第24話 王女と聖女は強くなる、ですわ
キャロル指導の下、王女はすぐに合成魔法のコツを掴む事が出来た。
「ルディア様は特級魔法が使えるだけあって習得も早いですわ。」
「難易度的には特級の方が難しいわ。ただ、通常の魔法とは別方向の……左手と右手を同時に使うような作業というか、ピアノのような感じかしら?」
「言われてみればそれに近い感覚なのかもしれませんわね。私はピアノを習っていませんでしたので、正確には分かりかねますが。」
「成る程。ルディアはピアノ弾けるの?」
「えぇ。それでコツを掴むのが早かったんだと思うわ。そうじゃなかったら、この短時間でコツを掴むのは無理ね。」
「それにしたって早いけどね。私らなんて一ヶ月くらいはかかったのに。」
キャロルは拗ねたように口を尖らせる。
「そう拗ねないで。二人とも既に合成魔法を習得しているなら、ピアノがすぐ弾けるようになるかもしれないわよ。」
王女は苦笑いでフォローを入れた。
「それはそれで楽しそうだけど、先ずは魔法かなぁ。」
キャロルは魔法がそれ程得意ではないと言っても、魔法自体が嫌いなわけではない。
どちらかと言えば、好きな部類に入るだろう。
「じゃあ約束通りキャロルの魔法を見てあげようかな。」
「お願い。二級魔法が使えなくてさ。」
「試しに二級魔法を撃ってみて。」
「ここで?」
キャロルが疑問に思うのも当然のこと。いくら二級魔法が使えないと言っても、何かの間違いで発動してしまえば大惨事である。
「私が防御魔法を張っておくから、試してみて。」
「わかった。」
そう言ってキャロルは魔法を発動させる為に集中し、魔法名を告げる。
「風切。」
魔法は発動せず、その場には魔力だけを消費した聖女が立っていた。
「成る程。」
「何か分かったの?」
「込める魔力が少なすぎるわ。二級魔法は今使用した魔力の三倍必要なのよ。次は回復魔法を使ってみて。」
「わかった。」
今度は回復魔法を使用するキャロル。
それを見ていた王女は気付いた事があるようだ。
「もしかして、普通の魔法よりも先に回復魔法ばかり使ってた?」
キャロルは驚いて答える。
「確かに、私は回復魔法を先に使えるようになったんだけど……何でわかったの?」
不思議そうに首を傾ける彼女は、王女に尋ねた。
「そういう事でしたの。私も分かりましたわ。」
横からセリアも発言する。何故二級魔法が発動しないのか思い至ったようだ。
「キャロルはね。回復魔法を使う要領で通常の魔法を使おうとしているのよ。だから二級以上の魔法になると、込める魔力が足りなくて発動しないの。」
「要するに、キャロルは回復魔法を使う時の魔力使用量が魔法を使う際の癖になってしまっているという事ですのね?」
「その通り。そもそもキャロルの持つ魔力量で二級魔法が発動しないわけはないわ。どう見ても二級魔法士レベルの魔力量はあるんだもの。」
「私は相手の魔力量というものを知覚する事は出来ませんが……長時間回復魔法を発動できる彼女が二級魔法を発動出来ないのは変だと思っていましたの。」
セリアも疑問には思っていたようで、王女の論理的な説明に納得がいったようだ。
「今度は魔力を多く込める事を意識して魔法を使ってみて。」
「おっけー! 風切。」
二級魔法は無事に発動し、風の刃が王女の防御魔法に接触する。
「発動した……。」
「やりましたわね!」
「出来た!」
セリアとキャロルは仲良く飛び跳ね喜んでいる。
「得手不得手はあると思うけど、他の属性に関しても魔力量の調節で二級魔法は発動するはずだわ。」
「ルディアありがとう! もしかしすると、この要領で一級魔法も使えて……ゆくゆくは一級魔法士になれちゃったり……。」
王女は苦笑いで残念な事実を告げる。
「えーと……今の貴女の魔力量じゃ厳しいかな。多分一発撃ったら終わりって感じだと思うわ。」
「えぇ?」
「私もでしょうか?」
「セリアさんもそれくらいの魔力容量だから、同じね。」
「残念ですわ。せっかく悪戯に使えると思いましたのに。」
セリアはガッカリした顔で、ため息をつく。
「一級魔法を悪戯に使っちゃダメでしょ。そもそもどんな悪戯なのよ。」
「ちょっと想像がつかないわね。」
「勿論直接一級魔法を放つわけではありませんのよ? それくらいの実力が備われば応用がききそうですもの。」
「そういう意味か。ビックリするからやめてよね。」
「元婚約者の庭に特級魔法を放った私には耳が痛いわ。」
「それは仕方ないんじゃない? 婚約破棄からの第二夫人になって新しい結婚相手の教育係をしてくれって言われたんでしょ?」
「知ってたの?」
意外そうに尋ねる王女。
「セリアに教えて貰ったの。有名な話らしいじゃん。」
「かなり有名ですわ。確かに武力を用いたのかもしれませんが、短期で決着をつけた上に他の貴族の反発も無かったそうではありませんか。」
「皆フェルミト家が怖かったんでしょうね。」
「それもあるかもしれませんが……フェルミト家が悪い貴族だったのなら、少なからず反発はあったはずですわ。」
「それもそうだよね。」
うんうんと納得するキャロルであった。
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