第2話

『どうも、こんにちは』


「え…?」


 突然現れた声に、琴葉は顔を上げた。


 そこには、白いフードを深く被った人が立っていた。


 …白いのはフードだけじゃない。


 着ているフリース、ズボン、靴、手袋…全部、真っ白だ。


 よく見ると、仮面までつけている…もちろん、白色の。


 …だが、その仮面に「覗き穴」なるものはない。


 顔のように見えても、それは仮面が窪んで、そう見えるだけだった。


 人なのだろうか?


 背丈や声からして…同い年くらいの少女のようだが…。


『ようこそ、”ホワイトワールド”へ』


 白い少女は両手を広げる。


「え…っと…」


 琴葉は状況が理解できず、少女を見つめていた。


 …しばらくして、琴葉がようやく口を開いた。


「ほわいとわーるど…?」


『ここのこと…』


 少女はそれだけ言うと、右を向いて、その先を指差した。


 すると、少女の指先から、サッと霧が引いていった。


 霧が晴れたそこには、広々としたコンクリートと一つの噴水が。


 そして、そのコンクリートを丸く囲むように5つの扉があった。


 扉より向こうの景色は、霧に包まれていて見えない。


『ここは、ある神様が創った、いわば異世界』


「い、異世界…?」


 少女は、琴葉の手を取り、噴水の近くに連れて行った。

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