第5話 評価


ー喫茶店ー


俺は、時間になったので水希に指定された喫茶店へ向かった。

水希は先に喫茶店の中コーヒーを飲んでいた。


水希「ここのコーヒーは美味しいんだよ 覚えておきな」と言葉を聞きながら同じ机の椅子に座る。

と、同時に店内に千花さんが入ってくる。


そして、受付で注文をし椅子に座るなり、グターとしている。


薫「疲れているようだな..」


水希「薫もあんな感じなの?」


薫「仕事が溜まってるのに、仕事が増えた時はあんな感じだな まぁ、俺の場合定時には仕事を終わられたけどな」


水希「なにその、仕事できます発言 中学校で彼女いたことを大学生になっても言うやつぐらいイタイよ」


薫「それは、イタイやつだな」


と、店員がコーヒーとサンドイッチを千花さんのテーブルに置く。

千花さんは、すみません!と言って背筋を伸ばした。


薫「いい子だな..」


水希「なに?あぁいう子が好みなの?」


薫「そうかもな..」


水希は、グターとして、すみません!と一人でしている。

こいつ、人に「遊びじゃねぇ」とか言っておきながらコイツさっきから一番ふざけてねぇか?


薫「で、始めればいいのか?」


水希「おっ?作戦あるの?」


薫「お前の頭の中の作戦と違うかもしれねぇけどな..」


水希「..じゃあ、仕事ができる新人のお披露目会を見ますか..」


薫「水希、俺に着いてきて」俺たちは立ち上がり、右手でスマホを操作し、左手でサンドイッチをパクパク食っている千花さんに近づく。


俺は、チラッと見えたスマホから文章を読んだ。

薫「...」今は…違う。そう切り替え、話しかける。


薫「あのー、」


千花「はい!?」


薫「脅かしたみたいですみません..」


千花「い いえ、どうされたんです… えっ?明智先輩?」


薫「やっぱそうだ 千花だよな!」そう、俺はついさっきになって思い出した。

この如月千花という女性を。


千花「なんでここにいるんです?それと横の女性は…高校の頃、明智先輩と同じクラスにいたような…確か名前は、」


水希「はーい、水希でーす 今は、明智薫の彼ピです♪」俺の腕を掴み、胸を俺の体に当てる。


千花「へ、へぇー 先輩は、こういう女性が好きだったんですね…」


薫「いや、コイツは..」水希を改めて見る。


やだ〜、近くで見られるとはずかしいよぉ〜などと上目遣いをしながら言ってきた。


目をパチパチしてる。


薫「いや、ないな」


と言った瞬間、俺の脇腹を烈火の如く肘で突かれる。


薫「ぐはっっ」膝がフローリングにつく。


千花「せっ先輩!?」


水希「あっ大丈夫ですよ それよりも何か、心配事あるんだったら教えてほしいなぁーって」


俺は、脇腹を押さえる長距離ランナーのように立ち上がる。


千花「えっと、何もないですよ…ほんとに」


水希「えぇーなんもないはずないじゃん 最近この店であなたが死んだ目でこの店入って昼食取ってるの見てますから」


千花「それは、忙しいので..」


水希「誰かに相談するって大事だと思うけどなぁ〜 私も彼ピに相談したらいろんなことを教えてくれましたよ」


千花「でも…」俺の方へ向く


水希「あー、うざ」トーンが急に低くなった。


千花「えっ?」


水希「あんた、みたいな自分で変わることもできないくせに人を頼らない 頼りたいけど相手に迷惑だし?みたいな感じを出して、私あなたのことを配慮してますってのがムカつくだよね やめてもらえない?そう言うの」


千花「…」千花は少し俯いた。


薫「水希、お前帰れ」俺は強めに言い放った


水希「なんで?」


薫「お前がそれを言いづらくさせていることに気づいてないからだ」


水希はそれっぽく周りを見る。

周りのお客さんがこちらを見ている。


水希「じゃあ、帰りますか..またね彼ピ」そう言って、受付に行き「前に言ってたやつ」と言い、コーヒー代とは思えない1万円を渡して立ち去った。


薫「ごめんな、急にそんなことを言われて怖かっただろ」


千花「違います...その通りだなって…私は自分の殻に閉じこもりすぎていました..変わらなきゃいけないのに 変われずにいて..」


薫「自分一人で変わるのは難しいんだ」


千花「えっ?」


薫「俺もそうだった 人は、そんなすぐには変われない でも、周りには千花を助けてくれる人がいる 俺もそうだ 周りの人に持ちつ持たれつしながら人っていうのは前に進めると思うんだ」


千花「持ちつ持たれつ…」


薫「だからさ、もし困ったことがあれば俺の電話番号と住所(事務所の)を紙に書いておくからさ もし何かあったら...それじゃ遅いな 愚痴でもなんでもいい人に聞いてもらいたい話があれば俺を頼ってくれ」俺は、事前に紙に書いておいたものを机の上へ置く。



千花「はっ..はい…っ..」

彼女は涙をこぼしながらそう言った。


彼女は、強い。



だからこそ、一人で戦おうとする。




でも、それにも限界が来る




 そして、それはとっくに来ていたのだ。





俺は彼女に寄り添い、肩を貸してあげた。



俺の肩で彼女が泣く。






泣く直前に客は帰っていた。


どこまで計算してんだよ…




千花「ご、っごめんなさいっ」徐々に泣き止んだ。


薫「謝らなくていいよ 大変だっただろうからね」


千花「……」申し訳なさそうな顔をしている。


薫「もう、13:45だけど大丈夫?」


千花「あっ、すみません、じゃあ私はこれで」そう言って俺にお辞儀をしながら、レジへと向かい、会計をすませ、その途中で俺の方へ振り返る。


千花「今日は本当にありがとうございました 彼女さんにもすみませんと伝えておいてください お願いします ……話に行っていいんですよね?」


薫「もちろんだ 待ってる」


俺の言葉を聞き、安堵した様子でお辞儀をして自動ドアから出ていく。


俺は、椅子の背にもたられかけて座っていると


店の外からクラクションが聞こえたので、外へ出ると、俺たちの車が外にあったので、運転席へ向かう。





水希「お疲れ様 よかったよ」優しく微笑みながらそう言った。


薫「……いつもそんな感じだったら、モテると思うんだけどな..」


水希「えっ、可愛かったの私? えぇー、嬉しいぃ〜 さすが、久しぶり会った女に肩を貸すモテ男は言うこと違うねぇー」


薫「いや、あの状況になったら貸すだろ」


やれやれと言った具合に両手を顔の横で並行にする。


水希「対象を依存させてどうするんだよ 自立させる方向に持っていかなきゃ意味がないんだよ はぁ〜たく もうちょっといい塩梅にしなきゃ 加点が10だったのに減点が1で 9点か まぁ、及第点ね」


薫「...別に依存させてなんか」


水希「その無自覚 鈍感系主人公やめたら?」


薫「別にわかっていない訳ないよ..」


水希「…そ、だったらいいけど じゃあ、戻りますか…」


水希は、そう言うと持っていたパソコンを操作する。





俺は、事務所に向かった。





ー事務所ー



俺たちは、車を止め事務所の中へと入る。

中では、瀬奈がパソコン作業を終えたのか、コーヒーを飲んでいる。


机を見ると2つのコーヒーが並べられている。


瀬奈「お疲れ様 ブラックだよー」

と言うと、水希は、砂糖をたくさん入れる。


薫「おい、水希、砂糖入れすぎだろ..」


瀬奈「あっ、通常運転だから気にしないで」


薫「そうなのか」てか、喫茶店でここのコーヒーは美味しいとか言ってたけど、砂糖をたくさん入れてたのか..全然コーヒーを味わってねぇじゃんか!!



水希はその甘ったるいコーヒーを少し飲むと



水希「で、そっちの進捗は?」


瀬奈「あっ、うん 昨日の方の成果報酬をいただいて契約は終了したのと千花さんのパソコンをハッキングしてメールを一時的に来ないようにしたよ それより、あの名札大丈夫だった?」ハッキング?そんなことしてたのか..


水希「全然問題なし 瀬奈のおかげで予定時刻に対象が喫茶店に来て助かったよ」


瀬奈「それはよかった」そのためにハッキングか..


水希「今後の予定も進めてる?」


瀬奈「そだね 79%まで終わってるかな」80%でいいだろ




瀬奈「で、薫に対しての評価は?」


水希「ほれ、今送った」そういうと、水希のパソコンがピコンと音がする。

それを瀬奈は見にいく。


薫「なんだ?評価って?」


水希「まぁ、今回のモーニングアップの薫の評価だね 事前に評価項目を作っててさっきの車の中で評価してた」


薫「へぇー」てかいつどうやって送ったんだよ..まさか、話の流れを読んで事前にメール送信時刻を予定してた?まさかな…


瀬奈「へぇー、薫 楽しんだようだね…」なんか眉間に皺を寄せながらこちらに詰め寄って話してくる。


薫「いや、楽しむはずが…」


瀬奈「友人の太ももを、大好き発言してしまうヘンタイは誰でしょう?


   股に足入れて絡ませられて喜んでいる変態は誰でしょう?


   頬に手を添えられて嬉しがっているオトコは誰でしょう?


   対象を好みだとか言ってしまう男は誰でしょう?


   対象が知り合いだとわかった途端、優しく肩を貸す人は

   誰でしょうか??」


薫「..俺です…」


瀬奈「もぅ、信じらんない」プイっと横に顔を向ける。


くそ、何が評価項目だ。


ただのチクリじゃねぇか。俺はそう思い、水希の方を見るとニヤニヤし、プッと笑っていた。


薫「で、それ以外の報告はしなくて良いのか?」


水希「そんなの、昼間に報告済みで、次の作戦も立案済み」


薫「は?いつの間に..」


水希「ここに帰ってきて3人で話し合ってる…」


薫「…なんで俺に言ってくれねぇんだよ..」


水希「それは、さっきも言った通り、薫の能力を測らせてもらうためよ」

そのために俺を一人にさせたのか。

そこで、何か策を練っておけよという意味を込めて。


瀬奈「ごめんね、でも次に遂行する作戦を話そうと思ってるんだけど…あれ?純遅くない?」


水希「確かにね…まぁ、純がミスるとも思えないけどね..」


薫「そうだ 純は今何をしてるんだ?」


水希「それは帰ってきてかr」それと同時に水希と瀬奈と俺のスマホが一斉にサイレン音が鳴り始める。


薫「おい、なんなんだこれ?」


水希「まさか…純が」


瀬奈「これはつまり、私たちの予想が当たっていたということを意味するってことよね?」


水希「そうだね、それもこんな嫌な形で証明されるとは夢にも思ってなかったけどね..」


俺は、2人の話を聞いて察する。


純は、俺が知らない調査をし、その中で何か事件に巻き込まれピンチな状態となっていることを。


薫「俺は、何をすれば良い?」


なぜ、俺のスマホからサイレン音が鳴ったのかはどうだっていい。

どういった状況に薫が置かれているかはこの際、後回しだ。



今は、2人の判断を仰ぐのが最優先。


水希「今は、待つしか無い 次にサイレン音がなった時はKTD創設依頼の修羅場かもね」


水希のその一言で空気が重くなる。


瀬奈と水希は、色々と支度を始める。





俺に出来ることはなんだ?



何もねぇよ、お前には。



だろうな、そんなすぐに人はかわらねぇんだ。知ってるさ。



だったら、考えるそれしかねぇだろ。記憶を引っ張り出すしかねぇだろ。



俺は、今日あった出来事を思い出す。どんな情報でも良い。



頭に叩き込んんだ記憶のカケラを思い出す。



千花のデスクで置かれていた資料を。

産業支援課に出入りしていた人の名札。

千花の行動の一つ一つを。



そして、その記憶のカケラをパズルのように埋めていく。


そこで、結論づける純の行方の答え。


俺は、その結論があっているかどうかは分からないが車のエンジンを付けにガレージに降りた。



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