67.なんとも不思議な村暮らし
本山さんの婚約指輪は、じじいの知り合いという宝石商に頼んであつらえてもらった。
彼女は誕生石が、なんてかわいいことを言っていたがダイヤで作らせた。婚約指輪なんてものは、生活に困った時質に入れる為に高価な物を買うもんだと俺は思っている。
それにしてもじじいに宝石商の知り合いなんていたんだな。つーかじじい、若い頃何やってたんだ? 結婚指輪も頼んである。日付を入れる関係で、籍を入れるのは10月1日にした。
「ダイヤだなんて、困ります……」
案の定本山さんに恐縮されてしまった。
「出すのは俺だし、お返しとか一切考えなくていいから。金に困った時売る用だと思ってくれればいい」
「そんな……」
「この先何が起こるかわからないだろ? 絶対はないからさ」
「わかりました」
もちろん苦労をさせる気は全くないけどな。
相川にも連絡を取って、なんかいい株ないかとか話したりはしている。相川は山暮らしの傍らデイトレーダーとして暮らしているらしい。山暮らしをする前は小金を稼げる程度だったらしいが、山暮らしを始めたらかなり順調に稼げるようになったそうだ。
「迷信かもしれないが、何かのお導きかもしれないな。仮想通貨もかなり順調に増えてるしな」
「仮想通貨は基本上がるものだろ?」
「そうだな。慌てずほっとくのが一番だよ」
仮想通貨か。そういえばほっといて全然チェックしてなかった。それなりに順調に上がってる気はする。
「おかげでかなり好き勝手やらせてもらってはいる」
相川が楽しそうに言っていた。それはいいことだ。
「シイタケ……」
「……あれはある意味失敗だ。もらってくれる人がいるだけ助かってる」
相川は遠い目をした。一緒に暮らしているという彼女はまだ紹介してもらってはいない。すごい人見知りで、めちゃくちゃ嫉妬深いらしい。
「お前にしては珍しいな」
「……いろいろあってな。でも今の方が充実してるよ」
ちなみにこの会話は相川の山の麓でしていた。大蛇と暮らしているから特定の相手しか山には入れられないのだという。
「特定の相手って彼女か」
と聞いたら、彼女もそうだが後は事情を知っている隣山の佐野さんだけしか入れられないと言っていた。事情ってなんだ? とも思ったが相川が話さないのだからそれでいい。
「楽しいならそれでいいんじゃないか」
彼女と結婚しない理由もいろいろあるのだろう。今は事実婚でもそれほど困ることはないし。何より他人の問題だ。
「やっとシイタケも調整できるようになったよ。今は一部にしか種菌は打ってないから前ほどたいへんてほどじゃない。それでも自然にできる分はあるからそれは回収してるがな」
「そうか」
「11月を過ぎれば狩猟期間になるんだが……お前のところの山も行った方がいいか?」
「頼めると助かる。日当は払う」
相川は笑った。
「お前もそうだが、この辺りの人間は金払いがよくていいよな。おかげで気持ちよく仕事ができるよ」
「? そんなの当たり前だろ」
「当たり前と言い切れる人間が少ないんだよ。この村の人たちはしっかりしてる人が多いけどな」
「そうか」
うちのじじいはわからずやだけどな。
「そういえば、10月は一月丸々仕事がないんだ。山の手入れとか、たまに手伝ってもらってもいいか?」
「かまわない。でも新婚さんの邪魔なんじゃないのか?」
「たまに来て山の手入れを教えてくれればいいよ。後は注意すべき点がないかどうかだな」
「それぐらいなら行くか」
「よろしく」
相川と友人関係が復活したのもいいことだろう。
湯本さんちにもたまに伺って山を見たりしている。そろそろ柿が採れそうだと言っていた。それで驚いたことがあった。
「っ!? なんだそのでかいニワトリ!?」
思わずミーを抱きしめてしまった。
佐野君の軽トラからでかいニワトリが続々と下りてきたのだ。
「キアーアー!」
「いてっ、ミー、いてぇっ!」
抱きしめたことでミーにつつかれた。だってあんなでかいニワトリに捕食されたらどうするんだ!?
「あー……すみません。多分今150cmぐらいあると思うんですけどよく言って聞かせてるので……。紹介させてください」
そんなでかいのがなんでニワトリとわかったかというと、一羽の頭に立派なとさかがあり、形は確かにニワトリだったからだ。しかしその尾は尾羽ではなく、なんか爬虫類系の尾だった。
「も、もしかして羽毛恐竜か?」
「みなさんそうおっしゃるんですけど、俺はニワトリだと思っています」
そんなのが四羽も近づいてきて、ここはジュ〇シックパークだろうかと思った。
「山越さん、こちらのニワトリさんたちは佐野さんと暮らしてますから……」
本山さんがフォローしてくれたが、すげえなと思った。(名前は前のままで呼ばれている)
「ええと、こっちのタロウとミーと暮らしている桑野だ。よろしく頼む」
近づいてきたニワトリ(?)たちに挨拶した。絶対これは敵わないと思った結果だった。
「こちらからポチ、タマ、ユマ、メイです。そんなにかしこまらなくてもいいですよ。家族みたいなものなので」
「そうか。よろしくな」
そう言うと、ニワトリたちはココッと返事をしてくれた。うちのミーやタロウもそうだが、やたらと頭がいいなと思った。
ニワトリたちは4年程前に村の屋台でカラーひよこを買ったらこんなに育ってしまったのだという。だから湯本さんから屋台で生き物が売ってなかったか聞かれたのかと合点がいった。
確かにこんな不思議な生き物がしょっちゅう売ってたらたいへんだよな。
そんなアクシデント(?)のような出会いもあったが、とうとう写真撮影の日になった。
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海人には是非ニワトリへのツッコミを入れてほしかったので(ぉぃ
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