第8話 個性

ー県庁ー


現在は、20:20 今日の取引が20:30のようだ。


少し急がなきゃな。


そう言って難なく県庁へ入り、階段を駆け上がる。



薫「はぁ はぁ」やべぇ、最近走ってなかったから息切れする。


こいつらなんで息が乱れてないんだよ。


3人は、平気な顔で8階にたどり着く。


水希「この新人には走り込み10キロをやらせないとね」そう、小さくつぶやく。

嘘だろ、部活かよ..


俺が階段と廊下の端にたどり着く。


廊下には誰もいないか…




来る途中に聞いた話だと..誰もいない産業支援課で取引をしているらしい。



まぁ、千花が偶然にも残業をしていて取引現場で鉢合わせてしまい、取引を話すなと脅されているのが今回の事件の全貌だ。




俺たちは最大限の警戒をする。足音を一切たてない。



俺は、作戦通り目配せをして配置に着くよう指示をする。


俺が指揮官でいいのか?


そんなことを思ったが作戦を練ったのは俺だからいいのかという結論に辿り着いた。



ここに来る前に千花には早く帰るように言っておいた。

巻き込ますわけにはいかない。



俺は、物陰に隠れつつ、前へと進む。


そして、目的の産業支援課に着く。


中からは、声が聞こえる。おそらく、2人だろう。


はぁー、ほんとに取引しているのか…


俺は、マナーモードにしてある3人に作戦実行の合図を送る。




カランと、産業支援課の中から音が聞こえる。




細身の男「おい、なんの音だ?」

黒服の男「… また、誰かがいるんじゃないだろうな?」

細身の男「まさか..事前にここの課奴らは帰ったと報告は受けている…」

黒服の男「じゃあ、ネズミが入ってきてるってことか?」

細身の男「…じゃあ、やりますかい?」

黒服の男「やむを得ないだろう」

そう言って男たちは計画通り念入りに課内を調べ始める。


カラン


また音が響く。


男たちは、その音の先へと拳銃を向ける。


おいおい、拳銃とは物騒なものを持っているな。

サイレンサーもついてやがる。




俺たちは、この2人を制圧してもいいが、それだけでは根本の解決にはならない。




俺たちの目的は、千花の悩みの種である取引の撲滅だからだ。




こいつらをただ捕まえて、警察に渡したとしても、県庁での取引を止めるだろうが、また別のところで取引を初めてしまう。




だから、俺たちは麻薬のルートを知り、それを警察にリークする必要がある。




これが俺たちのミッション..




だから、そのためには…




急に、産業支援課が暗転する。


細身の男「おい、なんだ!?」

黒服の男「お前なんか、足元光ってるぞ?」

細身の男「は?お前も…」


二人の皮靴には、黄色の蛍光塗料がについている。ありがとな千花。


事前に打ち合わせをしていた。


純を除いた4人で。



千花が帰る頃には誰も残っていない。

そのことを知って俺たちは、麻薬現場を目撃したところに蛍光塗料を気づかれないように塗ってもらうように依頼していた。



そこで、俺たちはヘタクソな指パッチンと同時に奇襲を仕掛ける。


細身の男「おい、なんだ今の掠れた音.. ぐはっ うぅ…」

何かが倒れる男が聞こえる。


黒服の男「どうした!? おい、返事をしろ!」

俺は、持っていた麻酔銃で黒服の男の体型を思い出し、足元の位置から首元を計算して撃つ。



しかし、暗闇から撃つって難しいのな。


一応、2発、発射する。



黒服の男「おい、聞いているのか?返事、痛っ、なんだ?」


細身の男「おい、集中しろ とりあえずスマホを取り出して光を灯せ!」


黒服の男「あぁ悪い そうだ…スマホスマホ.. なんか目の前がクラクラする… 」


細身の男「じゃあ、おやすみ 悪党」

そう言うと、また崩れ落ちたように誰かが倒れる音が聞こえる。



と同時に電気が点く。



水希「これで第一フェーズは終わりかしら」と言いながら口から泡を出している細身の男の体をロープでくくる。

いや〜、空手三段である水希の腹パンはやばいだろうな...気をつけよ。



瀬奈「そうだね 意外にここの部屋と廊下を同時に消すの面倒だった」といいながらパソコンを触っている。



純「で?どうだった俺の声真似 これ変成器なしでやってるんだぜ?」と言いながら自分の喉を指差す。



薫「あぁ、ナイスだった 事前に知っているはずの俺が分からなかったぐらいだからな.. おっ、2発命中してる よし!」と言いながら麻酔銃をポケットにしまう。



水希「じゃあ、この悪党たちが起きるまで少し次の用意しますか..」

そう言って俺たちは、トイレに向かう。



薫「お前らもトイレか」


瀬奈「トイレじゃない!お手洗い!」


水希「もういいじゃん、流す音でバレるんだし」


瀬奈「水希!そう言うこと言わない! はっ、恥ずかしいじゃん!」


水希「もう、カワイイな この、この〜」と瀬奈の頭を撫でながら2人は入っていく。


純「ありがとな、薫」


薫「何がだ?」


純「お前が来てくれて、連携が早くなった チームの指揮も上がった お前の功績はでかいよ」




薫「だったら、俺を1ヶ月以上前から仲間に引き込もうとしていたお前たちの方が優秀だろ」




純「..お前気付いてたのか!?」



薫「お前らの準備の良さからして、そうだろうと思っていた それにお前らへの依頼は1ヶ月に1回なんだとしたら仕事が片付いて終わった時点で次の依頼が来るのはおかしいだろ?」


純「さすがだな...そこまでとはな 1ヶ月に1回しかないのは悲しいが..」


おそらく、あのコンビニの店員も麻薬の売人も用意した奴らだろう。


それと麻薬が今回の事件に繋がっていることをそこで事前に教える意味も含んでいたんだろうな。



全くなんて奴らだ。


俺たちは、トイレを済ませ、準備をする。ここからが大事だ。

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