第24話 迷宮内に廃棄物処理所をつくりつつ、酒の湧き出る魔道具をまんまと手に入れるなど

 迷宮内部の環境は徐々に変わりつつあった。

 血と脂の浮いた汚水を廃棄してる場所からは、色とりどりの謎のカビが生えており、謎の幼虫がその辺を徘徊しているとのことだ。それらを求めてコウモリやらネズミやらがそちらに集まっているらしい。


 獣人の娘ニーアの報告は、相変わらず抽象的で分かりにくかったが、報告内容はある程度想定内の出来事である。


(このまま怖いもの見たさで、廃棄場にしてしまおう。多分一部の魔物しか集まらないと思うけど……)


 汚水を捨てる区画を完全密封する。いわば実験区画だ。どんどん汚水を投入して厳しい環境に作り変えて、特殊な菌やカビを増やしたいところだ。


 場所の確保も簡単。迷宮の袋小路が見つかるたびに、その行き止まりを実験区画に作り変えていけばいい。

 迷宮調査はあくまで“深さ”が重要なので、こういった袋小路は自由に使って構わないのだ。


(やばい環境は作ってなんぼなんだよな、新種の毒や薬を作れるかもしれないし、廃棄物の再活用のヒントがあるかもしれない)


 あと一ヶ月は放置して、確実に発酵を進めたい。サンプルをいくつか集めることができたら、毒や薬に詳しいアルルーナに色々と話を聞きたいなあ、と俺は考えた。






 ◇◇◇






「……こいつが約束の魔導具だ。名を《湧き出る盃》。魔石を入れると酒が湧き出る逸品だ」


「いいじゃねーか! いい魔道具じゃねーかよ、おい!」


 渋々といった様子を微塵も隠さず、村の頭領ブルボーズはそう説明した。まだこの魔道具に未練があるのか、声に力がない。

 どうせ魔力を帯びた斧とかだろう、と高をくくっていた俺は、想像以上の魔導具が出てきて驚いてしまった。何せ、湧いてくるのが水ではなく酒である。水でも素晴らしいが、酒だと利用価値が何倍にも跳ね上がる。

 蒸留酒も作り放題、消毒もお手の物、調理にしても幅が広がるし、何より酒から酒を作ることだってできる。


「こいつはいいや! 確かにこれの持ち主は、村長にふさわしいよな! 酒を作れのは便利だ!」


 古来より酒は、天に供えることで、豊作と無病息災を祈る神聖な道具でもある。

 酒による酔いは、一種の宗教体験や呪術に近い。ある種の精神変容のおまじない。だから酒は、宗教儀式用に長く用いられてきた。


「……満足かよ」


「満足さ! こりゃあいいや! こんな貴重な魔道具がもらえるんなら、もう一回俺に刃向かってほしいぐらいだね! ははは!」


「……」


 愉快でたまらない。

 憤怒の表情をこらえきれないブルボーズは、しかし、大笑いする俺に何も手出しできないままであった。




――――――

 間違って短いまま投稿したので、後で改稿するかもです。

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