第3話 北の町とドラゴン

オークエンペラーを討伐してから数週間。ゲイルとジークは長いこと拠点にしていた町を離れある場所に向かっていた。

「本当にドラゴンのいる山なんかあるのかねぇ」

御伽話のような竜が住まう地がある。そんな噂を聞きつけ、ゲイルたちはその噂の町を目指す旅団の護衛をするついでに向かっていた。

ゲイルたちが拠点にしていた町から北に行った山の近くにあるギルドの支部。そこのギルドナイトたちがいつもと同じように、依頼を受けて山に入って行った。いつもなら山頂付近ににいるはずの魔物たちが中腹近くまで下りてきていた。山の様子がおかしいとすぐに撤退をしたらしいが、その撤退の最中に竜の咆哮のようなものが聞こえてきた。ギルドナイトがそのことをギルドに報告するとすぐに上層部が動いた。

もし本当に竜が住んでいるとしたら、北の山地一帯が焦土に変わるような可能性すらある。竜とはそれほどにまで危険な存在であった。

「さあな。もし本当にいたらどうする?」

この旅団もドラゴンの噂を聞き北の町に向かっていた。

ドラゴンの巣には財宝が眠っているという話もある。砂漠の町には巨大なドラゴンが数年に一度のペースで現れる。そのドラゴンは討伐困難ということで撃退を繰り返している。その結果ドラゴンの出現予兆が確認されると、ドラゴンの撃退戦を一種のお祭りとして、砂漠の町と一帯が豊穣祭と言う祭りが開かれていた。その竜と戦った者たちは英雄としての名声と、竜から零れ落ちた鱗や背甲から作られる装備を纏うことが一種のステータスとなっていた。

「当然ぶっ潰すに決まってんだろ」

ゲイルは拳を合わせる。ゲイルは北の山に現れた竜はドレイクの上位種か何かと勘違いしているのかもしれない。

「そう簡単にいくかな。北の山にはドレイクが多いから、それの上位種かなんかみたいに考えない方がいいと思うぞ」

ドラゴンの討伐は困難を極める。討伐隊を組むにしても、ドラゴンの強さによってどれくらいの規模で組むのかを考えなければならない。下手すると北の町を捨てて逃げるしかない可能性すらある。

「まあ、そのドラゴンの強さ次第だろう」

楽観的ではあるが、ゲイルにしても、ジークにしても砂漠の町で豊穣祭に参加したこともあり、ドラゴン撃退戦の経験自体はあった。豊穣祭ではドラゴン撃退用装備が積み込まれた砂上船で撃退に当たっていた。今回もし本当にドラゴンが出現していた場合、生身でドラゴンと戦闘することになる。少なくとも、ドレイクよりも遥かに強い生物に生身で挑んで勝てる可能性は微々たるものだ。




 北の町に着いた二人が目にしたのは物々しい雰囲気と、砂上船に積み込まれていたものと同じような対ドラゴン用の迎撃兵器。

「もう発見されてるみたいだな」

ゲイルはこの物々しい雰囲気で察していた。

「少しいいか?」

準備しているギルドナイトたちに話しを聞くと、噂のドラゴンは既にギルドの調査班によって発見されていた。その後、緊急任務としてギルドナイト全員にドラゴンから北の町を防衛する任務を発令された。

いつもなら山腹にいるドレイクたちもドラゴンに恐れをなしたのか、ほとんどが洞穴の中に逃げるように隠れているらしい。

「ドラゴンが侵攻してきた場合の準備をしているということか」

ギルドナイトからの話でゲイルたちは状況を把握する。

「まあ、ドラゴン狩りに来てるわけだから、探す手間が省けたってことで準備しようぜ」

「なら、オレはギルドに行って情報収集でもしてくるか。今晩泊まる予定の宿で落ち合うとするか」

ジークは町の入り口でゲイルと別れ、一人でギルドのあるほうに向かって歩き出していった。

「ならオレは武器を買い集めてくるか」

ゲイルは一人武具屋の方に向かった。

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