第6話 紡ぎ出した答え

ーガレージー



俺は、エンジンをかけると2度目のサイレン音が鳴る。


それと同時に水希・瀬奈が走って降りてくる。


俺は、二人がシートベルトをしたのを見て発進した。


水希「あんた、どこいくか分かっt」最後まで言おうとしたが、助手席に座っていた瀬奈が口を少し開けて、後ろを振り返り、カーナビを指差す。


水希「...うそでしょ…薫あんた何で場所が…」俺の顔を見てその先の言葉を言うのをやめた。



呼吸は整っている。



しかし、静かに目から涙が流れていた…



瀬奈がそれに先に気づいて俺の目元をハンカチで拭いてくれる。


まぁ、少し視界が悪くなったが。


薫「瀬奈、ありがとな..」


瀬奈「ううん 全部わかっちゃったんだね シナリオを」


俺は、うなづく


水希「な、なんで 何も情報を共有しなかったのに..」


今までに見せた事がないであろう困惑の顔を俺たちに見せていた。



水希にもそんな顔があるんだな。


可愛いとこあるじゃん。

これを言ったら怒られそうだな。やめとこ。



俺は、カーナビの目的地とされている「県議会議事堂」をチラリとみて話し出した。



薫「3つの根拠がある」俺は左手の真ん中三本指を立てて言った。


瀬奈「3つ..」

水希は、無言でこちらの指を見ている。


薫「まず1つ目、あの千花の部署にヒントがあった」

「千花」という言葉に眉間に皺を寄せ始めた瀬奈の反応とは裏腹に言葉を出す。


薫「あの部署の仕事内容を思い出すと、必ず議会関係の仕事があった それも答弁資料が多いのだろう 出入りしてるの議員秘書が多かった それに..千花..さんは、秘書の名札をしている人と話し合っていたからな」


水希「でも、それだけじゃ わかんなくない? たまたまそのタイミングかもしれないじゃん」


薫「確かにそうだ だが、そこで2つめだ 今回の県議会は、9月中旬 千花さんは、8月上旬だから タイミングとしても合ってるんじゃないか?」

職場のポスターに書いてあったのを覚えていた。


水希「...でもそれだったら前回の6月の議会ではなぜ千花さんはこうならなかったの?」


薫「それは、まだ新人だということもあったんだろうな だから、仕事を振られなかった まぁ、それだけじゃないようだがな…」俺は、アクセルを少し強く踏む。


瀬奈「えっ、そこまで分かってるの?」


薫「瀬奈のいう「そこ」があっているかは、分からんけど まぁな」


水希「じゃあ、3つ目を教えてよ」


薫「正岡茂まさおか しげ


瀬奈「…」

水希「はっはは、すごいな そんなことまでわかってるの」


薫「やっぱりな 正岡が暗躍してるのはわかっていた」


瀬奈「正岡茂… 薫、正岡を誰か分かって言ってるの?」




薫「もちろんだ 県議会を常に手中に収めていた県政治のフィクサーだろ」


瀬奈「…そう 県議会議員を最年少25歳で当選し、その後 50歳になっても県議会議員を続けている正真正銘の怪物」




水希「何でそれを知ったの?」


薫「知ったのは、お前たちの反応だ これが3つ目の理由だ」


水希「私たちの反応を見て根拠としたの? あはは すごいねぇこりゃ でもその前に何か知るきっかけがあるんだろ?」




薫「もちろんだ 千花さんに話しかける時にチラッとスマホが見えた その時に正岡の恨みがメモに書き連ねてあった」


あれを見た時は、背筋が寒くなった。


俺の目の前にいる女性があんな文字を打つなんて。


正直、思い返しただけで気分が悪くなるほど、正岡への怒りが篭った文章だった。





水希「…やー、すごいよ 一人でそこまで辿り着いて そんな素晴らしい新人に答えを教えるよ 正岡が今回の事件に関与はしているけども尻尾は出さない」


その意味するものは当然分かっている。


瀬奈「事前に調査した結果によると正岡はとある麻薬ルートの密売に関与してる」


薫「麻薬の密売!?」


瀬奈「そう、正岡は議事を支配しているのはそれもオモテの顔なのよ 真の裏の顔は闇ビジネスブローカーと言うほうがあってるのかしら..」


要するに3つの仮面があるということか。


1つ目は、県議会屈指のカリスマ

2つ目は、県議会を支配するフィクサー 

3つ目は、闇ビジネスのブローカー。


薫「なぜ、千花はその正岡と接触したんだ?」


瀬奈「おそらく、何か知ってしまったんでしょうね 事件の真相を」


薫「……」


それが正しいなら、議会の答弁書作成のために千花がああなってしまった訳じゃないのか…

俺は、ハンドルを強く握りなおす。


瀬奈「それについては、純に調査を頼んでいたのよ そして、調査結果として昼に集まった時は麻薬の密売を知ったことだろうと推測がでた それで、純には議事堂に行ってもらったんだけど…」

薫「そこで捕まった…」

瀬奈「…」


薫「で、どうするんだ?」

水希「そりゃ、乗り込むわよ 議事堂にね」

薫「は? いやいや、敵陣に乗り込むのは流石に」

水希「じゃあ、どうするの?新人さん」


そう俺の導き出す結論を待っている。

だが、既にに結論は出ていた。


薫「19時に決行だ つまり、2時間後だ」



……




ー議事堂前ー


俺たちは、議事堂前の路駐で車を止め話し合う。


瀬奈「じゃあ、この作戦で行きますか..」


水希「そうね まさか新人に戦略を練るために私たちの戦術を教えることになるとはね もう、真っ裸よ.. 責任は取ってくれるのよね?」


薫「…責任を取るなんて言えないな だけど、必ずこのチームなら成功するって信じてる」


水希「へぇー、新人のくせにもうチーム意識あるんだ?」


薫「?俺らは、高校時代からチームだろ?何をするにもさ、どこに行くにもさ、お前らと一緒にいた」


瀬奈「...そうだね 懐かしいね 昔、海に行って私たちの水着をチラチラみてたよね男達は」


水希「瀬奈はみてないでしょ だって...」そう言って、瀬奈の胸辺りを見る。


瀬奈「違うしぃ、薫は、太ももとかお尻が好きなんだから!!」


薫「え、ぇ、おい!俺が見てるところってバレてんのか?」


瀬奈「薫はすぐに鼻の下伸ばして見てくるから分かるよ」


水希「そういう瀬奈さんも薫の体を上から下に舐めるようn」


瀬奈「ああー、何言ってるか聞こえないぃーー」と水希の言葉を遮り始めた。




薫「ははっ やっぱこのチームだと何でもできる気がしてきた」


水希「なんで今の流れからそうなるのよ」


瀬奈「でも、自然と体がぽかぽかしてくるのよね 心が温かくなって力が湧いてくる」


水希「確かに 全校生徒の前で4人で怒られた時も私たちって反省の色を出して謝ってる感を出すのに特訓したぐらいだからね」


薫「それぐらいこの4人だったら勇気が湧いてくる まぁ、純は囚われの身になってるけど…」




3人は、シーンとなった。




水希「まぁ、いつも純はこういうタイプだしね 


   電車に一人遅れて学校を休むハメになったり、


   旅館に行こうってなった時に一人だけ熱になって行けなくなったり、


 肝試しで廃屋に行った時に一人だけ連絡が取れなくなって2日後に帰ってたり」



おい、最後のホラー過ぎだろ!!



瀬奈「さっき、海に行ったっていう話も純だけ水着を忘れてて私たち3人で遊んでなかった?」


薫「…」

水希「…」


純、可哀想すぎるだろ!!




水希「えっと、まぁ、そういうマリオで言うとピーチ姫みたいなポジションの運命なんだよ ヒロインなんだよ私たちでいう…」


水希がフォローするの初めて見たな。


水希「まぁ、ヒロインっぽくないロン毛男だけど..」


あれ、フォローしたかと思ったら急に悪口言い始めたな。



薫「まぁ、ピーチ姫も仲間だからな マリオで言うとな

  じゃあ、そのおてんばなお姫様を取り返しに行きますか」


瀬奈「うん!!」

水希「いっちょ、やりますか!」


俺たちは、県議会議事堂へ向かう。

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