死ぬ前に会いたかったお前らとバカ騒ぎ

あけち

第1話 お前らのおかげで



ー職場ー


時計を見れば、21時を回っていた。



この時間帯まで職場にいることが多い。


周りを見れば、全員が帰っている。


うちの会社の出入り口には、投票するようにと言われている県議会議員のポスターが貼られている。


その横に俺からしたらどうでも良い県議会のスケジュールが書かれていた。



俺は、ふと視線を前の風景に戻す。


暗い部屋の中で俺のデスクライトだけが光を灯していた。


残業をしなければ、仕事が終わらないという訳ではない。


ただの暇潰し。


つまらない仕事を終え、帰宅する。


俺は、駐車場に行き、自分の軽自動車のエンジンをかける。


これで今日も終わりだ。




ーコンビニー


いつものコンビニへと着く。夜は、蛾や蚊などがライトに集まる。


明智「お前らは光に集まるのが暇潰しなんだろ」

店の自動ドアにそう投げかけた。


入れば、眠そうな店員があくびをしている。


ご苦労さん


俺は、弁当コーナーへ行き、いつも通り一番安い幕の内弁当を取る。

なぜ幕の内っていうんだろうな。


まぁ、どうでもいっか。そんなことを思っていると…


「カランカラン」誰かが店に入って来たようだ。


早く立ち去ろ。会計を先に取られると面倒だ。

俺は、レジに持って行こうとしたところ..


・・「おい、例のあれは?早くしろ?ここに30万ある」


入口から入って来たであろう男が店員に声をかける。なんだ?30万?


店員「はい、これです」と言うと店員は、小さな小包を渡す。


おいおい、面倒なところに遭遇しちまったな。ここは、木のように徹しろ、俺。


小学生の時にセミみたいに木に登っていたあの頃を思い出せ。


それは、虚しくも無理だったようだ。


・・「今、客は?」

店員「一人、アホそうな奴が..」おい、俺をアホ呼ばわりかよ。

アホな奴は、今、木に成り切ろうとしてるんだぞ。


・・「いつも通りカメラいじっとけよ 俺はバカを殺るから」

店員「分かりました..」は?えっ?


そして、男はこちらに向かってくる。


「ここで、終わりかー、俺の人生なんだったんだろうな


  生まれ変わったら、もっと楽しい仕事と仲間に囲まれたかったな..」


俺は、目を閉じる。

今までの、走馬灯が蘇る。

高校時代のあいつら元気してっかな。

今、何してるんだろ。

あいつらと再会したかったな。

昔みたいに馬鹿騒ぎしてさ、


まぁ、あの思い出を思い出して死ねるなら、最後としては、よかったかもな。


男がゆっくりと俺に近づく。


死ぬ前は、スローモーションって聞いたことがある。


それか。


じゃあな。


目を瞑る。


そして、一つの銃声が鳴る。










目を開けると、店の店内だった。


ん?どういうことだ?


そして、男は、そこにいなかった。


明智「は?」


俺は、必死で店内を探す。誰もいない。何だこれは。


レジの方から足音が聞こえる。


なんだ、店員、そっちにいたのか。謎の親近感を持ってしまっていた。


そして、俺はそちらを眺める。


そこから、長身で長髪の男・ショートカットの女・メガネをかけた前髪ぱっつんの女が出て来た。


着てた黒TシャツにKTDと白文字で書かれていた。は?エージェントか?と思ったが顔をしっかり見ると、懐かしいと思ってしまった。


長髪男「せな カメラは大丈夫か?」


メガネ女「まぁ、大丈夫」


ショートカット女「ねぇ、あの店員かっこよくなかった?」


メガネ女「メガネ貸してあげましょうか?それとも目ん玉くり抜きましょうか?」


長髪男「スゲェ二択だな どうする?」


ショートカット女「どうする?って何よ!!そんなの決まって..」女は俺の方を見て動きが止まる。


メガネ女「どうしたの? そんなに目くり抜いてほしかったn…」メガネ女も俺を見て止まる。それを見た短髪も俺を見て止まる。


長髪男「えっ!!おい、明智薫あけち かおるか?薫だよな?」そう言って俺に近づく。

ショートカット女「ほんとだ!あのバカで面倒くさい薫だ!!」ちょっと酷くない?

メガネ女「..」二人も俺の方へ近づく。


長髪男「薫、俺たちのこと覚えてるよな?高校時代バカした俺らのことを」

俺がさっきまで会いたがっていたあいらだった。


薫「もちろん、覚えてる 長髪がじゅん・メガネっ子が瀬奈せな・ショートカットがえっと…え…と…」


ショートカット女「水希みずきよ 水希!!」さらに、俺に近づいて、耳の近くで


水希「水希よ!!あんたの初恋の相手の水希よ!」


薫「うるせぇ!!てか、初恋認定するな!!」


水希「いやでも、私のこと好きだったでしょ?あれ違った?私の太ももが好きな薫くん♪」


薫「それより、純・瀬奈久しぶりだな 5年ぶりか?」

ちょっとー、無視しないでよと薫が頬を膨らませているが、無視をした。


純「そうだな、そんなに経つか 薫が都会の大学に行ってからそんな経つか…」

俺は、この街を離れ、都会の大学に進学し、こいつらは、地元の大学へ進学し、次第に連絡は取らなくなっていた。


瀬奈「…」


薫「瀬奈も久しぶりだな、元気してたか?」


水希「あぁー、今はちょっとフリーズしてるかも...首の辺りを斜め45度で叩くと..」なにその昔のテレビの治し方。


瀬奈「ぐへぇっっ、いたたた..何すんの!?水希!」すげぇ見ちゃいけない顔してたんだが…


水希「久しぶりにフリーズしてたから」


瀬奈「あっ...」俺の顔を見て声を漏らした。


薫「久しぶりだな、瀬奈」


瀬奈「あっ、薫…どうも…」


水希「何、どうもって!」面白くなって店内を笑い転げている。やっぱこいつは、頭がおかしい。


純「仕事帰りか?」


薫「あぁまぁな」時計を見ると、22時を回っていた。


純「それより、大丈夫か?目の下クマができているが…」


薫「まぁ、それなりに忙しいからな…仕事が」嘘だ、本当は忙しくない。暇だから、退屈だから、スマホでネットサーフィンをしている毎日。


純「そうか..」


薫「それより、お前ら、今レジ後ろから出てこなかったか?」

あぁ、と3人は唸る。


瀬奈「それは、言っていいのかな?純」俺の顔を見ずに純の顔を見る。


純「まぁ、言っていいだろ、薫だし」


水希「私も、全然オッケーだよー、太もも見てくれる人が増えるし ねぇー、太ももちゃん♪」そう言って太ももを撫でる。何してんだこいつ。


純「俺たちはな…   


3人「K・T・D」


そう言って、三人で戦隊モノのようにポーズを取った。


瀬奈「こ、これ、まさか本当にやる時が来るとは…やっぱ、恥ずいよ、純」


純「いやいや、カッコいだろ な?」俺に振るな。答えづらいんだよ。


薫「あぁー、う、うん、そだなー で、何だそのKTDっていうのは?」


水希「よくぞ、聞いてくれた 水希太もも愛好家No01よ KTDというのは、「今日を楽しむ同好会」の略だ」


薫「今日を楽しむ同好会?何だそれ?」


純「なぁ、薫、お前は今日楽しいか?」


薫「何だその質問?」


瀬奈「ちゃんと、答えて」





今日が楽しい?





そりゃ、お前らと会えて嬉しかったし、笑えたけど、それ以前は楽しくない。






毎日が普通で。






パターン化している。






それが楽しいと言えるのだろうか?







薫「楽しいはずねぇだろ!!毎日毎日、暇を潰す そこに何もねぇんだよ!」






何で俺、激情的になってんだ、馬鹿か俺。





瀬奈「…」


水希「だったら、なぜ行動しなかった?暇なのに退屈なのに、なぜ私たちを求めななかった?ここに戻って来たのになぜ私たちに会いにこなかった?」



純「水希..」



薫「いや、それは…」






水希「結局、退屈っていうのはお前の言い訳なんだよ 



   退屈しないように、仕事をしているか?



   

   趣味を持ったか?




   恋人を作ったか?




   何もねぇだろ 社会のせいにすんな! 飛び込んでこいよこっちに」





瀬奈「..薫は、KTDのことまだ何も知らないよ...もしよかったら、明日土曜日だし、うちの部屋に来る?」


水希「積極的ですね、瀬奈さん そんなに会えて嬉しいんですカァ?」ニヤニヤしながら言った水希をうるさいバカバカって瀬奈が叩く。


純「なぁ、薫 3人で借りている事務所があるんだけど今日来ないか?」


薫「事務所?」


純「あぁ」俺は、深いことは聞かず、うなづいた。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る