3、これから

 焚き火に使える湿っていない乾いた流木、木材を砂浜で選別して拾っていると辺りが赤く染まり始めていた。

 海の方を見ると太陽が海へと沈みはじめている。

 色々としていると、あっという間に時間が経つな。

 この調子だと何十日……いや、下手をすれば何百日とこの島で生活する事になる。

 脱出の手段を考えないといけないけど、まずは生活基盤を作らないといけないな。

 その辺りはアリサの協力も必要だから、ちゃんと話し合わないと。


「よし、この位で十分だろうし戻るか」


 煙が上がっているから位置が分かりやすい。

 なのに、助けを求めるのに使えないのが非常に悲しいところだ。



 焚き火の場所に戻ってみると、アリサはシェルター兼ベッドに腰を掛けて炭……もとい、真っ黒なハマラシュウを焼いていた。


「あ、おかえり~。ただ、待っているだけだと暇だったから、ハマラシュウを焼いておいたわ」


「あ……うん……あ、ありがとう」


 さっきの分だけじゃ物足りなかったから、ハマラシュウを焼いてくれていたのは嬉しい。

 僕は荷物を降ろし、アリサの反対側に腰を下ろして焼きハマラシュウを手に取った。


「この台に、座らないの?」


 アリサが右手でポンポンとシェルター兼ベッドの上を叩いた。


「ふえ!? いあ、僕はこっちで良いよ……」


 女性の隣に座るだなんて、僕には出来ないっての。


「……? ところで、この台ってリョーが作ったんだよね」


「そう、だけど……」


 台じゃなくてシェルターとして作ったんだけどな。

 とはいえ、シェルターの役目としてほとんど機能しなくて、結局ベッドとして使ったからそれはシェルターだとも言えない。

 もうシェルターって事を捨てて、ベッドもしくは台として使う事にしよう。


「よく無人島で、作れたね。器用なものだわ」


「そ、そうかな……あつつ。……ん?」


 焼きハマラシュウの皮をむいていると視線を感じ、ふと顔を上げた。

 アリサは僕の方をジッと見ていて、目線があってしまった。

 その瞬間、僕はさっと焼きハマラシュウに目線を戻した。


「…………リョーってさ、うちと目を合わせないよね?」


「うっ!」


 それは言わないでよ。


「名前もそうだし、うちに対して、しゃべり方もなんかおかしいし……何か悪い事した……かな?」


 ああああ! 僕の苦手意識のせいでなんか変に勘違いしているっぽいぞ。

 やばい、このままじゃアリサに協力を求めても拒否されるかもしれない。

 恥ずかしいけど、こじれる前に正直に言った方がいいなこれは。


「な、何もしてないよ! あの、えと……僕、異性と目を合わしたり、話したりするのが……ものすごく苦手なんだ……その……気恥ずかしくて……」


「へ?」


 チラッと見るとアリサを見ると、キョトンとした顔をしている。

 そうでしょうね、何でそうなるのって思っているでしょうね。

 けど、それが事実そうなんだからしょうがないじゃないか。


「うちを……女の子として、見てくれるんだ……」


「え? そりゃあ……」


 一部鳥とはいえ、基本は女性の……ハッ! まさか!


「もっももしかして、アリサさんって男――」


「違うよ! うちは、れっきとした女の子だよ!!」


 だよな。

 あーびっくりした。


「まったく……でも、ありがとうね」


「へっ?」


 何でお礼を言われたんだろう。

 うーん、こっちの世界の習慣がわからん。

 まぁいいや、機嫌もよさそうだし今のうちに話を聞いておこう。


「えと……アリサ……さんに色々と聞きたい事があるんだけど、いいかな……?」


「うん、何かな?」


「じゃあまず改め確認しておきたいんだけど、この島は年中暖かいって事でいいんだよね?」


「うん、そうよ」


 なら、寒さについての心配はしなくてもいいか。

 暑すぎず寒すぎず、サバイバルとしては最高の気温なのはありがたい。


「ただ、雨期はあるわ」


「雨期? それって、いつからいつまでの期間? どのくらい降るの?」


「あと1ヶ月後くらい……かな? 大体3カ月くらい毎日振り続けて、ほとんど日が出る事は無いわ」


「1ヶ月後、毎日……」


 それはまずい。

 いくら気温が快適でも、体が濡れると体温が下がって危険だ。

 乾かそうにも雨が降り続けるのなら火なんて付けられない。

 雨期に入る前にやらないといけないのは。

 ・雨にから身を守るために強いシェルターを作る、もしくは洞窟等を探す

 ・傘やカッパといった雨具

 ・薪

 ・火持ちがいい炭

 ・保存食


 くらいかな。

 後はやっている内に思いつくかもだから、その辺りは臨機応変に対応してくしかない。


「雨期があるのはわかったよ。次に、アリサ……さんの事なんだけど、植物以外にも知識はあるのかな? 動物とか魚とか」


 旅をしていたのなら、その辺りもあるとは思う。

 けど、確認は大事だ。


「ん~……流石に、全部とは言えないけど、ある程度はわかるわ」


 よし、それなら植物以外の栄養も取れるし保存食も作れるぞ。


「なら、明日は探索をするから、この島の生態を可能な範囲で見ていってほしんだ」


「生態を?」


「この島にどんな動物や虫いるのか、それが安全か危険か、食べられる物がどのくらいあるとか……この島で暮らすとなると、そういうのが必要だろ?」


 よくよく考えたら、警戒するのはレッドドラゴンだけじゃない。

 森や山にいる動物や虫もそうだ。

 そういった危険は僕の世界でも一緒なのに、色々ありすぎて頭からすっかり抜けていた。


「なるほどね、わかったわ。まぁでも、危険な動物はいないと思うけどね」


「え? なんで?」


「リョーが、3日もここで生きているから」


「僕が生きて…………ひっ!」


 アリサの言葉を理解した瞬間、僕は恐怖でトリハダがたった。

 危険生物いたら、とっくの前に僕はこの世にいないという事だ。


「リョーは、運がいいみたいだね。レッドドラゴンとお、鉢合わせしなかったんだし」


「そっそう……だね……あははは……」


 確かに今は無傷で生きている。

 けど、チート能力無しな上にランダム転送で飛ばされた先はこの無人島。

 この状況で僕は運が良いのか悪いのか……その答えは一晩考えても出る事はなかった。

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