな性格っていう感じ。そしてこの二人そろって、身長が高い方。
「眞岐ー、この前のうわさ、ほんとやったな!」
「来月オープンするってー」
「やろやろっ?」
前まで服屋さんだったお店が移転することになって、その空いたお店に別の服屋さんが入るっていう話。まさに女子ってる会話をしている女子勢力なのであった。
「沙奈や愛乃も、興味あるのか?」
「ちょっとは気になるかも? 一度は行ってみようってなるよね」
「私は別に」
「愛乃ちゃんは、あんまり興味ないの?」
「いつも行ってる服屋さんがあるから」
「常連さん的な?」
「うん」
俺にしては珍しい服トーク。後ろは歴史トークで盛り上がってるけど。
たくさんの学生たちに混じって、俺は自分の教室、三年六組にやってきた。
先頭だった眞岐が教室のドアを開けて、みんなぞろぞろ教室へ入り、それと同時にフォーメーションが解かれ、それぞれの席や後ろにある荷物入れのロッカーなどへ散っていった。
一限目は国語だから、先にロッカーから便覧取っとこう。
「おはよう~」
お嬢様部所属の
お嬢様部ではですわ調らしいのだが、クラスでいるときとかの普段では、別にですわですわしないらしい。なおお嬢様を支える男子部員もいるらしい。
「智世は宮廷料理とかにも詳しいのか?」
「昨日のテレビの話~? 観たよ~」
「愛乃も昨日観てたって言ってたからさ」
「愛乃ちゃんもあれ好きだよね~。聞いてこよ~」
智世は便覧を両腕で抱えるようにして、愛乃の方へと向かっていった。
俺も便覧をロッカーから取り出してっと。
「いい天気だぜよ!」
「おぅっ」
「うぃっ」
自分の席に戻る途中で、現代語研究部所属の
博や現代語研究部に所属していながらも、ピアノやギターを演奏できる多才な感じ。
かなりの力持ちな武巳が所属する応援団は、珍しく部という名前が付いていないが、扱いとしては部と同じ。
忠弥はワープロ部所属だが、
「今日の数学はテストだぜよ!」
ああそうだった、二限目の数学は小テストだった。
「数学のテスト? 終わりや!」
苦手っつってるもんなぁ武巳。
「同じく!」
「パソコン得意な忠弥なのに、数学は苦手なのか?」
「全然ちゃうし!」
「そ、そういうもんかっ?」
人間だれしも得手不得手があるっていう、あれ?
「おはようセバス! 今日はあたしたちが日直よっ」
俺をセバスなんて呼ぶのは、同級生中、いやこの学校中、いや俺人生中、演劇部所属の
「そういやそうだったな。セカバン置いたら、日誌取りに行くか」
昨日の帰りの会で、今日の日直者がつぼの中から選ばれたのが、俺と佐里実だった。
日直になった者は、まず朝に学級日誌を職員室まで取りに行かなければならない。どうせ先生来るんだから、持ってきてもらうのはだめなんだろうかっ?
まぁ全学生が在校中、職員室に出入りする機会を作るためでもあるらしいけど。
「やあやあ」
「おはよう」
日誌を取りに職員室へ向かっている途中で、
「今日も給食が楽しみだ!」
朝の会すら始まっていない朝っぱらからそんなセリフを放った彦之は野球部所属。結構手先が器用。
「まだ始まったばかりじゃないか」
冷静なツッコミを入れた毅吉はワンダーフォーゲル部所属。はたから見ればおとなしめに見えるが、実は大らかな部分や実行力があったりと、秘密兵器系キャラ。
「むしろ朝の会すら始まっていないというっ」
「はっはっは! いやあ給食が楽しみだなあ~!」
というセリフを放ちながら去っていく彦之。やれやれな表情でちょっと手を上げてから去っていく毅吉。
「いくわよセバス!」
「へいへい」
佐里実って、家でもこんな調子なのだろうか? まさかぁ。
「あ、おはよーございます」
「おはようございます先生!」
さすがにそこは普通なんだな佐里実。
「おはよう、塚和くん、玉屋さん。日誌を取りに来たのね。ちょっと待っててね」
職員室の前までやってきたら、たまたま担任の
笹林先生は社会の教科の先生で、新体操部の顧問でもある。今年中学校の先生になったばかりほやほやの先生。
新体操部の先生ということもあってか、身長が高く、すでにファンクラブが発足されてるとかなんとか?
絢や篤希は確かに身長が高いが、笹林先生はその二人よりもさらに高い。
「セバス。文化祭は劇をするわよ」
「なんだよ唐突にっ」
「あの逸材を放っておく手はないわ!」
……先生になんか役やらせたいってことか?
先生から日誌を受け取って、俺たちは教室へ戻ることにした。
「おっはー」
「おはようっ」
教室の近くまで来たところで会ったのは、ハンドボール部所属の
春子はギャル。本日もルーズソックスが光ってる。朱鳥はおとなしいかと思いきや、部活がバイオ研究部っつー、科学部から悪の組織感が強い(※個人的見解によるものです)部に所属しているという。今年設立されたばかりの部なので、まったくの未知数。
「今日は数学テストとかー、
「果たしてその春子語は、この学校において他に習得者がいるのだろうか?」
「博くんが勉強してたと思うよ」
「ああ、あいつ現代語研究部だもんな……しかしあいつはかぁーんじぃーじゃなくだぜよ派だぞ?」
「別にぃー、
「そ、そうか」
ということで、俺たち四人は教室に入っていった。
教室に入って、いったん俺の机へ。セカバンから筆箱出してっと。
なかなか中学生でも継続して使ってるやついないよな、この多機能筆箱。ボタンを押せば鉛筆入れのとこ立ち上がるし、温度計や鉛筆削りとかも付いてる。
とりあえず名前やら今日の時間割やらの、今記入できることは記入した俺と佐里実。
「また用ができたら呼ぶわ!」
「へいへい」
佐里実の方が、よっぽどお嬢様部所属っぽくないか? ってしょっちゅう思ってしまう俺であった。
チャイムが鳴ると、笹林先生がやってきて、朝の会。
続く一限目の国語も、問題なく終了。便覧を直して、軽く数学の教科書見ておくか。
ということで、教科書出してぺらぺら。
「……ん? どした鈴佳?」
見られている気配がしたので、顔を上げると、俺の机の右斜め前に立っていたのは、製菓部所属の
あまりしゃべらないが、友好的ではある模様。
そんな鈴佳は、俺をじーっと見下ろしている。
俺はただただじーっと鈴佳を見上げている。
「じゃ」
(どてっ)
鈴佳的ギャグなのかなんなのか、無表情でそれだけ言い残して去っていった。
その様子を見届けたのは俺だけではなく、右隣の席のアート部所属、
知的さとほがらかさを兼ね備えたみたいな、そんな理絵美。同級生ということで、当然同じクラスになることがしばしばあるわけだが、その際に俺と名字が紛らわしくなるという。
「理絵美は昨日テレビ、何観たよ?」
「バックギャモントーナメント観たよ」
「お!
「うん。副音声で英語での解説が聴けたから。盛り上がってたねー」
「お……おぅ」
さすが理絵美。やっぱり俺のより高性能な耳説は有力かもしれない。
二限目は数学だった。
小テストは応用問題が少なめだったからか、まあまあできたと思う。
「どうだった?」
テストが始まるとき、プリントを前から渡してきた、バスケットボール部所属の
喜怒哀楽が大きいイメージ。
「ぼちぼちでんな?」
「全部できたと思うよ」
俺たちはそれぞれの手応えをしゃべった。ら、菜帆は停止したままだった。が、すぐさままゆげがハの字になって、
「うわぁーん!」
速攻で俺たちに背中を見せ、自分の机に突っ伏した。
一応俺の後ろの席である、サッカー部所属の
「一平はさっきのテスト、どうだった?」
俺と一緒に理絵美も一平を見る。
「まあまあかな」
ふむ。ならば左隣の陶芸部所属、
「龍輝はどうだったよ」
「……壺職人への道は、険しい」
なるほど。よろしくなかったんだな。
改めて振り返ると、一平は何事もなかったかのように立ち上がった。
理絵美と目が合うと、ちょっと笑っていた。
三限目は理科。四限目は社会。どちらも乗り切った。社会は我らが笹林先生。
「じゃ、行くか」
「うんっ」
理絵美と一緒に立った俺。というのも、俺らは今週の給食当番だからだ。
日直壺とはまた別にクラス班壺があるのだが、このクラス班ごとにそのまま給食当番も決まる。今日俺給食当番と日直のダブルかーいっ。
廊下に出るタイミングで、同じく給食当番である合唱部所属の
真悠葉は独特のたたずまいというか、マイペースというかなんというか。
剛鉄はキュピィーンシャキーンなやつ。何言ってんだって? いやほんとそうなんだってば。
潤未はボランティア部所属というピースフルな感じかと思わせといて、結構我が道を征くタイプだったりする。
「理絵美ちゃんって、アート部やんな?」
「うん」
「アート部と美術部って、どう違うん?」
「美術部は技法や歴史とかをしっかり勉強して、アート部はもうちょっと軽い感じ?」
「へー。雪太郎くんは、吹奏楽部やんな?」
「ああ」
「吹奏楽部とオーケストラ部は、どう違うん?」
「オーケストラから弦楽器ほとんど抜いて、
「へー」
ここに沙奈がいたら、オーケストラ部のお話を聞かせてやれるんだが。残念ながら今週の給食当番ではない。
「男子も五限目は走り高飛び?」
「キュピィーン!」
「剛鉄くんは得意そうだね」
「シャキィーン!」
「球技は?」
「シュオォー……」
「あたしも球技は苦手かなー」
「シュアショアァー!」
「そだね。球技大会、お互い頑張ろう」
後ろの二人は……会話をしているのか?
ランチルームにて、後から追いついてきた、図書部所属の
我がクラスで最も身長が高い男子。口ではめんどくさがりなセリフを発しながらも、実際行動はめんどくさがらず取り掛かる、そんなやつ。
「あーだるいわー」
「
「
こんなやつなので、牛乳ビンの配備も問題なく完了した。
「ごちそうさまでしたっ」
放送委員である沙奈のすてきなお声によるごちそうさまでしたが、マイクを通してランチルーム中に響き渡ると、学生たちや先生たちのごちそうさまでしたが後に続いた。
部活とは別に、学生たちはそれぞれ委員会か、何らかの役員にも所属することになる。俺? 沙奈と同じ放送委員。別の日に、俺もいただきますごちそうさまでしたを言うのさ。
「さなやん人気あるよなぁー」
ランチルームでは右隣の席だった、雅楽部所属の
明るく世話焼きさんな感じ。調理実習とか文化祭とかでは特に、てきぱきこなすイメージ。
「人気って、どの層に?」
「みんな?」
「まさかのみんな」
登校のときに大量のメンバーを引き連れる現象が発生するのは、やはりその沙奈人気から来るものなのだろうか?
俺たちは食べ終わった食器が乗っているおぼんを両手で持ちながら、片づけに向かった。
「ゆっくんは聞いてない? さなやんに彼氏いるかとかっ」
「はぁ?! さ、さあ、そんな話ならないからなー」
いきなりなにを聞いてくるのだこの千羽里はっ。
「そっかー。ゆっくんが知らないなら、まだ彼氏いないんかな」
ひょっとしたらひょっとして隠している~なんてことも……?
(でも朝は俺と登校してたし……?)
博の言うとおり、今日もよいお天気で、窓から明るい光が入ってきている。
昼休み。なんとなく横の時間割とかが書かれている方の黒板を見ていたら、チョークの粉が受け皿にたまっているのを見つけたので、日直のお仕事としてゴミ箱へぽいぽいすることに。
たまに日直者が落とす惨状が見られるが、俺はなんとか落とさずゴミ箱へぽいぽいできた。
ぽいぽい後、机を寄せ合ってお絵かきタイムな三人、マンガ研究部所属の
亜弓は底抜けに明るいながらも、鮮やかなマンガちっくキャラを描けるので、遠足のしおりとかでよくお呼びが掛かる。
叶恵はまじめな美術部員といったところだが、マンガやアニメは結構どっぷり趣味らしい。
紫織もまめな性格の書道部員な感じだが、絵を描くのが結構好きらしく、書道部員募集ポスター制作とかは、特に紫織の出番らしい。
三人は全員がマンガのキャラみたいなのを描いているようだ。
「これ何のキャラ?」
明らかに少女マンガちっくなキャラなので、聞いてもわからなかったへ、先に一票入れておこう。
「
正解は、聞いてもわからなかったでした。10ポイント!
「……ちんまり?」
「ちょっと待ってよ委員長! 略してちまいん。日曜日にやってるやつ」
まじめな叶恵によるまじめな返答。でも描いてるのは、なんか頭から花が咲いてる女子。
「おもしろいよっ。雪太郎くんも観たら? アニメは始まったばかりだから、まだ追いつけるよっ?」
「ほぅ。たまにはそういう、女子向けな感じのも観てみるかな」
紫織からお誘いがあったので、今度観てみることにしてみた。なんだかんだで、女子としゃべる機会はあるわけだし。
(沙奈としゃべる機会もあるわけだしっ)
休み時間が終わって、掃除の時間。掃除の時間もクラス班単位で動く。今週はランチルーム前渡り廊下か。
廊下の部分だけじゃなく、その周辺も含まれるので、靴で出ないといけない。
「さいっしょはぐっ! またまたぐっ! いっくぁるぃやつおーっすっけあったまはぱっ! せーいぎーはかつ! じゃんけんほぉーい!!」
じゃんけんの結果、負けてしまった俺様は、燃えるゴミを焼却炉へ持っていくことに。
剛鉄はどういう掛け声だったかって? 手を出すたびにキュピィーンっつってた。
「あ、雪太郎くんも?」
「おっ。まあな」
なんと沙奈とタイミングが合った。
「ね。今日一緒に帰らない?」
おっと、人気者らしい沙奈からの帰りのお誘いだ。
「おぅっ。どこで待つ?」
「じゃあ……公園?」
「学校から見て、右行ったとこの?」
「うん。どうかな?」
「じゃ、終わったら直で向かうぜっ」
「先に雪太郎くんが着いても、待っててね」
「おぅっ」
今日はどしたんだーとか、なんで公園なんだーとか、聞いてみようとちょろっと思わなかったこともないが、ごくたまぁ~にあることでもあるので、特に聞かないでおくことにした。
沙奈はちょっと笑顔を見せてから、焼却炉の順番待ちに並んだ。俺も続いて、沙奈の左横にポジショニング。
「数学のテスト、どうだった?」
「ぼちぼちでんな?」
「思ったよりも簡単だったよね」
「お……おぅよ」
難しすぎってわけでもなかったが、簡単ってわけでもなかったようなゲフゴホン。
掃除の時間が終わり、全員が青緑色の長そで体操服に着替えての五限目体育。今日は体育館で走り高飛び。走り幅跳びではなく棒高跳びでもない。
先生によるピッのホイッスルとともに、一人ずつ飛んでいく走り高跳び。
順番待ちをしている間に、心理学研究部の
俊蔵は表情が明るめキャラであり、物事にも一直線に取り組むキャラでもある。
鷹翔はインテリで、成績もよければボードゲームとかも強い頭脳派。ちなみにクラスで最も身長が低い。
司も明るめキャラではあるが、結構自分の世界を持っている感じで、信念が強いかな。
「オレ走り高跳び苦手なんだよなー」
俊蔵がつぶやいた。
「オレなんて不利やし」
続けて鷹翔がつぶやいた。
「踏み込む位置を決めればいけるって」
そりゃ司あんたセパタクロー部だから、飛ぶの得意でしょうがねぇでしょうねっ。
「ちなみに俺もそんなに得意ではない」
でもたぶん、鷹翔よりかは苦手じゃないかもしれない。
六限目は
今日は校内ディベート大会についての説明や、テーマはアンケートをもとに決められるらしく、それを理由とともに記入して提出する時間などだった。
ようやく六限目が終わり、クラス中から終わったぁ~な声。帰りの会もそのまま終わっていった。
「セバスも書きなさい!」
「へいへい」
速攻で佐里実から学級日誌をぺんっ、と机の上に置かれ、佐里実は笹林先生のところへ。おおそうか、今書けばそのまま先生に渡せるのか。
日誌を開いて今日の部分を見てみると、すでに佐里実は今日の感想を書いていた。さすがに日誌内ではセバスじゃなく塚和くんなんだな。
チョークのことに触れていたので、どうもチョークの粉を捨てました塚和くんですを書いておこう。
「はい先生」
「ありがとう、塚和くん」
俺が両手で渡し、両手で受け取る笹林先生。
「今日は一日、どうだった?」
ほんと身長高いなぁ先生。錦下といい勝負なんだっけ?
「テストを頑張りました」
「塚和くんできたの?」
あ、先生の前だと塚和くんなんだ佐里実。
「ぼちぼちでんな? 佐里実は?」
「…………ぼちぼちってことで」
おい先生笑ってんぞ。
「それじゃあ私は職員室に戻らなきゃ。さようなら、また明日ね」
「さよならー」
「さようならぁ」
教室から出ていく笹林先生を、俺と佐里実が見送った。
「……セバス、ごきげんよう!」
「じゃなー」
あ、先生が教室から出るとセバスに戻るんだ佐里実。セカバンを取りにだろうか、自分の席へ向かったようだ。
「うぉーーー!!」
「はっはっはっはぁーーー!!」
「キランキランキラァーーーン!!」
陸上部の
勝康は運動部ではあるが、家ではパソコンを操るのが趣味らしい。そのためか、テンション高めながらも、部活では結構堅実派らしい。相当なテンション高めだが。
「雪太郎、ちょっとそのまま」
「ん?」
拳銃突きつけながらなら手を上げなければなさそうだが、チアリーディング部所属の
唯音はまじめな学級委員長タイプって感じ。今期もクラスの級長だし。そのうち生徒会長とかなるんだろうか?
「取れた」
「さんきゅ」
割と大きめのわたぼこりが、俺の学ランの襟付近にあったようだ。
「ってもっかい付けるんかぁーい!」
そいつを胸ポケット付近に乗せてきた策士唯音。つまり自分で捨てろってことかっ。
「ふふっ。じゃあね」
「じゃなー」
まじめだけどまじめすぎない、そんな唯音はちょっと笑いながら、教室を出ていった。
部活は(めっちゃ息きつかったけど)難なくこなし、残るは帰るだけ。
悪いな皆の衆。本日は先客がいるので、とっとと片づけて校舎を出ねばならない。
速攻で片づけて速攻で靴装備を変更した俺は、速攻で玄関ポーチを抜け、速攻で校門を抜けた。
本日もかなり激しい一日だったように思う。普通の学校の日でこんなに忙しいというのに、行事の日もあれば部活の日もあれば、休みの日に友達と遊ぶってのもあるし。
気づけば中二まで突っ走ってきたが、明日はどんな一日が待ってるんだろうか。
個性豊かな友達との様々なバトルが待ってるんだろうけど、そのうちの一人とは……
(お、来た来たっ)
特にめちゃくちゃ仲良くなりたいと思っている。
短編75話 数ある世界にひとつの恋 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho
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