3、これから
焚き火に使える湿っていない乾いた流木、木材を砂浜で選別して拾っていると辺りが赤く染まり始めていた。
海の方を見ると太陽が海へと沈みはじめている。
色々としていると、あっという間に時間が経つな。
この調子だと何十日……いや、下手をすれば何百日とこの島で生活する事になる。
脱出の手段を考えないといけないけど、まずは生活基盤を作らないといけないな。
その辺りはアリサの協力も必要だから、ちゃんと話し合わないと。
「よし、この位で十分だろうし戻るか」
煙が上がっているから位置が分かりやすい。
なのに、助けを求めるのに使えないのが非常に悲しいところだ。
※
焚き火の場所に戻ってみると、アリサはシェルター兼ベッドに腰を掛けて炭……もとい、真っ黒なハマラシュウを焼いていた。
「あ、おかえり~。ただ、待っているだけだと暇だったから、ハマラシュウを焼いておいたわ」
「あ……うん……あ、ありがとう」
さっきの分だけじゃ物足りなかったから、ハマラシュウを焼いてくれていたのは嬉しい。
僕は荷物を降ろし、アリサの反対側に腰を下ろして焼きハマラシュウを手に取った。
「この台に、座らないの?」
アリサが右手でポンポンとシェルター兼ベッドの上を叩いた。
「ふえ!? いあ、僕はこっちで良いよ……」
女性の隣に座るだなんて、僕には出来ないっての。
「……? ところで、この台ってリョーが作ったんだよね」
「そう、だけど……」
台じゃなくてシェルターとして作ったんだけどな。
とはいえ、シェルターの役目としてほとんど機能しなくて、結局ベッドとして使ったからそれはシェルターだとも言えない。
もうシェルターって事を捨てて、ベッドもしくは台として使う事にしよう。
「よく無人島で、作れたね。器用なものだわ」
「そ、そうかな……あつつ。……ん?」
焼きハマラシュウの皮をむいていると視線を感じ、ふと顔を上げた。
アリサは僕の方をジッと見ていて、目線があってしまった。
その瞬間、僕はさっと焼きハマラシュウに目線を戻した。
「…………リョーってさ、うちと目を合わせないよね?」
「うっ!」
それは言わないでよ。
「名前もそうだし、うちに対して、しゃべり方もなんかおかしいし……何か悪い事した……かな?」
ああああ! 僕の苦手意識のせいでなんか変に勘違いしているっぽいぞ。
やばい、このままじゃアリサに協力を求めても拒否されるかもしれない。
恥ずかしいけど、こじれる前に正直に言った方がいいなこれは。
「な、何もしてないよ! あの、えと……僕、異性と目を合わしたり、話したりするのが……ものすごく苦手なんだ……その……気恥ずかしくて……」
「へ?」
チラッと見るとアリサを見ると、キョトンとした顔をしている。
そうでしょうね、何でそうなるのって思っているでしょうね。
けど、それが事実そうなんだからしょうがないじゃないか。
「うちを……女の子として、見てくれるんだ……」
「え? そりゃあ……」
一部鳥とはいえ、基本は女性の……ハッ! まさか!
「もっももしかして、アリサさんって男――」
「違うよ! うちは、れっきとした女の子だよ!!」
だよな。
あーびっくりした。
「まったく……でも、ありがとうね」
「へっ?」
何でお礼を言われたんだろう。
うーん、こっちの世界の習慣がわからん。
まぁいいや、機嫌もよさそうだし今のうちに話を聞いておこう。
「えと……アリサ……さんに色々と聞きたい事があるんだけど、いいかな……?」
「うん、何かな?」
「じゃあまず改め確認しておきたいんだけど、この島は年中暖かいって事でいいんだよね?」
「うん、そうよ」
なら、寒さについての心配はしなくてもいいか。
暑すぎず寒すぎず、サバイバルとしては最高の気温なのはありがたい。
「ただ、雨期はあるわ」
「雨期? それって、いつからいつまでの期間? どのくらい降るの?」
「あと1ヶ月後くらい……かな? 大体3カ月くらい毎日振り続けて、ほとんど日が出る事は無いわ」
「1ヶ月後、毎日……」
それはまずい。
いくら気温が快適でも、体が濡れると体温が下がって危険だ。
乾かそうにも雨が降り続けるのなら火なんて付けられない。
雨期に入る前にやらないといけないのは。
・雨にから身を守るために強いシェルターを作る、もしくは洞窟等を探す
・傘やカッパといった雨具
・薪
・火持ちがいい炭
・保存食
くらいかな。
後はやっている内に思いつくかもだから、その辺りは臨機応変に対応してくしかない。
「雨期があるのはわかったよ。次に、アリサ……さんの事なんだけど、植物以外にも知識はあるのかな? 動物とか魚とか」
旅をしていたのなら、その辺りもあるとは思う。
けど、確認は大事だ。
「ん~……流石に、全部とは言えないけど、ある程度はわかるわ」
よし、それなら植物以外の栄養も取れるし保存食も作れるぞ。
「なら、明日は探索をするから、この島の生態を可能な範囲で見ていってほしんだ」
「生態を?」
「この島にどんな動物や虫いるのか、それが安全か危険か、食べられる物がどのくらいあるとか……この島で暮らすとなると、そういうのが必要だろ?」
よくよく考えたら、警戒するのはレッドドラゴンだけじゃない。
森や山にいる動物や虫もそうだ。
そういった危険は僕の世界でも一緒なのに、色々ありすぎて頭からすっかり抜けていた。
「なるほどね、わかったわ。まぁでも、危険な動物はいないと思うけどね」
「え? なんで?」
「リョーが、3日もここで生きているから」
「僕が生きて…………ひっ!」
アリサの言葉を理解した瞬間、僕は恐怖でトリハダがたった。
危険生物いたら、とっくの前に僕はこの世にいないという事だ。
「リョーは、運がいいみたいだね。レッドドラゴンとお、鉢合わせしなかったんだし」
「そっそう……だね……あははは……」
確かに今は無傷で生きている。
けど、チート能力無しな上にランダム転送で飛ばされた先はこの無人島。
この状況で僕は運が良いのか悪いのか……その答えは一晩考えても出る事はなかった。
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