第2話 踏んだのは



「うぴー!?」



 踏んじゃったは踏んじゃったけど、人? 動物?


 その割には変な感触がしたけれど……でも、僕がいけないのですぐに退けば、そこにいたのは。



「す……スライム??」



 人間の大人半分くらいの大きさで……水色の半透明。中央がちょっと濃いけど……ゲームかなんかで見たような、あのスライムがいたんだ。


 転生もだけど……僕、やっぱり異世界に来たんだなって、ちょっと実感しちゃったよ!!



「うぴっ。ちぃっとびっくりしたでやんす……」



 けど、スライムってしゃべるの??


 おまけに……なんか、少し江戸っ子風……実際に異世界に来たからだけど、不思議満載だ!



「あ、ごめんね? よく見てなくて」



 ちょっと腰を折ると、スライムの体につぶらな瞳が出てきたんだ!! カエルとかみたいでちょっと可愛い!!



「でーじょうぶでやんすよ? あっし、はぐれスライムでやんす」


「はぐれ……迷子?」


「う……面目ねぇ」



 僕とは違うけど、この子はどうやらお仲間とはぐれちゃったみたいだ。



「……僕、探すの手伝おうか?」


「マジでやんすか!? けんど……あっし、はぐれは迷子だけじゃないでやんす。能力が嫌われて……多分ワザと置いていかれたと思うでやんす」


「能力??」


「全部じゃないでやんすが……よくわからないでやんすけど、『発酵』を得意とするスライムでして」


「は、発酵!!?」



 それは、逆に僕にとってはデメリットどころかメリットしかない!!


 スライムくんを思わず抱っこして、むぎゅーっと抱きしめた!



「に、兄さん?」


「僕には嬉しい能力だよ!! パン作りには絶対必要だから!!」


「パン? パンってなんでやんすか??」


「とっても美味しい食べ物だよ!!」


「ほー?」



 スライムくんも興味を持ってくれたので、まずはパン作りをしてみようと場所を移すことにした。開けた場所もだけど、水も必要だから……川とか湖とかを探すことに。



「うーん? ここなら」



 スライムくんと歩いて見つけた先は、大きな湖。


 スライムくんはのっそのっそ歩くというか動くかと思ったけど、ぴょんぴょんと飛びながら移動してくれたから、むしろ置いていかれそうになったよ。



「苔も藻もあんまりない水が大量に必要なら、多分ここでやんすねー?」


「ありがとう。えっと」


名前づけネームドはないでやんすよ?」


「……名前、ないの? 迷惑じゃなかったら、僕がつけていい?」


「! 光栄でやんす!!」



 もし、パン作りが成功したら……立派な相棒になるかもしれない。


 だから、失礼な名前を付けたくはないけど。


 ファンタジー要素だと、ゲームしていた時のアカウント名を一部使おうと……僕はしっかり考えることにした!



「……カウル。カウルってどう??」


「カッコいい名でやんすね!! お?」



 名前が決定すると、僕も名乗ろうとする前にカウルの体がピカ〜って光った!!?



【登録名、カウル。能力:ドウコン、ホイロ以外に電気釜投入致します】



 あのイケメン神様の声が、いきなり聞こえてきて……カウルの体がウニャウニャ揺れた。

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