スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

第1話 テンプレな展開

 僕は、諏方すわ賢斗けんと


 パン職人を目指している十九歳の専門学生!!



(…………だったんだけど)



 ただいま、僕がいるのは真っ白な場所。


 部屋と言うよりは、空間って言葉がしっくりくると思う。


 手を伸ばしてみても、壁とかにはぶつからないし……。


 で、右斜め前に、誰かが何故か土下座していたんだ。



「……此度は、大変申し訳ない!!」



 金髪ロングヘアの人は、男の人でイケメンボイスだった。同級生でオタクだった友人に無理矢理聞かされたのがきっかけで、メディア媒体はいろいろ見聞きしたけど……人気声優さんに匹敵するくらいの素敵ボイスだ。けど、僕は男だから必要以上にはトキめかないが。



「あの……申し訳、ないとは?」


「此度……貴殿の徳を仇で返すことを。我が従者を助けて頂いたが……貴殿は命を落としてしまったのだ!」


「…………そ、う……ですか」



 少しずつ……思い出してきた。


 学校からバイト先に向かう途中で、一匹の白猫ちゃんが車に轢かれそうになっていた。咄嗟のことで道に飛び出した僕は……痛みはあんまり覚えていないが、たしか……体が飛んだ気がする。


 そこから意識が戻っても……こう言う場所にいると言うことは、助かりはしなかったってことなんだ。



「あの猫は、我の従者……御使とも言う。普通の人間の目には映らないのだが……貴殿は違ったようだ。だから、詫びも兼ねて神である我が来た」


「え? 神様??」


「左様。呼び名は別にあるが、今はゆっくりと話せん。その真贋を見抜く目を借り受けたい。……異なる世界での転生を約束するがゆえに」


「僕、転生……するんですか?」



 ラノベとかのトリップが……出来るってこと?


 僕がそう口にすると、神様は顔を上げてくれた。やっぱり、神様なだけあって声だけじゃなくて顔も超イケメンだなあ!!?



「我に出来る措置はそれくらいしか出来ん。しかし……付与出来る加護は望みが有れば渡そう。何を望む?」


「え……と」



 嘘じゃなくて、本当みたい。


 どうやら僕は……夢を諦めかけていたけど、異世界に行けるのなら!



(異世界で……パン職人になりたい!!)



 その夢を実現したいために……神様にきちんと説明しながら、転生の加護とやらを順番に付与してもらうことが出来た。



「頼み……と言うのは、な」


「なんでしょう?」



 あとは転生するだけ、と言うところで神様が『この通り』のポーズになった。



「その世界は……富裕層を除くと、回復薬の流通が乏しい。どのような方法でも構わないんだ。流通の安定を広げてほしい」


「……僕の特技、良くて料理ですけど」


「大丈夫だ。薬学は料理と同じく、要領が求められる」


「……とりあえず、頑張ってみます」



 では、と。生前の僕の姿のまま転生させてくれることなので……少し待つと、白い空間と神様の姿は消えてしまい……森の中に到着したのでした。



(……ファンタジーの世界らしいけど)



 街じゃなくて、いきなり森。


 何か理由があるかなあ……と考えながら、散策しようとすると。


 ふにゃん……と、 何かを踏んづけてしまった!!?

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