観察手記と日記帳 Ⅵ

【科学者の観察手記】



 被験生物の記録 №11


 色々試したが、動くものには何でも反応するようだ。

 いや、反応するようになっている、というのが正しいか。

 また、視力がいいのか研究室の端の時計を時々見ているようだった。

 あと、音。

 声には反応するが、それ以外の音には反応しない。

 一応聴覚はあるといっていいのだろうが、一定の周波数でないと聞き取れないのだろうか。


 昨日は忙しくて外に出られなかった。

 ならば実験のためにテップを連れて外に出ればいいのでは、と思ったのだが弟子に「暫くは外に出ない方がいいです」と止められた。

 何でも、今は嵐が来ているために外へ出るのは危険らしい。



 ◇◇



【弟子の日記】



 六月十八日


 先輩がテップを連れて外に出ようとしていたので止めた。

 そろそろまずいかもしれない。

 いっそ、先輩に全てを話すべきだろうか。

 ……いや、駄目だ。

 あんなの先輩にとっては死刑宣告のようなものだ。

 先輩はきっと受け入れるだろうけれど、そんなの俺が堪えられない。

 先輩が魔女と化していることは、先輩には絶対に知られてはならない。

 たとえ、あの女が先輩を攫いに研究所へやって来たとしても、だ。

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