第5話 ミッション1 七海②
無意識なる飴と透明人間の能力、2つの能力を使えば、大量に人を殺せる事が出来る。恐ろしい能力かもしれない。殺害予定時刻まで残り1分。扉の向こう側で会話が聞こえてきた。
『早くお金出せよ』
『わかりました……。何円出せば良いですか?』
『10万円だ!!』
今、殺し屋はお金に意識が行っている。今がチャンスかもしれない。
「七海先輩!!」
七海先輩は巾着袋から飴を出して、飴を口の中に入れた。その瞬間、七海先輩の目が赤く光った。鞄から包丁を両手に2つ持ち、銃をベルトにつけた。
「おい、殺し屋はどこに居るか教えろよ!!」
あの可愛らしい性格から逆転し、私に刃物を向けてきた。その威圧感に圧倒されながら、
「扉の向こうです」
と言った。その瞬間、七海先輩は透明になり、扉の向こうに向かった。無意識の透明化。恐ろしい能力だ。
「キャーー」
と宮内様の声が聞こえてきた。扉を開けると、殺し屋全員、血を流して倒れていた。
「まだ殺し足りない……。お前も殺してやろうか?」
そう言いながらもナイフをポケットに入れ、巾着袋から意識が戻る飴を舐め始めた。
「はあ……意識戻ったわ」
「怖かったです」
殺し屋も無事倒し、宮内様の助かり、一件落着かと思われた。
『まだ……俺たちが居るぜ』
微かに聞こえてきた声は、ビルの上から聞こえた。ビルの上で何かが光り始めた。その瞬間、
バン!!
突然の銃音が夜の街に響き渡る。狙いは宮内様だ。私は、宮内様を強く押し倒し、弾丸は私の肩を掠めた。肩から大量の血が出てくる。痛い……。立ち上がる事が出来ず、倒れ込んだ。それに気づいた七海先輩が、私の元に駆け寄ってきた。
「何があったんだ?」
「ビルの上に殺し屋が居ます」
「どうしよう……。飴は1日に2個以上食べると、意識を失ってしまうから使えない」
七海先輩が殺す事が出来ないとなると、私が行くしかない。私が人を殺す……。血が流れてくる肩を持ってきたタオルで縛り、立ち上がった。
「七海先輩は、宮内様を守ってください」
私は、全力で走り始めた。
『殺しきれなかったから……』
声は徐々に近づいてくる。そして、声が聞こえるビルまでたどり着いた。このビルの屋上に殺し屋がいる。
バン!! バン!! バン!!
再び銃声。七海先輩が守ってくれていることを信じて、私は階段で屋上を目指した。
『やっと死んだか……』
その言葉を聞いた瞬間、私の足は止まった。
『意外と弱かったな。ボディーガードも』
『お金を取りに行くか!』
七海先輩、宮内様が死んだ……。私の足が震え始める。七海先輩を殺した奴に私は勝てるのか……。そもそも、私に殺すことなんて出来るのか。不安が一気に高まる。殺し屋はもうすぐ、階段を降りて、宮内様の元に行くはず。逃げれば、私の命は助かるかもしれない。私は、1段ずつ後退りしていた。私に人を殺すなんて無理だよ。その時、頭の中に七海先輩の言葉が流れた。
「私の兄が殺し屋に殺されたの。目の前で殺され、助けることもできずにただ隠れていた。それが悔しかった。その殺し屋は今、どこに居るか分からない。その殺し屋を殺す事が私の目的なの」
このまま逃げれば、後で私は後悔するかもしれない。七海先輩のためにも復讐を成功させないと。10年前、お母さんが私の目の前で殺された日、私も七海先輩と同じように何も出来なかった。ここで逃げれば、何も前に進まない。私は、前に走り出した。屋上の扉を開けると、1人の殺し屋がいた。私の方を向いて、
「お前も殺されたいのか?」
と聞いてきた。
「そんなに自信があるなら、私を殺してみろ!!」
月も星も出ていない暗闇の中、私は包丁を手に持ち、戦い始めた。シガレットの一員として。
正義の暗殺者 緑のキツネ @midori-myfriend
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