第30話 古代文明の滅亡……ですわ
「何故その文明は滅んだんだ?」
当然の疑問である。
「一言で言ってしまえば、核戦争よ……って言っても聞いた事ないか。」
「うん。」
「私もですわ。」
「俺もだ。」
「核分裂が連鎖反応して起きる膨大なエネルギーで広範囲の対象を滅ぼす兵器を互いに撃ち合う戦争よ。」
全員目が点になっている。
「これじゃ分かんないか。詳しく説明すると……ウランの原子核に中性子を当てると原子核が2個に分裂するとともに、大きなエネルギーと2、3個の中性子が放出されるの。これを核分裂と言うんだけど、核分裂によって生じた中性子がまた別のウラン原子核を分裂させて……といった具合に核分裂が連鎖反応して膨大なエネルギーが放射能と共に放出され、そのエネルギーによって生じた爆発が広範囲にわたり、ことごとく対象範囲を滅ぼしてしまう兵器を色んな国々が撃ち合いを始めてしまって、引っ込みがつかないでたくさんの技術が消失し文明が崩壊したの。」
「なぁ、分かるか?」
「分かんない。」
「原理そのものは理解はしましたが、聞いたことない単語が多いですわ。」
『お母さん。それじゃ分からないよ。要するに特級魔法よりも強力な爆発を起こす兵器で戦争しまくったら、やっべぇ…文明滅んじゃった……って事です。』
「それなら分かる。」
「そういう事か。」
『それにしてもショック。目覚めたら自分の知ってる世界じゃないんだもん。』
「ドゥルジナスにとってはそうよね。」
「文明が進歩し過ぎて自滅してしまったという事ですわね?」
「そうそう。私は結構力の強い悪魔だからそのくらいじゃ死ななかったけどね。人間達はそうもいかないから。」
「アンリさんはもしかして上級の悪魔ですの?」
「まぁね。これでも7万年は生きてる1級悪魔だし。」
悪魔には等級が存在し、1~3級の悪魔は上級悪魔と呼ばれるのだ。3級でさえもSSSランク上位、2級以上はSSSランクの枠には収まらないと言われている。
公式記録によれば、2級以上の悪魔は人間界に姿を現した事はないとされているが……
「未だ存在が確認されていない1級悪魔ですか……それがどうして……」
セリアの疑問は当然のもの。
「私の最初の旦那……ドゥルジナスの父親の欲望がそれ程強かったと言う事ね。悪魔召喚は欲望の強さに応じた悪魔が呼び出されるの。」
「つまり、最初の旦那が1級悪魔を呼び出す程に嫁が欲しかったというワケなのか。」
「ドゥルジナスのお父さん必死過ぎでしょ。」
『は、はずかしい……。』
父親が1級悪魔を呼び出す程に嫁が欲しかったなどと暴露されれば、誰でも恥ずかしいに決まっている。
「じゃあ私は帰るわね。」
『もう?』
「悪魔がいつまでも居座るのは良くないでしょ? それに旦那が待ってるし。」
『再婚したの!?』
驚きを隠せず動揺する元聖女。
「当然でしょ。ドゥルジナスが眠りについてからもう1万年も経ってるのよ? 結婚した回数だって100回は超えてるし、あなたの弟や妹だって300人くらいいるわ。」
『ちょっと!! お父さんとの大恋愛はどうしたのよ!?』
「大恋愛っていうか……無理矢理だったし。そりゃあ当時は幸せだったけど、死別してから改めて考えてみるとやり方がちょっと酷いかなって……。」
良く考えなくても結構酷い話である。
「まぁそうだな。」
「そうですわね。」
「確かに。」
それでも娘としては母の再婚に思う所があるようで、歓迎している雰囲気は見られない。
『お父さんが可哀想じゃない。』
「可哀想じゃないわ。浮気したわけじゃないし、ちゃんと死別してからの再婚よ?」
『でも……。』
「じゃあお母さんは1万年も泣いて過ごしていれば良かったの? なんて酷い娘なのかしら……。グレて悪魔になってやるんだから!」
涙ながらに悲劇のヒロインのような叫びで訴えるアンリ。
『元々悪魔じゃん。』
「言われてみればそうだったわね。」
先程の悲痛な叫びは一体何だったと言うのか……娘のツッコミにあっけらかんと答える悪魔。
『お母さんのそういう所、ちっとも変わってないね。』
「ドゥルジナスもね。暗黒魔法の使いすぎはダメってあれ程約束したのに破っちゃうんだから。お母さんね、急にあなたが居なくなったから心配したのよ?」
『ごめんなさい。』
暗黒魔法は悪魔以外が使うと生命力を削ってしまうらしく、純粋な悪魔ではないドゥルジナスの死因は生命力を使い果たしてのものだったようだ。
「あなたは私に似て、あまり見かけない程の美人よ。どこかに攫われてしまったのかと思ったんだから……。」
『確かに私はお母さんに似て美人だから、そう思うのも仕方ないか。』
互いに容姿を褒め合う母娘。
「ドゥルジナスが無事で何よりよ。お母さん帰るから、またね。」
『分かった。時々会いに来てね。』
そうして別れを告げ、ドゥルジナスの母は転移魔法で帰ってしまった。
「無事って言っても、死んで幽霊になっちゃってるじゃん。」
「キャロル、それは言わない約束ですわ。」
『キャロルさん、回復魔法よろしくお願いします。』
ドゥルジナスは深々と頭を下げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます