第25話 お土産ですわ

「反発が無かったと言う事は、元々他からもある程度は認められていたのでしょう。」


「そう言ってもらえると気が楽になるわ。自分でも結構無茶苦茶な事をした自覚はあるのよ。」


「きっとルディア様は一度やるとお決めになれば苛烈ではありますが、本来はお優しい心根をお持ちなのですわ。」


 恥ずかしげも無く臭いセリフ吐く公爵夫人と、照れくさそうにはにかむ王女であった。


「それを言ったらセリアもそうじゃん。悪戯とか言いながらちゃっかり人助けもするし。」


「ち、ちがいますわ。私の場合はただの悪戯でしてよ?」


 セリアは焦り、自らの照れを隠そうとするが揶揄われてしまう。


「照れてるー。」


「キャロルだって、すぐに人を心配したり怪我を治してあげたりと優しいじゃありませんか。」


 今度はキャロルが恥ずかしがる番である。


 三人は互いに褒め合い恥ずかしがるというキャッキャウフフな空間を形成し、友人との平和な時間を満喫した。


「そろそろ良い時間なので、お暇致しますわ。」


「そうだね。」


「名残惜しいけど仕方ないか。また来てちょうだいね。」


「はい。今度はルディア様にイリジウム王国を案内して差し上げたいですわ。」

「それ良いね。」


 3人は別れを惜しみつつ、また会う約束をしてセリアとキャロルは迎賓館に戻った。





「お友達同士で過ごす時間は楽しかったですわ。」


「だね。そう言えば、ケイスから手紙を預かってたんだった。」


「お手紙ですの?」


「そう、セリアにだって。」


 セリアは手紙を受け取り、早速開いてみた。




 セリアへ


 君がこの手紙を読んでいると言う事は、きっとパーティが終わった後なのだろう。


 本当は王都に着いたらすぐに読んで欲しいのだけど、キャロルは忘れっぽいからね。


 こうして手紙にしたのには勿論理由がある。


 人に聞かれてはマズいからだ


 教会の人間が君を聖女なのではないかと疑っている。


 恐らく、君が手品と称して回復の壺で街の人々を癒して歩いていた事に起因すると思うのだが、奴らに回復の壺の存在を教えるわけにはいかない。


 そんな事をすれば、何としてもキャロルを手に入れようと画策する事だろう。


 そこで、イリジウム王国に向かった君に3人目の聖女の情報がないか、ついでに探ってきてもらいたいのだ。


 なければないで良いが、もし3人目の聖女の存在を教会に教える事が出来れば、君が聖女だという疑いを晴らす事が出来る。


 情報を掴んでも掴めなくても、パーティ後数日以内には戻って来て欲しい。


 苦労をかけるがなんとか頼みたい。




「これは……」


「なになに?」


 キャロルも手紙を読み、2人は状況を理解した。


「偶然にもアリエンナ様とお知り合いになれたお蔭で、手紙に書かれている内容は達成していますね。」


「そうだね。ただ、急ぎっぽいから早めに帰ってあげないとね。」


「はい。残念ですが仕方ありません。明日は午前中にお土産を買って、午後にはここを発つ事に致しましょう。」


「おっけー。」


 明日に備えて帰り支度を済ませ、夕食を摂った2人は就寝する。


 そして翌日。


 朝食後、出掛ける支度を済ませた2人はアリエンナとギャモーを訪ね、諸事情により午後には帰国する事を告げる。


「出来れば、もっと一緒に遊びたかったですね。」


「えぇ。私も残念でなりませんわ。」


「また会おうね。」


「そうだな。」


 4人は再会を約束し、互いの住所を教え合ってから別れた。


「それでは商店街に行きましょう。」


「さんせーい!」


 2人は商店街へ向かう。商店街には様々な店があり、どんな土産が良いかと話し合いながら吟味した。


 スタンダードに茶葉や調味料など保存が利く物、アクセサリーや置物といった工芸品などを無難に選んでいく。


 そしてブッ飛び公爵夫人はとある物を発見してしまう。


「これは……良い物ですわ!」


 セリアは商品を手に取り、目を輝かせる。


 そしてキャロルも商品を見てみるが……


「どれどれ? うぇっ……。」


 正反対の反応を示した。


 商品の説明にはこう書いてある。


『祝福された呪いの指輪』


「店員さん。こちらの商品にはどのような“いわく”があるのでしょうか?」


「これはですね。所有者は嫌でも幸運に見舞われ、そしてどうでも良いタイミングで小さな不運が訪れます。」


 店員の説明は簡潔だが、分かりにくかった。


「なにそれ? たとえば?」


 以前の所有者は、約束事がある時は必ず晴れの日であったのだという。そんな日は必ず何かしらの良い事が起こっていたのだとか。


 小銭を拾ったり、買い物をすればオマケして貰えたりなど。


 しかし、何も無い日はタンスに足の小指をぶつけたり、動物の糞を踏んだり……。


 中でも不思議なエピソードは、所有者が変なゴロツキに絡まれている所を男の子が恰好良く助けてくれ、お礼にとその男の子に手料理を御馳走すると……実は相手が貴族の次男であったそうだ。


 その男の子は綺麗なお姉さんが大好きで、所有者は平民であったが男の子がしつこいくらいアプローチをかけ、そのまま結婚してしまったのだとか。


 所有者17歳、男の子11歳だったそうだ。


「おねショタって奴だね。」


「おねショタ? 聞いた事がありますわ。人類が憧れてやまないと言う伝説のカップリングの事ですわね?」


「そう、それ。」


「お一つ下さいな。」


「まいどあり! と言ってもコレは一つしかありませんが。」


 そうして土産を買った2人は自らの国、イリジウム王国に帰るのであった。

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