観察手記と日記帳 Ⅱ

【科学者の観察手記】



 被験生物の記録 №3


 読書中、テップが本の上に這って来た。

 適当に本の虫などと名付けたが、本当に本しか食べないらしい。

 否、正確には本の表面を噛んでいるだけで殆ど体内には取り込んでいないようだ。

 本ならば何でもいいのだろうか。

 逆を言えば、本の形状をしたものでなければいけないのか。

 また、水や日光などは一切不要なのか、然し生物であるならば生命維持に必要なものはあるはずだ。

 では、それは何か。

 そもそも、現時点で生物と定義しても良いのか?

 疑問が幾つも過る。



 ◇◇



【弟子の日記】



 六月十日


 先輩が古生物に関する論文を読んでいた。

 あれは…この国の言語ではなかったな。

 様々な分野に興味を持ち手を伸ばす先輩は、本当に凄いと思う。

 先輩の肩に乗ってじっとしていたテップが、のそのそと下りて本を食べていた。

 先輩とテップが一緒にいるのを見ていると、癒される。

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