第二章 ゲームソフト開発(エロゲ)ギルドを作ろう!

第9話 どうしてたたないの……?

『ハメコン』

マジカが作った魔法具に俺は興奮していた。パソコンもゲーム機も存在しないこの世界で、エロゲーを普及するのは魔王を討伐する以上に困難な所業だと考えていたからだ。魔法具という技術である程度可能とは思っていたが、俺が思っている以上に実現への道は早そうだ。


「……んっ……?」


股間あたりに、もぞもぞとしたこそばゆさを感じて目が覚める。どうやら興奮していろいろ妄想していたら、寝落ちしてしまったらしい。上半身を起こすと下半身に掛けられた布団が異常なまでに膨らんでいる。俺は布団の中を覗き込むと、マオマオが潜り込んでパンツの中を覗き込んでいた。


「ねぇ……? どうしてたたないの……?」


「おはよう、マオマオ」


「ねぇ……? どうしてたたないの……?」


「今日はいい天気だな」


「大事なことだから二度言ったけど……。ねぇ……? どうしてたたないの……?」


「ああ、煩い! 煩い! お前こそ何をしているんだ!」


俺は布団の中からマオマオを引きずり出す。放り出されたマオマオだったが、勝ち誇ったような小悪魔的な表情で俺を見つめてくる。


「あたし、今、タロウの従属奴隷でしょ? 奴隷らしくご主人様の朝のご奉仕をしてみようと思ったんだけど……」


……これ、なんてエロゲ?


「……それで……?」


「ぜんぜんたたなくて、ゲンナリしたわ」


「…………」


「ねぇ……? どうしてたたないの……?」


「ああ! やっぱり、煩い! 朝のご奉仕なんてしなくていいし、執拗に聞かないでくれ! 俺は『藤林せおり』一筋だから、たたなくても困らないんだよ!」


「でも、あたしなら治せるかもしれないよ?」


「……マジで……?」


「詳細を聞かないことには、判断できないけどね」


もう、マオマオにはバレてしまったので、この際洗いざらい吐いてしまおうか……。

一応、こいつは元魔王で結構な博識だ。本当に治してくれるのかもしれない。


「……こっちにきてから、たたなくなった……」


「えっ……、もしかしてあたしを倒すまでの旅の道中ずっと……?」


「そ、そうだよ……」


「ふうん、そうなんだ……、それはさぞかし健全な旅だったんでしょうね……。ぷっ」


おい、いまちょっと吹いただろ!? くそ、幼女っぽい体型で、その勝ち誇ったドヤ顔はなんなんだ……。なんか、凄い惨めな気持ちになったぞ……。


「それじゃあ聞くけど、戦いで勇者の力を使ったとき、昇天するようなすごく気持ちいい気分になったこととかない?」


「おお、そういうのはあるぞ! 強敵と戦ったときとかで勇者の力を使うと妙にスッキリして、まるで賢者にでもなったような気分になる」


「ふうん……。もしかすると『淫魔』と同じかもしれないわね」


「『淫魔』……?」


「特に性欲が強い魔族のことを『淫魔』って呼んでいるわ。淫魔はね、自身の性欲をあらゆる力に変換することができるの。力を強くしたり、強大な魔法を使ったりね」


「性欲を力にするのか……」


「タロウの力は人間でありながら、聖剣を操ったり、あたしと互角の魔法も使うことができたじゃない? その力の一部が性欲だったとしても不思議じゃないわね」


「そ、そうなんだ……」


「きっと、溜まりに溜まったものを開放するから、凄いんでしょうね」


「……そ、それで、これ、治るの……?」


「う~~ん……。あたしも『淫魔』の生体についてはそこまで詳しくないの。魔族の中でも、なかなかの希少種だから」


「そ、そうか……、はあ……」


「諦めないで。『魔族種の呪い』を調べるついでに『淫魔』についても調べておくから。じゃないと、あたしも困るし……」


「おお、それは助かる! でも、なんでマオマオが困るんだ?」


「勇者の血筋を途絶えさせるなんてもったいないでしょ?」


「ん? それって、どういう……?」


「さあさあ、話は終わり! タロウも早く起きて! 朝食の準備をしてちょうだい。お腹が減ったわ」


「あ、ああ」


布団を剝がされ、朝食をせがまれた俺は調理場へ向かった。ご主人様のご奉仕とか言うなら、朝食くらい作って欲しいとちょっと思った。


そして朝食中に、これからのエロゲー製作ことを考える。

まずは、ハード面。これは、マジカのおかげで数年のうちにエロゲーが動くレベルにはなりそうだ。ハードスペックとしては最低8BITゲーム機のファミコソくらいの性能は欲しい。ファミコソはゲーム機でありながら非公式でエロゲーもでてたしな。性能をアドベンチャーに特化すれば、解像度とかも上げられるかもしれない。当時のパソコン並みくらいあるといいのだが。


そうなると、次はソフトの開発側だな……。どんな優秀なハードもソフトがなければ、ただの箱だ。

最低必要なものは……

イラスト

シナリオ

プログラム

サウンド

後は、プロジェクトの管理者とかか……

最低、これを創作できる人材を確保すれば、なんとかなるだろう。同人ゲームとか一人で開発している人もいるんだし、最初は少人数でも大丈夫だろう。

魔王討伐の冒険中に、人材には目星は付けていたから、あとは俺の交渉次第か……。

まずは、もっとも重要なのは『イラスト』が描ける人材の交渉か。他も重要なのだが、一番と言えば、やっぱり『イラスト』になってしまうだろう。なんせ、商品の前面に描かれるイラストで、エロゲーの売り上げが変わるといって過言ではないからな。いわゆる『パッケージ買い』というやつだ。


朝食を食べ終えた俺は、さっそく冒険で使っていた荷物を漁る。確か、捨ててはいなかったハズだけど……。


「おっ、あったあった!」


予備用の盾の裏側に挟まれていた折られた紙を見つけると、そっと丁寧にそれを広げる。多少擦れてはいるものの、紙は破けておらず無事だった。俺は紙に描かれた絵を見て確信する。


「間違いなく、こいつは神絵師になるぞ!」

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