第14話 二月の縁結び 経過
「縁結びのやりかた?」
「ええ、何か参考にならないかと思いましたので」
「と、言われてもねえ……特別なことはしていないんだけど」
困ったなあ、と呑気そうに、本当に困っているのかやや怪しく思える調子で、月葉が腕を組む。最も眉が下がっているあたり、演技ではないのだろう。
「強いて言えば、機会を作るくらいかな。そこから先は、本人に任せるほかないよ」
「機会、と言われても……」
そんなものをどうやって作ればいいのか、と千草はひとりごちる。
千草も五宮神社の祭神の一柱。神通力を使うことはできる。しかし一人の縁結びのために神通力を使って良いものか迷われたし、何となく他の人間に対して不公平な気もした。
そこで千草は神通力ではなく、他の方法でなんとかできないかと、自分の神使である丙と庚に相談して、まず一度その少女のことを調べてみることにした。
よく考えれば、千草はその少女が縁結びを願いに来たことしか知らないのである。
少女は村木千佳。宮杜高校の一年生。思いを寄せる相手は同じクラスの小樫尚樹。
尚樹はテニス部に入っており、友人も多い。千佳は特に部活動をやっているわけではなく、加えて内気で引っ込み思案。
つまり、千佳は自分から尚樹に話しかけることができないのだ。話しかけられそうな機会があっても、まごまごしているうちに尚樹が去ってしまう、ということが重なっている。
これでは機会の作りようがない。
「いっそ手紙とか作って呼び出してみる?」
「ええ? でも呼び出したって伝えらんないんじゃないか?」
「だよなあ」
丙と庚が額を突き合わせて話し合っている。
「二人とも」
声をかけると、はあい、と双子は同時にふりかえった。御神酒徳利という言葉がふさわしい、瓜二つの顔が千草を見る。
「手伝ってくれるのはありがたいですが、あまり……深入りはしないように」
今度は、双子は、はーい、と揃って返事をしたものの、千草にはどうにも真剣な返事には聞こえなかった。
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