3、ひとつシェルターの下

 とはいえ、これからここで生活していくわけだからこの異様な空間に慣れていくしかないか。

 よし、次は内装に入るとしよう。

 本当なら床を作った方が良いんだろうけど、現状は難しいから虹色の大きな葉っぱを地面に敷くとして……あのベッドはどこに置こうかな。

 僕はベッドを持ちて、上げシェルター内に入って行った。


「んー…………かまどを真ん中にするのなら、この辺りかな?」


 試しにシェルター内の奥側の方へべッドを置いてみた。

 ……うん、これなら前側にスペースが出来て、そこで作業が出来るな。

 ベッドはここに置くとしよう。

 ただそうなると、後ろ側の空いているのが気になるな。

 虹色の大きな葉っぱで壁を作った方がいいかな……。


「じゃあ~、うちの寝るところは、こっちかな?」


 壁を作ろうかと考えていると、アリサが前側のスペースに立っていた。


「……へ?」


 僕の聞き間違いかな。

 今、うちの寝るところはって言ったような気がしたんだけど……。


「え、えーと……今、なんて言った……?」


「ん? うちの寝るところは、こっちだよね?」


 そう言って、アリサは今立っている場所の地面に指をさした。


「「……」」


 聞き間違いじゃなかった。

 うちの寝るところ……それって、つまり……。


「うええええええええええええ!! こっここここの中で、ぼっ僕といいいいい一緒にシェルターで寝るって事!?」


「そうなるけど? なんでそんなに、驚いているのよ」


 そりゃあ驚くに決まっているでしょ。

 だっだって、異性と1つ屋根の下で寝起きするって……家族以外では初めての経験だし。


「い、いや、アリサ……さんは木の上で寝て……」


「それは、野宿の場合のみ。木の上の方が、安全だからね。屋根があって、安全な場所なら、うちだってそこの下で寝たいわよ」


 マジか。

 今の生活って野宿に近いから、ずっと木の上で寝るとばかり思ってた。

 やばいぞ、このままだと緊張して眠れないのが目に見えている。

 ここ数日まともに眠れなくて、やっと屋根の下で寝られると思ったのに!

 何とかしなければ……何とか……そうだ。


「じゃっじゃあ、もう一個作るからアリサ……さんは、このシェルターで寝て……」


「え? 何で、そうなるのさ」


 そうなるでしょうに。

 シェルターを2個作れば何も問題はない。

 あるとすれば、今から作ろうにも材料も時間も足りないから明日って事になるけど。


「2人でも、十分に寝られる広さじゃない」


 違う、そうじゃない。

 これは直接言わないと駄目か? いや、異性がどうのこうのって恥ずかしくて言えないよ。

 ……仕方ない、遠回しになるが。


「ま、前側は作業用のスペースにしたいんだよ。だから……ね?」


 これでどうだ。


「あ~、なるほど……」


 アリサは自分の立っている場所を見わたした。

 これで理解してもらえたかな。

 はあー……今日も外で寝る羽目になるとは。


「ん~……だったら~」


「?」


 アリサが僕の居る所まで近づいて来て、置いてあったベッドを動かし始めた。

 一体何をする気なんだろう。


「よいしょっ、よいしょっ」


 ベッドを縦に向け、右側の屋根下へと押しこんだ。

 あれ? これって、もしかして……。


「うん、これなら、良いわね。これでこっちに寝られるから、あっち側が空くわ」


 そう言ってアリサは両手を広げて、空いた左側の屋根下をアピールして来た。

 やっぱりか! だから違う、そうじゃないんだって!

 つか! それだと並んで寝る事になるから、余計に駄目だっての!!

 あーもーこれはちゃんと言うしかないじゃないか。


「あ、あの……そういう事じゃなくて……その……ぼ、僕は……男で……君は女性なわけで……つまり……」


「……あっそういう事か」


 僕の言葉で、やっとアリサが理解してくれたようだ。


「大丈夫大丈夫。うち、そんな事全然気にしないから」


 僕が全然気にするんですけど!

 理解してくれたけど、返事が思ったのと違う。

 ケラケラと笑っているし、何でそうなるかな。


「でも、もしうちに、襲い掛かって来たら……」


 アリサが右足を上げて、クイクイと鉤爪を動かした。

 あれにひっかかれたら、僕の肉は簡単に引き裂かれるだろうな。

 考えるだけで恐ろしい。


「そ、そんな事はしないよ!」


「……うん、それはわかってるよ~。まぁ、一応ね」


 そのわかっているとはどういう意味だ?

 やっぱり、アリサからしたら僕ってまったく異性と見られてない感じなのかな。

 それはそれで悲しい感じが……。


「ほら、リョー。うちのベッドも作るから、手伝ってよ」


「え? あ……はい……」


 結局、アリサに流されるがままベッドを作り、横に並べる事になってしまった。

 流石にこれでは色んな意味で危険と判断し、虹色の大きな葉っぱを吊るして間仕切りのカーテンのようにした。

 気休め程度にしかならないけど、無いよりはましだ。


 色々あったけど、あと少しで完成だな。

 かまどは、シェルターが燃えない様に外よりも深めの穴を掘って作る。

 後は、地面とベッドの上に虹色の大きな葉っぱを並べて置いていけば……。

 

「これで、シェルターの中も完成だ」


「お~……うん、これは……その…………」


 中を見たアリサは、外の時よりも言葉を詰まらせてしまった。

 それはそうだ、外見よりも内装の方が派手派手になってしまっているのだから。


「な、慣れだよ! 慣れ! こういうのは、慣れたら気にならないもんさ!」


 アリサにかけた言葉は、改めて自分にも言い聞かせている様な気がした。

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