第2話 K・T・D


ー事務所ー


そして、俺は、3人が乗っていた車を追いかけ、マンションのガレージに車を停めた。


薫「ここに車止めていいのか?」


純「あぁ、もちろんだ」そういうと、薫と水希は階段を登っていく。


瀬奈「ごめんね、急に」俺たちも階段を上がっていく。


薫「いや、そんことねぇよ、俺もさ、久しぶりに笑った気がする」

にこやかに笑いながら、そう言った。


瀬奈「やっぱ、笑っている薫が私は好きだな」


俺は、「好き」という言葉を聞き、顔を赤らめた。


瀬奈「…」瀬奈もそれを見て赤らめる。



水希「ねぇ、そこのバカップル早く来なよ」階段上から見下ろしながら、言ってくる。


俺たちは、少し下を向いて階段を登っていく。





事務所に入れば、結構広かった。


大きな1つのテーブルにでかい4つのソファーがそれを囲む。


純「ここで俺たちは、活動している」みんなは、いつも通りなのかソファーに座る。


水希「薫も、座りなよ」俺は、そう言われたので、ソファーに座る。


一人一つのソファーに座っていた。


純「俺たちはな、「KTD 今日を楽しむ同好会」という名で活動している組織で、日々をつまらないと感じている若者が犯罪に加担する前にそれを阻止することを目的としている」


薫「へ?警察みたいな仕事ってことか?」


瀬奈「それはちょっと違うね 警察は、公務員でデカイ組織ということもあり、小回りが利かない そこで、私たちは、今頻繁に若者が犯罪に巻き込まれる前に機動性がある私たちがそれを阻止する まぁ、要するに探偵みたいな感じ?」


薫「なるほど、で、KTDっていうのはなんだ?」


水希「なぜ、若者が犯罪に巻き込まれると思う?」


薫「お金が欲しいからか?」


水希「違う、それは手段であって本質ではない 行動をしない弱さと社会に対する怒り、これが犯罪に巻き込まれる理由 薫も危ういと思うけどね」そう言って、俺の目を覗き込むようにこちらに体を向ける。


自然と、谷間が見えてしまうのは仕方がなく…


水希「やだー、薫ったら、大人になった私の胸を見てくるー、あぁー、太もも好きは卒業しちゃったんだね...悲しいよ私は..」


それを聞き、瀬奈は自分の胸を触り、落ち込んでいた。


純「まぁ、そんな感じだ 依頼は、口コミで広がっていく 依頼はほぼ毎日だ」


水希「うそつけぇー!」


純「…週に1回..」顔を横に振る瀬奈を見る。


純「..月に1回ぐらい依頼が来る…でも、量より質だ さっきの事件もあの店員のご両親から最近不穏な行動をとっているから見て来て欲しいというものだった」


薫「すげぇ、活動してるんだな..」


純「だろ! 2年前に水希が集ってこの組織を作り、今に至るってわけ KTDっていうのは、今日を楽しめない人が犯罪に巻き込まれる、そう言った人たちを犯罪から守るっていうのがこの…」


瀬奈「えっ?またやるの?」


そして、さっき見た戦隊モノのポーズをとり、


純「K・T・Dだ」


薫「…そのポーズは置いといてすごいことしてるんだな.. 俺も..」


水希「薫は、入れられないよ」


純「おい、水希…」


水希「だって、仲間の中に今日を楽しんでいない人がいるのに活動なんてできないでしょ?」


薫「…」


純「それもそうだけど..だからって、」


水希「遊びだったら、帰ってよ...本当にKTDの活動に共感してる?」


薫「いや、それは…」


水希「あんたは、全然変わっていない ヘラヘラして風見鶏のように従う つまんないよ」そう言って、帰るといい、出ていった。


水希が階段を降りていく音が聞こえる。


瀬奈「..水希はね 2年前にとある事件で弟を亡くしてるの..それも薫みたいなタイプの弟をね それで1週間泣いてたみたい その後悔を、他の人にもして欲しくないって思いからこのKTDが作られた 私たちもその想いに共感した」


薫「俺もお前たちの活動に共感してる だけど、」


瀬奈「不安なんだよね 怖いんだよね」


薫「…あぁ」




初めてやることは怖い。


失敗するのが恐ろしい。




純「お前は、どう生きていたんだ?」


薫「どう生きてたか...生きていたのかな俺…」


純「楽しかったか?人生が 人生を、命を、消費するだけになっていなかったか?」





俺は、今までのことを振り返っていた。





高校時代のあの頃バカした思い出。





大学は、こんな田舎じゃなく都会に憧れて行ったが、何も残らなかった思い出。





都会では就職先が決まらず、地元で就活してたまたま内定をもらった今の職場。





何なんだよ。




人生って楽しいのか?




3人を見る。




なぜか、水希が部屋に戻っている。





楽しい。






こいつらといると楽しい。






地元にはお前らがいた。






なぜ、こいつらに会えなかったか…





それは…







惨めだったからだ。





こんな俺をお前らに見せるのが不安だったからだ。







だから、会わなかった。会えなかった。






水希「で?あんたは何のために生きてるの?」


薫「俺は…楽しむためだ!!つまんない考えばっかりしてた!自己完結で怖がって逃げて.. でも、楽しむには不安が付きものだった それをお前らと離れてから忘れていた 俺に勇気をくれ」そう言って俺は頭を下げた。


純「おい、頭を下げなくても..」


瀬奈「そうだよ、これ…」


水希「あぁーあぁー聞こえないーーい」俺は、頭を上げる。


薫「瀬奈、今なんて?」


瀬奈「だから、これって…」


水希「あーあー、瀬奈ーーは何も言っていないいぃー」


水希の頭に純のチョップが命中する。


水希「いたーい〜」


純「調子に乗りすぎだ」


薫「どういうことだ?」


純「まぁ、要するに入団試験ってことだ 車の中でお前の本心を曝け出す策を練ってた それを実行したんだが… 水希がやりすぎたんだ ほら、水希謝りな」


水希「ごめん でも、弟が亡くなってこのKTDが作ったのはホント それを強く伝えたかったからこうなっちゃった..」


薫「ありがとな、水希のおかげで決心がついた お前らと活動がしたい!お前らと楽しい人生を歩みたい!だから、頼む 俺をKTDに入れてくれ!」


3人は目を合わせ。


3人「いいよ」

  「いいぜ」

  「いいよー」


純「よーし、これで仲間が4人となった」


水希「まぁ、レベル1の仲間だけどね」


瀬奈「じゃあ、これからよろしくね」


純「この4人で俺たちはー?」


えっ、あの恥ずいのやらなきゃいけないのか?


まじか…


薫「K・T・D!!」


前の扉から女の人が入ってくる。


周りを見れば、誰もやっていない。


くそ、まさか仕組んだかこいつら…


純「あ、そこの顔を赤らめてる戦隊ポーズしてる子は無視してこちらへどうぞ」


そう言って、ソファーに誘導する。



俺は、そのポーズをキープしてた。


元の状態に戻すのが恥ずかしかったからだ。


前から来た女の人は、俺の横を通り、俺を心配そうに見ながら、ソファーに座った。


瀬奈「ごめんね、入隊儀式はこれって決めてたから…」こそっと言ってくる。


こいつら、準備万端すぎじゃねぇか?


水希「どうですか、あの置物欲しいですか?」


女の人「置物なんですか!?」


そんなはずねぇだろ!!


俺は、意地を張ってそのままの状態をキープしてやった。


このままでいてやる。


水希「やっぱ、おもろいわお胸大好きNo01」


くそ、屈辱的な名前をつけられてしまった。


純「それよりも、本日のご依頼は何でしょうか?如月様」


如月「私の娘…新卒で県に勤めているのですが、どうも帰りが遅くてですね...21時ぐらいに帰って来ても夜ご飯を食べずに寝て、早くに職場に出かけるんです」


瀬奈「それはいつ頃からですか?」


如月「今は、9月上旬ですから、8月の上旬ごろで最近のことなんです」


瀬奈「娘様の性格や経歴をお伺いできますでしょうか?」


如月「はい..娘は小中高共に成績優秀で地元の国立大学に入り、県に内定を今年いただきまして今に至ります」


俺たちの1個下の年代か。


瀬奈「なるほど...素晴らしいご経歴ですね」


羨ましいな。


如月「ありがとうございます…そんな娘が最近様子がおかしいのでここに来させていただきました」


水希「失礼ですが、話はされましたか?」


如月「えぇ、聞いても大丈夫しか言わなくて…」


水希「ちなみに土日はどう過ごされています?」


如月「...外に出ることはないと思います..車も使ってないようですから..」


なんか、俺とシンパシーを感じるな。


水希「承知しました では、調査に入ります 失礼ですが、ご予算の方は..」


如月「えぇ、用意しております」


そう言って、紙袋から100万円を机の上へ置く。


薫「100まn..」俺は、口に出すのを急遽やめた。


みんなが睨んでくるからだ。


水希「ありがとうございます では、この様式にご確認の上サインを」


如月は、書類に目を通し、サインを済ませ、俺たちにお辞儀をして立ち去っていく。


瀬奈「薫…声に出しちゃダメだよ」


薫「ごめん そんな金額をいただくとは思ってなくてな」


水希「違うよ、あれは着手金 成果報酬は別途いただく」


薫「…」


水希「なに? 取りすぎだって?それは考えを改めたほうがいい 私たちは、真剣に活動している プロとしてやっている だから、それなりの報酬はいただくそうすることが大事なのよ 特に親御さんにはね」


薫「ん?」


純「親は、子どもの世代とは違い、今のネット社会の生きづらさを知らない ネットを見れば自慢合戦 子供たちの世代はいろんなところで心を病む その根っこが深いことを認識してもらうためにも、着手金を100万としている」


薫「なるほどな」


瀬奈「今日は、ここで解散しますか..」


純「そうだな てか、いつまでやってんだ薫..」


俺は、ずっとーしてたことに気づき慌てて元の状態へ戻す。


水希「じゃあ、お疲れ様ー..あっと、薫あんた会社辞めるの?」


薫「えっ?」


水希「辞めてもらわないと 平日に私たちは活動するから」


薫「..」


水希「お金の事なら、あんたが思ってるより大丈夫よ それにお金が厳しくなったら瀬奈と同棲すればいいんだからぁー」ニヤニヤしながら言ってくる。


瀬奈「はぁ!?」


水希「そんじゃ、月曜の9時にここ集合ね」


純「じゃあ、俺も帰る 瀬奈、戸締まりよろしくな」そういって、2人は帰っていく。残された俺たち。


薫「瀬奈、」


瀬奈「はいっ!!」なぜか緊張した返事をする。


薫「お前たちもこれ以外の仕事はやっていないのか?」


瀬奈「..そうだね 私たちはこの活動をすることに命をかけているし、楽しい だから、他の仕事をやれない体かも」


薫「…」


瀬奈「ゆっくり考えればいいと思う」


薫「そか、じゃあ、帰って考える」


瀬奈「うん…あのさ、よかったら..送ってくれない?」


薫「あっ、そうだなこんな時間だしな..」


瀬奈「ありがと」


瀬奈は、戸締まりをして俺たちは車に乗り込んだ。





ー車内ー



瀬奈「…薫はさ、大学時代どうだったの?」


薫「どうだったって?」


瀬奈「いや、その..か、彼女?とか..」


薫「彼女か… いなかったな..」


瀬奈「へ、へぇーへぇー!!」


薫「なんか、面白がってないか?俺が彼女いないのがそんなに面白いか?」


瀬奈「ちがうちがう、私もだからさ…」急にこっちを見つめてくる。


俺は、緊張のあまりハンドルが揺れる。


瀬奈「ちょっと、運転!」


薫「あぁ、すまん なんで彼氏いなかったんだ?モテるだろ?」


瀬奈「…かた..」


薫「?」


瀬奈「何でもない!!」


なんだ、瀬奈のやつ..





ーマンションー


薫「ここでいいのか?結構立派なマンションだな..」


瀬奈「そうだね 防犯はしっかりしときたいからね…この仕事をやっていると組織に目をつけられるから..じゃあ、また、月曜の9時にね おやすみ」


そう言って、俺の車が見えなくなるまでバイバイしてた。


てか、あいついい匂いするな…


きも、俺





ーアパートー


俺は、自分のアパートに帰るとすでに24時をすぎていた。


まじか…



てか、


薫「夕食買ってねぇ!!!」やばい大声出しちゃった。


良かった、怒りに来ないな。



俺は、シャワーに入る。


今日色々あったな。


薫「会社を辞めるっ…か」


何が正解かはわからない。


有給も10日あるから...うちの職場は、2週間前に辞めると言えばいいから..


ちょうどいいのか..


運良く、やめられる条件は揃ってるな。


まぁ、2日ほど出て引き継ぎを済ませないとだが。


それは、この事件を済ませてから、考えよう。


じゃあ、朝一で会社に行って辞表を出そう。


もう、今日は疲れたから、寝よう。

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