White world

夜桜モナカ

第1話

「ちょっと、待ってよ…!」


「なんなのよ…ここ、どこ?」


 琴葉ことはは焦ったようにあたりを見回した。




 琴葉は、ごく普通の中学生。


 いつも、親友である理紗りさと勉強するのが、琴葉の楽しみだった。


 …が、一年ほど前から、理紗は学校に来ていない。


 彼女に何があったのか…琴葉も知らない。


 この前、理紗の家を訪ねたものの理紗が出てくることは無かった。


 ずっと部屋に引きこもったままなのか…。


 理紗と会わなくなってから、琴葉は気分がすぐれないままだった。


 …教室に、琴葉や理紗を心配するものなどいない。




 学校の帰り道。


 今日も、琴葉は人気ひとけの無い一本道をとぼとぼ歩いていた。


 どれだけ経っても、隣に理紗はいない。


 俯きながら、小さくため息をついていた。


 …急に周りの空気が冷たくなった気がした。


 ハッとして、琴葉は顔を上げる。


 目の前にあったのは…ただただ真っ白な霧。


 琴葉は驚いたように後ろを振り向く。


 …真っ白な霧が充満している。


 琴葉の周りを白い濃霧が囲んでいるのだ。


 いつもの帰り道じゃないことは、明らかだった。


 怖くなった琴葉は、ひたすら前に走った。




「ちょっと、待ってよ…!」


「なんなのよ…ここ、どこ?」


 琴葉は焦ったようにあたりを見回した。


 所々に置かれている白くて四角いキューブ…


 道路の白線も、用水路も、気づけば無くなっていた。


 琴葉が立っているのは、ただただ広くてどこまでも続くコンクリートの上だった。


 そして、周りには相変わらず霧が。


 数メートル先すらも、あまり見えない。


 …道を間違えて、ここに来てしまったのか。


 しかし、もう戻れそうにない。


「どうしよう…」


 琴葉はカバンから携帯を取り出した。


 強くタップしてから、耳に当てる。


 コール音が鳴り響いた後、つかの間、無音になり…


「もしもし?!お母さん…!」


 その無音に言葉を打ち込んだ。


『おかけになった電話は…』


 しかし…返ってきたのは無機質な声だった。


「…嘘でしょ?」


 電波が届かないようだ。


「私、どこに来ちゃったの…?」


 琴葉は肩を落とした。

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