第4話 ミッション1 七海①

ビーーー ビーーー


突然、警報が鳴り始めた。未来くんが声を出した。


「20分後、居酒屋に10人の殺し屋がやってきて、殺人事件が起きます。場所はここです」


画面に地図が表示された。私がシガレットに入って最初の仕事だ。


「今回は、七海と莉音、2人で行ってこい!!殺し屋は殺しても構わない。とにかく事件を起こすな!!」


「はい!!」


水田先輩に初めて名前で呼ばれて少し嬉しかった。今まではお前とか新人とか呼ばれていたから。私は、鞄にナイフと拳銃を持って、肩に掛け、七海先輩の車に乗った。私は、免許をとっていないため、まだ車を持っていなかった。


現場まで車で10分かかる。その間、七海先輩が私に話しかけてきた。


「莉音は人を殺せるの?」


人を殺す……。0係に居た時は考えた事なんて無かった。人を殺さないように上手く心臓の位置からずらすように教育を受けていた。人を殺せば、殺人者と変わらない。本当にこれが正義なのか。分からなかった。


「意識しながら殺した事が無いから分かりません」


「でも、トップクラスに居た時に、1人殺したんでしょ?」


「あれは、お母さんの復讐のために無意識に動いてしまった……」


「そうなんだ。シガレットには、人を殺すのを恐れている人が沢山いたの。その人達はみんな、辞めていったけど」


「七海先輩は人を殺せるんですか?この前、葵先輩に『人を殺せない癖に』って言われでしたけど……」


「私も意識して殺すことは無理なの。殺すことだけを考えて殺そうとすると、手が震えるの。だから私はこれを持ってきてるの」


右手で運転しながら、左手で鞄から巾着袋を出した。私はそれを手に取り、開けてみた。そこには大量の飴が入っていた。


「飴ですか?」


「うん。これは、特殊な飴なの。これを舐めた瞬間、意識が無くなるの。無意識で人を殺す事になる。時間は20分。それまでに意識が戻る飴を舐めないといけないの。時間が経つと、意識が消え、死んでしまう。私は、無意識でもコントロールが出来る体を手に入れたの。私以外の人が舐めれば、コントロールができなくなり、一生目覚める事が無い可能性もある」


意識をなくす飴……。一気に怖くなる。


「凄いですね」


「ありがとう」


「七海先輩はどうして、シガレットに入ったのですか?」


ずっと聴きたかった事だった。他の先輩にも聞きたい。自分の命も危ない危険な仕事であり、最悪、人を殺さないといけない仕事。なぜそんなに進んでできるのか……


「私の兄が殺し屋に殺されたの。目の前で殺され、助けることもできずにただ隠れていた。それが悔しかった。その殺し屋は今、どこに居るか分からない。その殺し屋を殺す事が私の目的なの」


「その殺し屋の情報とかあるのですか?」


「その殺し屋の事を他の人達がコードネームで呼んでいた。そのコードネームは覚えていないが、きっとトップクラスの人だと考えている」


「そうなんだ」


そんな話をしていると、現場に着いた。殺害予定時刻まで残り5分。車を駐車場に停め、居酒屋に入っていった。その端の方に、黒い服を着た男達が集まっていた。


「どれだけ金を貰えるか賭けようぜ!!」


「俺、10万!?」「5万」「どうせ2000円だろ」

「俺は……1万!!」「じゃあ100万行こうかな」


「七海先輩、今回の被害者は誰なんですか?」


入口の方に座り、小声で聞いた。


「もうすぐ来ると思うよ」


カランコロン


誰か人が入ってきた。扉の方を見ると、美しいドレス姿の美少女が立っていた。


「彼女は、宮内志穂様。大手企業の社長の妻だ」


「何でそんな人がここに?」


「きっと人質を取ってるんだろ。宮内様のお母さんとかを……」


突然、男達が立ち上がり、宮内様を連れて、外にで始めた。私達も急いで外を覗いた。


殺害予定時刻まで残り1分。


「莉音、様子を見て、私の能力で畳み掛けるぞ!!」


「七海先輩の能力って……」


「透明人間だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る