第3話 見捨てられない
簡潔な報告を駐在所に入れ、女の子を気遣いながら走る。
金色の鳥はちょうど走りやすいペースを維持して飛んでくれた。しかも人目につかないルートを選んでくれているのがたいへんありがたい。安倍街道から一本外れた裏通りを北に上っていく。
長く走らされたらどうしよう。この子の体力もそうは保たないはずだ。と、懸念し始めた頃に鳥が止まった。
末広町と材木町の境目辺りか。住宅街に埋もれるようにして建っている小さな家。構えからして、昔は商店だったのだろう。
錆びたシャッターの前で小鳥がくるくると回って、パッと消えた。目的地周辺に着いたといって案内をやめる昔のカーナビみたいだ。勘弁してくれ。
思わず独りごちる。
「この中に入るのか?」
「そうそう、ちょっと待ってねー」
俺はびっくりして肩を跳ね上げた。すぐ後ろに新保がいたのだ。いつの間に来たんだ?
彼はシャッターの郵便受けに黒い手帳を突っ込んだ。と、シャッターが自動的に開いていく。あれだけ錆び付いていたのに音もない。
「おっけー、入って入ってー」
半分ほど開いて止まったシャッターを、彼はどんどんくぐっていってしまった。
その後を追おうか、今更ながらちょっとだけ躊躇う。魔法局は警察の一部だ。犯罪でないことははっきりしたのだし、任せてしまっても大丈夫だろう。むしろ、俺のような一般人が下手に首を突っ込んではいけないかもしれない。
同じように(別の理由で)躊躇っていた女の子が、ふと俺を見上げた。
その目を見た瞬間に心が決まった。
「大丈夫だよ、ついていくから。行こうか」
彼女はもう泣き止んでいて、腫れた目でこくりと頷いた。
シャッターをくぐる。
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