追放騎士のダンジョン商売: 〜外れスキル《空中床》は生産系&内政スキル!? 未開拓迷宮の真上に商店作って素材を売りまくってたら大きな街が出来たけど色々もう遅い〜
第1話 プロローグ 最悪の一日、外れ職業クラスと外れスキルを授かった日
追放騎士のダンジョン商売: 〜外れスキル《空中床》は生産系&内政スキル!? 未開拓迷宮の真上に商店作って素材を売りまくってたら大きな街が出来たけど色々もう遅い〜
RichardRoe@書籍化&企画進行中
第一章 追放騎士は未開拓ダンジョンで優雅に暮らす
第1話 プロローグ 最悪の一日、外れ職業クラスと外れスキルを授かった日
「では次のもの、名乗ってから前に出るように」
講壇に立っている司祭は、厳かな声で前へと出るように促した。
眼前には仄かに輝く"天恵の石板"が置かれており、次にやってくるものを待ち構えているようであった。
司祭は隣で経典を開きながら、片手で天に祈る印を切っていた。俺もそれに倣って短い祝詞を唱える。意を決して石板に触れたとき、不思議な力が体内に流れ込んでくるのを感じとった。
"託宣の儀"。
それは、帝国貴族のうち一定以上の年齢になったものが受ける一種の古い儀礼である。この儀式を受けると、その人物に適した
職業クラスは、自分の才能の伸びやすい方向性を一言で表したものである。
職業クラスが農民であれば農業の才能が、学者であれば研究の才能が、商人であれば商業の才能が芽吹くと言われている。
この職業クラスも特別なスキルも、自分で好きなものを選ぶことはできない。あくまで完全な運試しなのである。だがしかし、託宣を受ける前よりも確実に、何かしらの才能が
それでもなお託宣に不満をもつようであれば――今の
もちろん魂がそれだけ育っていることが条件ではあるが、最初の職業に不満を持つ場合は、魂の形を無理やり別の形へと導くことができるのだ。もちろんそれとて運試しではあるのだが、今の状況を変えたいというものに残された希望でもある。
(問題は、べらぼうに高いこと。託宣を受けるにも、平民には到底支払えないような巨額の寄付が必要だ。貴族だって二回目以降は滅多に受けられない)
平民や貧乏貴族は、そもそもこの託宣を受けられない。裕福な豪商であれば、特別に受けることはできるだろうが、それでも今度は魂の修練が非常に困難になる。
たまに恐ろしいほど強い冒険者が、何度も繰り返し託宣を受けているらしいのだが、それでも五回や六回がせいぜいといったところである。
再現困難な教会の神秘。
人の将来を丸ごと変えてしまうだけの力があるだけあって、一回の託宣に要求される寄進額は非常に大きい。
では、そんなに高価な託宣を、一般人が受けるにはどうすればいいか。
――帝国騎士団の一員として、一定以上優秀であると認められればよいのだ。
(帝国騎士団の入団試験に合格したのが二年前。この二年間、先輩の理不尽なしごきに耐えて、雑用をこなし続け、ようやくここまで来たんだ)
ある特定の職業に就くものは、特例として一度だけ託宣を格安で受けられる。
特例というよりもむしろ、この方法で託宣を受ける者の方が多い。これは教会が各方面に政治的影響力を持つための施策ではあったが、俺にとっては非常にありがたい話であった。
帝国騎士団もその一つ。騎士団に入団して、一定以上の鍛錬を修めたものは、一度だけ託宣をタダ同然で受けられる。
(平民の特待生枠で何とか合格したものの、騎士団では出来の悪い貴族の坊っちゃま連中からは妬み嫉みの嫌がらせをうけて、足をとことん引っ張られてきた。長い二年間だった。だけどもようやく、俺は託宣を受けられるんだ)
私物を汚されたり、連絡事項をわざと共有しなかったり、座学の課題に協力しなかったり、稚拙な嫌がらせ行為が延々と続いたが、苦労がようやく報われる時が訪れたのだ。
教会司祭による託宣の儀は、騎士団内の叙任の儀のついでに行われる。基本的には
はっきり言ってしまえば、帝国騎士団の幹部候補生として認められたと言ってもいい。つまり出世街道。浮かれてしまうのも無理はないだろう。
ここまでの苦労を思うと、感無量である。
つまらなさそうに拍手を送る同僚たちを尻目に、俺は期待で胸をいっぱいにして、"天恵の石板"に祈りをささげていた。
だからだろう。
まさか名誉ある託宣の儀が、まさかこんなことになるとは思っていなかったのだ。
「……なんと、職業クラスが『商人』のものが一名、他は『騎士』『剣豪』『大魔術師』などの戦闘系上級職、加えて一人は『英雄』までおるではないか」
司祭が驚いたように口にした。
商人を引いたやつ以外が大成功。たった一人だけとんでもない大外れを引いたことになる。
言っちゃ悪いが、そいつはもう赤っ恥だろう。
何せ、さっきまで「叙任の儀」で同僚一同が集められていたところで、優秀者として名を読み上げられていたところなのだ。騎士団長からも直々のお声がけがあり、同期の代表者として儀礼を行っていた。そんな栄誉ある代表者が、一般職の『商人』。こりゃ大笑いもいいところである。
――俺だった。
「与えられた特別
困惑したように司祭が続ける。託宣の内容は典礼言語でのみ降りてくるので、こうやって司祭が読み解いて説明しないと、俺たちには理解することができないのだ。
ある一つを除けば、誰しもが一度は聞いたことのある著名な
『鋼の肉体』は、伝承名高い龍殺しの英雄と同じく、弓矢にも貫かれないほど頑強な肉体が手に入る
『飛翔』は、一時的に自由自在に空を飛ぶことができる非常に便利な
『魔力増幅』はその名の通りで、古の賢者も持っていたとされるほど利便性の高い
『
一方で、『空中床』は詳細不明な
何が情けないかというと、珍しいことに、『飛翔』持ちとわざわざ同じ瞬間に『空中床』が発露したのだ。これはもう笑うしかない。よりにもよってこんなみじめさが際立つ場面を狙ってこなくてもいいだろうに。こりゃ傑作である。
――俺だった。
どっと沸き立つ大聖堂。
風紀に厳しい帝国騎士団とはいえ、これは流石に面白過ぎた。というよりも、司祭と騎士団長がちょっと笑っちゃったので、笑わなくてはならない雰囲気になっていた。セコールジュカの施工床、と誰かが呟いた。くすくす嘲るような声も聞こえた。
「静粛に、静粛に!」と場を鎮めようとする司祭と、「申し訳ない、いずれにせよ今日は栄えある素晴らしい一日だ」と慌てたように場を仕切り直した騎士団長だったが、もはや空気は完全に弛緩していた。
ちょっとした面白事件はあったものの、全体的に騎士団の品位を下げるような行為があったわけではない。むしろ騎士団の面目を潰したのは面白人間のほうである。
それでも一応、厳かな儀式の途中で笑ってしまった人間には、名目上の罰が加えられた。寮の清掃二日間。自己申告制。実質的にはお咎めなしである。
「静粛に。諸君らも
大きな声量で騎士団長が諫めたが、俺にはみんなの笑い声が聞こえてしまっていた。「はは、もし俺があんなひでえ
顔が燃えるように熱くなった。壇上に登った時よりも心臓が早鐘を打っている。油断すると泣きそうであった。当事者である俺には全く面白くなかった。
そう、全くもって面白くはなかった。だが俺は、情けなさのあまり笑うことしかできなかった。
――これは、笑いものにされた俺が、騎士団内部の経理不正と貴重品逸失の濡れ衣を着せられて、そのまま流刑島に飛ばされることになる三か月前の出来事である。
――――――――――――――――――
■あとがき
ここまでお読みいただきありがとうございます。
「追放騎士のダンジョン商売: 〜外れスキル《空中床》は生産系&内政スキル!? 未開拓迷宮の真上に商店作って素材を売りまくってたら大きな街が出来たけど色々もう遅い〜」投稿スタートです。
「追放されたスライム召喚士が領地開拓をやり込んだら、一国の統治者に成り上がった件:」
https://kakuyomu.jp/works/16816927862375873387
こちらの作品を読んでらっしゃる方は「ああ、似た路線だ……」と想像がついていると思います。
その通りです!
内政知識 & 領地改革 & 開拓 etc.をできる限りたくさん詰め込んで、そうはならんやろ → なっとるやろがい! のシュール&コミカルな展開で書いていこうと思っております。
「追放されたスライム召喚士~」との違いは、向こうはクソバカつよつよ最強スライムと滅茶苦茶やりやがるメンタルクソつよ主人公のハチャメチャ内政モノで、こちらはなろう系王道ハクスラ冒険物に内政・開拓がドカドカ詰め込まれるイメージです。
乞うご期待!
面白いと感じましたら、小説フォロー・★評価をポチッとしていただけたら幸いです。
これからもよろしくお願いいたします。
〇ちょっとしたメモ
alba(イタリア語):意味は「日の出」
alba(ラテン語) :意味は「白い」
ゲルマン語系のálf、elfと関連があり、印欧祖語albh(意味は「白」)に由来すると考えられる。
女性名らしいので後で男性名のalbusに換えるかもしれません。
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