第2話 22歳が5年ぶりに恋をして思ったこと①

 恋というものと5年振りくらいに邂逅して気づいたことをまとめる必要があると感じたので振り返りながら文章を書き,その場その場で気づいたことを書いていく。


 その人は笑顔が素敵で,落ち着いていて,かっこよくて,かわいらしい人だった。そして,写真を撮るのが上手(上手というよりかは,その人の写真や見ている視点が好きだった)。


 結果的に言うとその人にはもうすでに彼氏がいたのだが(この事実は事の終わりで知ることになった),その人の魅力と対峙した時には,それを気にするまでもなく,気持ちが高揚してしまっていた。(ここから,事の始まりは一目惚れに近い感じであると思う)


 事の終わりは僕の恋愛の相談に乗ってくれていた共通の友人の話で,その人には彼氏がすでにいるらしいとの報告を聞いた時である。

 ここで,「その人にはすでに彼氏がいるらしい」という報告を「事実」と受け止めるくらいにはその友人を信用していたことに気づいた。僕はあまり人には頼りたくない性格であって,古くからの友人も少ないと思う。心から腹を割って話せる友人というのはなかなか見つからないもので,この気づきは大切にしたいと思った。

振り返りに戻って,この友人からの報告は事の始まりからちょうど1か月ほど経過した頃合いだった。


 1か月が自分にとって長かったのか,短かったのか体感的に振り返っても分からないのだが,おそらく自分の心の不安定さが影響しているのだと思う。


 これまで比較的一定に続いていた心拍というものはある程度,自分の時間感覚の源になっていると思っているのだが(常時動いているメトロノームみたいな),あの人からのメッセージに一喜一憂することによって,そのメトロノームのBPMが頻繁に変化し,時間感覚が狂ってしまっていたんだと思う。


 そこから考えると,1か月間で通常よりも多く心臓が動いている時間があるということになるので,僕の体的には1か月よりも多くの時間を使ってしまった感覚でいるはずである。

 ただ,振り返りながらこの文章を考えていると,「まだ1か月だったのか」というふうには感じなかった。なぜなのかはまだ考える必要があるが,この後も書くことが多くなりそうであるのでいったん置いておく。


 この1か月間あの人のことを想って,思考と心のメモリを割いていろいろとやってきたのだが,第一に感じるのは,喪失感がすさまじい。


 喪失感といっても,あの人と付き合えたわけではないし,あの人にはあの人の生きる道があって,付き合っていても自分の物なんかには決してならないわけであって,そうしたら,何を失ってしまったのかということを考える。


 今,この場で思いつくのは,あの人を考えるためにあらかじめ確保しておいた思考と心のメモリが一気に使う必要がなくなって(特に心),その結果何もないただの箱があるような状態になってしまっている。その結果,何も得ていないし,何も失ってはいないのだけれど,その何もないただの箱がある状態が喪失感の1つであると思った。


 それに対処するためにこうやって思考しながら文章にしているのかもしれない。あまりに余ったメモリの空白を埋めるために。こうしていると今だけでも少し楽になった気がする。

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