第3話 万引き犯

「莉音、スーパーでプリンとショートケーキとチョコレートケーキ買ってきて!!」


葵先輩に言われ、鞄を持って、外に出た。初日は何とかなると思ったが、1週間も何もすることなく過ごしていると、次第にパシリにされていた。みんなの好きなスイーツを買いに行く。葵先輩に関しては、私の方が歳が上なのになあ……。先輩と呼ぶように何度も躾けられた。ケーキのように甘い世界があったら良いのに。そう思いながらもスーパーに向かった。まず、水田先輩のために100%オレンジジュースのパックを箱買いする。次に、私と七海先輩はビールが大好きだからビールを5本買って、陽菜は休む事が多いけど、来た時に最初に炭酸水を飲むから、炭酸水を3本買って、最後にスイーツを買わないといけない。葵先輩のショートケーキ、七海先輩のプリン、陽菜のチョコレートケーキ。私は……何にしようかな。同じものを買うと食べられる可能性があるから、それ以外にしないといけない……。目の前には、シュークリーム、ショコラ、モンブランなど沢山のスイーツが並んでいる。まあシュークリームで良いか……。カゴに入れて、列に並び始めた。


「万引き犯だ!!」


「うるせぇ!!」


突然、店中に響き渡る男の客の声と万引き犯の声。万引き犯らしき人は、外に走って出て行ってしまった。私はカゴをその場に置き、万引き犯を追いかけ始めた。万引き犯は、自転車を使って逃走したため、あっという間に見逃してしまった。


「まだチャンスはある。あの速度で自転車を漕げば、どこかで必ず疲れて休むはず……」


この世界には、特殊能力を持つ人間が5%の確率で産まれてくる。私にも特殊能力は存在した。それは、聞こうとすれば、10キロメートル内の音をどこでもキャッチする事ができる能力。万引き犯の声を何度も頭の中で再生しながらその声に近い人を探した。


聞け……。遠くの音を……。万引き犯の声を。


『今日も沢山取れたな……』


聞こえた。その声のする方へ走り出した。10分後、声は徐々に大きくなり、遂に万引き犯の家に辿り着いた。インターホンを鳴らし、彼が出てくるのを待った。


「何ですか?」


彼が扉を開け、出てきたところを逮捕した。


「え!?何ですか?」


「万引き犯の容疑で逮捕します」


「何で……。ここが分かったのですか?」


「特殊能力で」


その後、彼はスーパーに戻り、お金を全額支払い、警察署で話を聞くことになった。はあ……。一件落着かな。シガレットに戻った。シガレットに戻ると、葵先輩が顔を赤くして待っていた。


「帰って来るの遅くない?」


「すいません。万引き犯を捕まえてました」


「それなら仕方ないね。ちゃんと買ってきたの?」


買う……?あ!?店にカゴを置いたままだった。


「すいません。忘れてました」


「はあ!?罰として、ケーキ4個買ってきてよね」


「私もプリン2個追加で」


急いで、スーパーに戻り、スイーツを買いに行った。スーパーの店長が私に向かって、


「ありがとう」


と言ってくれた。私も軽く礼をして、大量のスイーツを買って、鞄に入れて、店を出た。シガレットでは、2人が文句を言いながら待っていた。

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