第3話 キッチンへ行く

 キッチンには、シンク、ガステーブルと冷蔵庫、作業台、食器棚が置いてある。

 ヤマトは一つずつ調べてみることにした。


 まずガステーブル。隣には蛇口がついた、シンクのような場所がある。中には湯切りのようなものがあった。


「コンビニの唐揚げあげるやつと似てるな」

「蛇口ってことは、ここにためるのは油じゃなくてお湯タコね。ここで麺を茹でるんじゃないタコか?」


 冷蔵庫を調べる。コンセントが抜かれているのか冷気はなく、野菜や肉といった生鮮品は何もなかった。


「ここに俺たちみたいに捕らわれた人がいるかもしれない、と思ったんだが……」

「僕とかロッカーに閉じ込められていたし、他の人も閉じ込められているのかもタコ。もうちょっと探してみるタコ」


 作業台を触ると、ステンレス製の台の隅には、微妙に粉がついていた。


「ペロッ! これは粉タコ!」

「舐めなくても感覚でわかるわ」


 作業台の下は取っ手がついており、掴むと扉が開くようになっていた。収納スペースのようだが、暗くてよく見えない。


「こっちも作業台か? ちょっと違うようだけど」

「これはコールドテーブルタコ。言わば横長の冷蔵庫タコ」

「え、冷蔵庫なの? あっちにもあるのに?」

「僕もまた聞きタコが、直前に使うものをコールドテーブルの方に、それより長く保存するほうを冷蔵庫にいれるらしいんタコな。こんなふうに、天板は作業台にして使えるんタコ」


 そう言って、タコ太郎はコールドテーブルの扉を開ける。




 そこには、ヤマトやタコ太郎と同じく、鍋を被った人間が入っていた。

 ――亀の甲羅を背負い、手に水かきがついていたが。

 体育座りのように身体を丸めたまま、ゴロン、とコールドテーブルから出てくる。



「うおお⁉ 人がいたー‼ いや、人なのか?」

「寝ているタコね。起きて!」


 ペシペシ、と触手、いや、手で頬――ではなく鍋を軽くたたくタコ太郎。



「助けていただき感謝する。それがしはカワジロー。好きな食べ物はキュウリだ」

「お、おう……好きなものはキュウリね……」

 やはり人外だったのか――とヤマトは遠い目をする。

「俺の名前はヤマト。好きなものは……太陽……?」

「僕の名前はタコ太郎。好きな標語は『人類みな友だち』タコ! ところで、カワジローはどうしてここに?」

「それがしもよくわからぬ。恐らくは仕事帰りに攫われたと思うのだが……」

 むむむ、と古めかしい口調でうなるカワジロー。


 これ以上は暗くて調べることができず、カワジロー含める三人はキッチンを後にした。

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