第6話人違いです!えんま様!


始まりは地獄受入監査事務局なる施設で取り調べを受けたことだった。


「警告…第十五犯罪事項に該当。指名手配転生者『スンドウ・ツトム』と判定。

 一級警戒体制を維持し、専門の係員以外は視線を合わせないようにしてください。」


 

機械的な音声とともに、絶叫するかのように警告ブザーが施設内に鳴り響く。 


バズズズズズビィィィィビィィィッ!!


その音に呆気に取られている間に、僕は葉巻にされ、屈強な男たちの手で連行された。弁明の余地はなかった。ヒト間違いってやつだ。


 

またこの世界にはどうやら、人権概念というものがないらしく。

連行途中にあった処罰所では、男性が先の尖ったハイヒールで臀部を踏みつけられ、恍惚とした表情を浮かべていたり、素肌に鞭を打たれて悦ぶ中年紳士の声が響き渡っていた。


「おんしが、『スンドウ・ツトム』か。」


『見させられるこっちには拷問だなぁ』などと考えていると、四肢を縛り付けられた僕に向けて、甲高い声が奥から聞こえてきた。


海水パンツ一丁の屈強な男たちを率いて現れたのはブカブカの看守服に身を包んだ幼い女の子。


「罪状…姦淫及び外患誘致罪。」


よくよく見ると、『えんま③』と書かれた腕章をしている。


「転生者国家ユスタニア王国へ転生後、催眠術を使い、同性異性無性問わず、周囲四千五百十五人と姦淫。その後、時術による『同多発的操作』を使用。一年間で一億四千五百万十五回の淫匿行為をした後、性仲間と共に他国への進軍を開始。転生者死滅法の執行により、四度消滅。しかし女神サイハによってその都度転生。さらに、催眠術学校を建設し…」


「……」


「読むのも穢らわしいわ…このド変態。」


 


身に覚えがなさすぎる。

…というか、そんなやつ四回も五回も転生させるなよ。


 

『挙句の果てに…』と彼女は右手に、女神からの代理状が握ると、

「あの癇癪持ちで、」矢継ぎ早に言葉を続けた。

「我が儘で、傍若無人で、不作法で、無遠慮で、手の施しようのない、女神キキョウから代理状窃盗…」


えらい言われようだな。


「おかげで、あのアマは大癇癪。そのとばっちりで、世界は破滅寸前…。危うく数阿僧祇の生命が消えかけたんじゃぞ。どう落とし前つけてくれるんじゃ…あ゛゛ぁ゛ぁん?」


 

身に覚えがなさすぎる(二度目)。

というか、順序が違います。

僕は世界の破滅を止めた方なんですよ。


などと、否定しようとするが、身動きも口も動かせず、どうにもならない。

せめて、猿轡だけでも外してくれないだろうか。


「沈黙…反省の余地なしじゃな。」


『身包み剥いで三文舟にのせておけい』の指示に従った、屈強な男たちが再度僕に近づいてきて…

後は冒頭の通りである。

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