(34/47)一緒です。同じ気持ちになります
「それでどうしたんです?カイさん」
「いや、その」
俺はキエールの酔いもあるのか、急に意識してしまい照れ臭くなってしまう。
なんかいろいろ話しにくくなってきた。
煮えきらず言葉が出てこない俺を見てジーナが言った。
「どうしたんです?黙りこくってしまって。ああ、ですか。ですよね。わかりました」
「え?」
え?どういうこと?
なんかジーナも恥ずかしそうにしている。
もしかして?
「わたしも一緒です。同じ気持ちになります。なかなか言いにくいですよね」
おおお?
同じ気持ちきた?
これは……ひょっっとすると期待できる?
ごくり。
神妙な顔をしたジーナが口を開いた。
「カイさん。その……すみません」
え?どういうこと?
同じ気持ちって?
え?あれ?
「そうですよね、カイさん。依頼の完了発報告なんて冒険者なら誰でも通る道ですもんね。いつまでも浮かれてるとか恥ずかしいですよね、すみません」
ジーナは頭を下げた。
「それなのにいつまでも喜んでいるみたいな話してしまって……。そんな事やめて欲しいとか言いにくいですよね。喜んでくれる気持ちに水をさしたくないけど、本人的には当たり前のことすぎて恥ずかしいですよね。わたしも同じ気持ちになります。本当にすみませんでした」
と、気まずそうに一気に捲し立てると、今度はより深く頭を下げた。
「え?いや、その。いや、違うんだよ」
「そうなんですか?カイさん、優しいんですね」
「違うんだよ、本当に。そうだな、その、そうだ、そうそう!あれだよ、あれ!人間と魔人の違いとかあったら教えて欲しいなとか思ってさ」
「人間と魔人との違いですか?」
「そうそう。だってデトさん、じゃなかった、デトックスって魔人なんだろう?見た目なんか全然人間といっしょじゃん。何が違うのかと思ってさ」
「うーん、なるほど。カイさんって何やら遠くから来たと聞きましたし、そういうことも知らないものなんですね」
「はは、そうなんだよ」
「わかりました。では、この世界は人間界か魔人界かで二分できるのはご存知ですか?」
「そうなの?」
「はい。大いなる女神様が
「なるほど」
「人間界では町ごとにそれぞれの女神さまの御加護を受け大勢で生活をしています。一方魔人界は魔王を頂点に成り立っている世界です。魔人は人間に比べるとギフトも強力なので庇護を受けた町も存在せずバラバラに生活しているとわれています」
「じゃあ人間の方が数は多いんだな」
「はい、そう言われています。最初はお互い干渉せずという世界だったと聞きます。しかしある時期から魔王軍は人間の世界にちょっかいを出すようになってきたのです」
「ある時期?」
「新たな魔王が誕生してからと言われています」
「魔王が誕生してからか……何があったんだろうな」
「歴史学者の一部なんかは人間が栄えすぎないようにとかも言っていますが、詳しくはわかりません」
「人間が羨ましいとか?はは」
「……カイさん」
「すまんすまん」
「もう、ちゃちゃいれないで下さい。聞きたいって言ったのカイさんなんですからね」
と、ジーナは頬を膨らませた。
「ごめんて」
「まあ良いです。じゃあ続けますね。魔人の本当の外見は人間と違うと言われています。ただ人間の姿にも変えられますので」
「じゃあデトックスもあれが本当の姿じゃないかもしれないんだな」
「はい。最後まで人間の姿でいる場合も多くあるみたいですよ。他の大きな違いはギフトのあり方です」
「あり方?」
「人間は
「なるほど……で、それが何か?」
「なんででしょうね?」
ジーナは小首をかしげた。
思わず吹き出してしまう。
「もしかしたらだけど……魔人は道具ではなく自分に即したものや望んだギフトが手に入るとかなのかもな」
「なるほど!カイさん、頭いいですね!」
目をキラキラさせてジーナは相槌をうった。
うん、うん。
悪くない。
こういうことだよ、望んでたの。
俺はもっとジーナとの会話を続けたくなる。
「そういえば、ジーナのGGはそのペンだよね」
「そう、これです」
ジーナはペンを高々と取り上げた。
「ジーナは書くたびにギフト名を唱えるの?」
「いいえ。そんなに大げさなギフトではないので一時間に一度つぶやくくらいですかね」
「へえ、そうなのか。ギフトは字が綺麗に書けるってことで良いのかな?」
「うーん、ちょっと違いますかね。字が綺麗に書けるというのもその一部といいますか」
「どういうこと?」
「それ用の書体や書き方になるんです。なのでギルドの書類なんかだと真面目なものなので相応の硬い文字の形や文章表現になるのです」
「ふむふむ。じゃあ『大安売り!』みたいなチラシを書く時には、そんな感じになるんだ」
「はい、そうです。文字から気持ちまで伝わるように仕上がります」
「面白い!じゃあ『大安売り!』のチラシを書いてみてよ」
「いいですよ。念のため唱えなおしますね」
と、ジーナはペンを握りしめなおし神妙な顔をした。
「『ディス イズ ア ペン』!」
……悪いとは思いつつも、俺は膝から崩れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます